オリンピックネタをあまり書きすぎているので、あまり書きたくないのだが、次々と重要問題が生じている。昨日JBpressのメルマガに、田原総一郎と猪瀬直樹両氏の対談「五輪中止と不安をただ煽るようじゃ日本も終りだよ」が掲載されると報告されていたのだが、クリックすると「削除されました」というようなメッセージがでて、記事が読めない。そして、何故か今日再度メルマガに出ていて、今日は前半が掲載されていた。ただ、映像では全体がみられるので、みてみたが、内容はあまりに酷いものなので、反論せざるをえないものだ。
それから、森後任が内定したという報道もなされているが、これも正直驚きの人選だ。本当かどうかは、明日になってみないとわからないが、橋本五輪担当相が後任だという。これも、多いに問題だ。
そこで、今日もまた、オリンピック話題を書くことにする。
まず田原・猪瀬対談に関して。
対談は、https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64064?utm_source=editor&utm_medium=mail&utm_campaign=link&utm_content=top
映像は、https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64100
で見ることができるので、興味のある人は、そちらで確認してほしい。ここでは、内容紹介はせず、論点に関してのみ触れることにする。
まずオリンピックを何故招致したのかという点についての、私の立場からみればごまかしの論理、猪瀬氏にとって都合の悪い点は無視する論を述べ立てている。
石原都知事の副知事として、東京のディーゼル禁止などの対策の延長として、環境問題を取り組む一環のオリンピック招致だったというのである。猪瀬氏にその意識があったとしても、そのような形で、現在の東京オリンピックの取り組みがあるようにはとうてい思えないし、また、猪瀬氏が知事としての招致活動においても、その言葉はまったくごまかしとしかいいようがない。2013年に、オリンピック招致を決めたとき、日本の環境問題の最大のものは、原発事故の放射能汚染問題だった。ところが、安倍首相は、原発事故は完全にコントロールされていると嘘をつき、猪瀬知事は、福島は東京から200キロも離れているから、問題ないなどといって、ごまかしたのである。そして、いまだに、原発処理はあまり進んでいないし、汚染水問題は深刻の度合いを強めている。そして、日本社会全体として、温暖化対策は、先進国としては進んでいないのである。
それから、リーマン・ショックや東日本大震災で、日本人が意気消沈していたために、元気づけることが必要だった。オリンピックをやれば、インバウンドで大きな利益があることがわかっていたから、そのためにやったのだという。震災後、日本人が意気消沈していたなどというのは、いかにも日本人を馬鹿にした言い方ではないか。むしろ、絆とか、頑張ろう日本とか、いろいろなスローガンで励まし合いながら、震災から立ち直ろうと一生懸命努力していたのではなかったか。だから、震災からの復興にこそ、国力を向けるべきで、オリンピックなどの祭ごとにエネルギーを使うべきではない、ということで、オリンピック招致には、ずっと世論は反対だったのである。それを、ありもしない復興五輪などといういいかげんなことをいって、招致の理由づけをし、しかし、復興のために五輪が貢献している場面などは、ほとんどないのである。
更に、オリンピック招致に際しては、かなり多額の賄賂をIOC関係者に贈っていることは、既に明らかになっており、その後エンブレム問題、国立競技場問題、東京以外に会場を設定する問題(特に東北)、コンパクトオリンピックではなく、過去最高の費用がかかっていること、等々、史上最悪のオリンピックになるとも言われていることには、まったく目をつぶっている。
こうした一連の流れをみているからこそ、東京オリンピックに反対しているのであって、コロナはそれを勢いづけたに過ぎない。明確な調査はないが、現在オリンピック開催に反対する国民の8割の、おそらく半分以上は、もともとオリンピックに批判的な人だったと考えられる。コロナがあるから反対という限定的な人は、半数以下であると私は思うのである。それは、私自身がそうだということもあるが、ヤフコメなどをみても、そう感じる。
第二の対談のいいかげんさは、コロナ対策をちゃんとやれば、オリンピックをやってもまったく問題ない、といって、現在の医療体制などを、さかんに批判しているのだが、両氏が強調しているように、今の政府のコロナ対策は、まったくうまくいっていないのである。PCR検査はまったく不足していて、海外から批判されているし、確かに病院の体制が、コロナ患者の受け入れを難しくしており、病院の体制変革が必要だといっているのは、正しいのだが、だからこそ、オリンピックの開催は困難だという結論になるはずである。それなのに、まるで、今すぐ、政府が正しい医療体制を構築して、問題が解決し、オリンピックをするのに、問題がないかのように、発言しているが、ふたりの批判が正しければ、オリンピック開催は不可能という結論にならざるをえないのである。自分が正しい批判をすれば、すぐに現実が変わるとでも思っているのだろうか。この一年間の危機のなかで、変らなかったものが、ここ2、3カ月で変わるなどということがあるだろうか。
オリンピックを中止したら、日本はだめになるのではなく、ここでオリンピックを強行したら、日本は感染爆発が生じて、たいへんなことになると考えるほうが、ずっとリアリティがあるのである。
次に、森後任についてだ。
この後任選びは、まったく奇妙な進行になっている。川淵氏の選出は、不透明だというので、潰されて、透明性を確保した選考が必要だということになったはずだが、設置された選考委員会は、まったくの秘密主義であった。透明性という点では、川淵選任の過程は、実に透明だったのである。何故なら、川淵氏が、すべてをしゃべってしまったからだ。どういう風に川淵氏が内定されたかは、国民が明確に知ることになっている。川淵選考は、不透明さが問題なのではなく、問題を起こして辞める本人が後継者を決めるやり方に、問題があったのである。
そして、秘密主義の選考委員会であるはずなのに、翌日には、メンバーも、選考日程もメディアが把握して報道し、そして、今日は、橋本氏が候補者として内定したと、結果まで明らかになっている。もっとも、この報道が真実であるかは、明日にならないとわからないのだが。このことが報道されて数十分後には、ヤフコメが2000以上も書かれているという、注目ぶりだ。そして、かなりの書き込みは、(最初の数十件を読んだ限りだが)橋本氏を選んだことに、呆れている。かならず、セクハラ事件が問題にされるから、非難轟々になるということだ。もちろん、能力への疑問とか、あるいは森氏との関係への疑問などもあるが、ジェンダー問題で辞めた人の後任が、セクハラ疑惑があるというのでは、しゃれにもならない。橋本氏自身、それを言われることはわかっているはずであるが、それを承知で引き受けたのだろうか。本人の事前了解がなければ、内定するはずはないのだから、おそらく、了解したのだろうが。マイクの前では、これまで、要請されても受けないと明言していたのは、今や政治家なのだから、疑問にも思わないが、橋本氏を推薦したひとたちは、そうした攻撃に晒すことを、特段問題としていないのだろうか。まったく不思議な進行だ。
明日、正式に発表になるということだから、注目しておこう。
補
今報道を確認したところ、本人は固辞する意向とでていた。またまた不思議な現象だ。本人の了承をえないまま、報道陣に漏れてしまったのか。この選考委員会の危機管理は、子ども並としかいいようがない。更に説得するのか、別の選考に入るのか、明日になればわかる。