別の原稿を書いていたのだが、急遽変更することにした。
このところ、メディアの小室・真子結婚問題に関する論調が、まったく変わってしまった。毎日新聞を読んでいると、ネット上での誹謗中傷を非難する記事が目立つ。「一億総いじめっ子か 真子さま結婚へ中傷 スマイリーキクチさん」という記事は、誹謗中傷が絶えない、ただただ悲しいと語っている。
しかし、どうもおかしくないか。
私自身は、ここで何度も書いているが、二人の結婚は、早々としてニューヨークにいけばいいと思っているし、一時金を辞退しなくてもよいと考えている。しかし、祝福するかと問われれば、しないと回答するし、もし、娘や知人が小室氏と結婚したいといったら、全力をあげて阻止するだろうと書いた。
この結婚が、様々なレベルで皇室を揺るがすという点に、関心をもっている。そして、ネット上での書き込みも、それなりに読んできた。メディアの「誹謗中傷非難」に違和感を感じるのは、ネット上の結婚反対の書き込みを読んでも、「誹謗中傷」とは思えないことだ。誹謗中傷とは、ありもしないことを書き立てて、口汚く罵ることだと思うのだが、ネット上の書き込みのほとんどは、事実を前提にして書いているし、それほど口汚い表現をしているわけではない。確かに強い批判をしているが、誹謗中傷というものではないだろう。
メディアの「誹謗中傷非難」は、真子内親王の複雑性PTSD公表に大きな影響を受けているような気がする。そして、そうした精神的な疾患を引き起こしているにもかかわらず、相変わらず誹謗中傷しているのはけしからんというわけだ。しかし、ネット上のこの点についての見解の多くは、複雑性PTSDだというのは、事実とは思えないということにある。実際に、精神医学の権威と言われる人からも、間違いであると批判がなされている。私も、間違っていると確信している。私は、臨床心理学や医学の専門家ではないが、一応臨床心理学科に長く籍をおいていた研究者だ。だから、そうした知識は、気軽に説明してもらうことはできたし、書物もかなり読んだ。PTSDは、ベトナム戦争帰りの米兵が、アメリカに戻っても、トラウマを長く引きずる現象に対して名付けられた。このことでわかるように、精神的な問題を引き起こした環境や要因がなくなっても、病状が改善しない状態をいう。ところが、真子内親王の病状の説明の際に解説した医師は、ネットでの非難がなくなれば、症状が収まるというようなことを語ってしまった。ということは、PTSDではないと、説明したことになるのだ。ごく基本的な知識をもっていれば、嘘だと見抜けるような嘘をついたのである。現に、その後放映されている姿をみても、トラウマを抱えているようには思えない。しかも、単なるPTSDではなく、複雑性だというのだから、あのような説明をわざわざしたことは、メディアやネットでの批判をするな、という圧力だと受け取るのが自然なことだろう。だから、ネット上で、更なる批判が起きたのである。
私は、ネット上で、二人の結婚に反対するような見解を書いたこともないし、人格非難をしたこともない。ただ、この問題に関心をもつのは、天皇制のあり方が、今後大きな論争になること、天皇制の消滅に至る可能性もあることなどについてである。
それを「一億総いじめっ子」などと表現するのは、国民を馬鹿にしていないだろうか。私もこの表現なら、いじめっ子になっているらしい。
ここまで書いていると、明日の記者会見は、口頭の質問は受け付けず、予め書面でだされた質問に対して、文書で回答することになったという報道がだされた。提出された質問のなかに、「誤った情報が事実であるかのような印象を与えかねない」ものがあり、衝撃を受けたのだそうだ。回答をすることを想像すると、恐怖心がよみがえり強い不安を感じ、口頭での回答を不可能と判断したのだという。事実でないなら、事実をきちんと説明するのが、記者会見なのではないのか。しかも、皇室に対する質問だから、よほど吟味した上での文書質問であると考えられる。それを一方的に、事実に基づかないなどとして、とんでもない質問をするというような印象を与える姿勢を示すことに、強い違和感を感じざるをえない。それなら、もともと記者会見などしなければよいのではないだろうか。
最初に書いたとおり、私は二人の結婚自体には、関心がない。個人的なことなのだから、口をはさむようなことではない。小室氏が、皇室を利用して、自分の利益を存分に引き出していることについても、好感はもたないが、まあ手腕の見事さには感心する。
問題は、こうした一連の動きを利用して、皇室を利用する大きな動きがあることだ。天皇は国民の象徴で、国民の総意によって成り立つのだから、皇室のあり方に関しては、当然考えるし、また意見を表明する権利がある。
そういう権利行使を非難するような、最近のメディアのあり方こそ、大きな問題だろう。