安倍前首相の証人喚問を

 安倍前首相の桜問題の説明が、いよいよ焦点になってきた。民主主義が徹底している国であれば、あのような嘘をつき続けること自体が無理だったろうが、一年間も嘘を通してしまう、そしてそれを許してしまう状況がまず問題だと思うが、それでも、嘘をついていたことは既に明確になったわけだから、説明が必要であることは、どんなに安倍氏に近い人でも認めざるをえなくなっている。
 しかし、これは多くの人が述べているように、安倍ラインと菅・二階ラインの権力闘争であり、その結果は、どちらが勝利したことを意味する。
 最初の権力闘争は、安倍氏が元気であることをアピールしたことだと、私は理解している。安倍氏が首相をやめたのは、一部メディアなどは病気の悪化のためだとしているのが、どう考えても、政治がうまくいかないことにやる気をなくした安倍氏が、政権を放り出したわけだ。第一次内閣のときも、本当の理由はそうだった。病気は後付けのように言われただけだ。今回は、安倍内閣のコロナ対策は、ほんとうに酷かった。そして、大きな非難に晒された。こういうときに、あくまで頑張るという良識と能力がない人物だから、案の定政権を放り出して、菅氏に後始末を押しつけた。もちろん、権力奪取に意欲的だった菅氏は、幸いとばかり権力を手にしたが、その後、安倍氏が元気になり、3選もありだ、などというアピールをしたのが、菅氏には受けいれらないものだったに違いない。それで、反撃に出たのが、桜問題の暴露だろう。そこで、安倍およびその側近たちが、3選を完全に諦めれば、進展は違ったのだろうが、むしろ、菅氏の支持率低下傾向か出て、反撃に出ているのが現状だと理解する。不起訴決定や非公開での説明などという路線でいけば、安倍氏の勝利であり、菅氏の痛手となるだろう。菅内閣にも安倍派はおり、上川法相と不起訴の関係はどうなのだろうなどと考えてしまう。

 さて、こういう権力闘争は、当人たちがやってくれればいいことで、私たち国民には関係ない。また一国民として望むのは、どう考えても政治的法的不正の是正であり、また、国会で国民に完全に嘘を1年間もつき続けたという政治家としての責任問題を解決したもらいたいということだ。
 そのための第一歩は、当たり前のことだが、偽証が許されない証人喚問をすることだろう。大問題になっていることについて、最初は知らなかったとしても、秘書に問いただせばわかることで、ずっと知らなかったなどということは、誰も信じるわけがない。「知らないこともありうる」などといっている人がいたとしても、表向きのいいつくろいだろう。もし、本当に、知らなかったし、秘書に真実を語らせることができなかったとしたら、到底政治家としての資質と能力が欠如していることを示しているので、それこそ、即刻国会議員をやめてほしいものだ。
 安倍内閣が日本のさまざまな領域で、質的低下をもたらしたと言われているが、こういう政治スタイルだったことが、大きく影響している。メディアへの圧力などもあいまって、真剣に努力することが馬鹿らしくなる、そういう人たちが増えたのだろう。すべてがそうではないが。
 不起訴処分への再審理要求と、証人喚問の必要性は明らかだ。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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