ロシア-ドネツク-ウクライナとアメリカ-台湾-中国関係の類似性

 ロシアのプーチンが、ウクライナ東部のふたつの自治区、ドネツク、ルガンスク共和国を、独立国家として承認して、一気に緊張が高まっている。承認した地域は、それぞれの州全体ではなく、ロシア人が実行支配している半分程度の区域のようだが、それぞれの地域が「独立宣言」をして、その独立承認をロシアに求め、ロシアが承認したという「形式」をとっている。クリミアのときにも、住民投票によって、ロシアへの帰属を住民が望み、ロシアがそれを承認したというのと、多少似ているが、今回は住民投票まではしていないと思われる。おそらく、EUもアメリカも、戦闘行為は望まず、経済制裁を続けるだろうが、何かの暴発で戦争状態に突入しないとも限らない。
 欧米諸国は、当然、プーチンのドネツク、ルガンスクの承認は、国際法違反であり、内政干渉であるという立場だが、プーチンからすると、独立宣言をした国を承認するかどうかは、国家としての自立的な判断によるものだということになるだろう。
 これを中国と台湾の関係に置き換えるとどうなるだろうか。

 中国が台湾を攻撃して、台湾がアメリカに支援を求めたとき、アメリカは台湾を軍事的に援助することができるのだろうか。あくまでも「論理的正当性」の問題としてだが。
 中国はもちろん、台湾も、独立国家であると宣言しているわけではない。事実上独立国家として扱われることを望んでいるという状態だろう。ウクライナでいえば、ミンスク合意のレベルだ。しかし、実際には内乱状態で、どちらが先に攻撃したかというのは、証明のしようがないが、地域の大きさからみて、ウクライナ政府が、ドネツク、ルガンスクを圧倒していることは間違いないだろう。だから、ここから脱するためには、とにかく独立宣言して、ロシアに独立承認してもらい、独立国家として軍事同盟を結び、ロシアに合法的に援助してもらうという方向性を、独立派はとっている。ウクライナ政府が攻撃をしなければ、おそらくミンクス合意の範囲での自治共和国であり続ける可能性はあったと思われる。しかし、長い戦闘状況で、それが不可能になったと考えるのが自然だ。
 いまのところ、中国は台湾を武力攻撃してはない。ただし、かなりの武力的圧迫を与えている状態だ。この中国の圧迫のなかで、何か突発的な事態が生じて、極度に緊張が高まったとき、台湾が独立宣言し、アメリカに承認を求めたら、アメリカはどうするのだろうか。
 ロシアが、ドネツク、ルガンスク両地域の独立承認をしたことが、国際法違反だというのならば、同様の理由で、アメリカは台湾の独立を承認することは、国際法上許されない。もちろん、論理的正当性の問題としてである。ウクライナの政府とドネツク、ルガンスクの関係は、あくまで内政の問題であって、ウクライナ人が解決すべきものであって、少なくとも、外国が軍事的介入をすることではない、というのが、アメリカの立場だろう。そうすると、中国と台湾の関係も同じように、中国と台湾が政治的に解決すべきものになってしまう。しかし、そうすれば、台湾は中国に押さえつけられることになる。おそらく習近平は、アメリカのウクライナ対応を注意深くみているだろう。
 もちろん、プーチンの行為を肯定するつもりはまったくないので、念のため。
 

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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