CMの効果 どのようにして購入に至るか

 東洋経済「投資対効果を測れるテレビCM新時代の幕開け」によると、インターネット広告がテレビCMを超えた。それは、インターネットでの広告は、効果測定が詳細に可能であるのに対して、テレビのほうは無理だったからだが、現在では、テレビでもCM効果が測れる手法が開発され、それによると、動画で比較すると、テレビのほうがインターネットよりも5倍も効率的だということがわかってきたのだそうだ。それで、広告を送る側ではなく、受ける側として、CMについて、考えてみたいと思った。あまり物を買わなくなった世代としての話になってしまうが。
 
 もちろん人によって異なるだろうが、ある商品を買うときには、どういう経過で選択をするのだろうか。ほしいものが先にある場合と、別にそうではなく、何かをみて、これが欲しいと思いつくこともあるだろう。それがCMの場合もありうる。私の場合には、ほとんどが、まずこういうものが欲しいという必要性を感じる。だから、ネットでどのような製品があるのかを調べ、そして、アマゾンなどを見ることが多い。

 もちろん、主婦が日常の食料を買うときには、スーパーで実際にみたり、あるいは、新聞広告などが大きな意味をもつだろう。テレビのCMで、その日どこで何の食料を購入するかを決めることは、あまりないに違いない。
 テレビのCMとインターネットの広告との違いを考えてみよう。私自身は、テレビのCMをみて何か購入すことは、ほとんどない。インターネットの広告はあるが、広告自体を見るよりは、広告をみて、そのあとたいていはアマゾンのレビューを見る。そして、高評価と低評価を両方確認してから購入するというパターンだ。
 以前パーフェクトビューという製品を、テレビのCMでやっていた。車を運転しているときに、太陽がまぶしいことがある。かなり危険な状態になるわけだが、パーフェクトビューは、要するにサングラスを車につけるようなものだ。フロントミラーの部分にとりつけると、サングラスを通して太陽光が入ってくるので、まぶしくないというわけだ。よかったら購入しようと思って、早速アマゾンでレビューをみると、ものすごく多数の意見があり、かなり批判的なものが多かった。つまり、まぶしさなどは、ほとんど軽減しないので、役にたたないという意見が多いのだ。私は、眼鏡をしているので、サングラスをすることはできず、サングラスそのものの効果も分からないのだが、とにかく、サングラスよりずっと無意味だという。それで、テレビのCMでは実に快適そうに運転しているのだが、やはり実際の効果はないのかと思って購入をやめた。もしアマゾンのレビューが高評価だったら購入したと思う。
 最近のテレビのCMは、何の宣伝なのかよくわからないことが多い。年齢も影響していると思うが、分からなければ効果など皆無だろう。そして、そのCMをみてわかる人にとっては、その製品を既にけっこう知っているはずであり、CMで購入する気になることはあまりないのではなかろうか。もともとほしいかどうかの判断ができるほどの、製品を知っているはずだ。製品についてほとんど語ることなく、単にイメージだけを映すようなCMが効果があるのだろうか。
 テレビのCMで目立ったのは、ハズキルーペだろう。渡辺謙の強烈なイメージで、それまであまり知られていなかった製品を印象づけた。そして、売り上げは激増したらしい。このCMは、社長自らが手がけたのだそうだ。社長は、CM制作会社に依頼すると製品イメージとかけ離れた、無意味なCMをつくる傾向があると判断して、自分でプランを練り、出演者として渡辺謙に依頼したところ、渡辺謙自身が更にアイデアを提出して、あのようなCMになったと書かれていた。このCMは、ハズキルーペという製品が、どのように役にたつのかを、実に分かりやすく伝えていたし、あまり知られていない製品名を、強烈に印象づけた。やはりCMは、製品の最も重要な特質を、簡潔明瞭に伝えることが大事だということを示したと思う。
 以前に似たような効果をもったテレビCMには、アイデアルがあった。「なんである、アイデアル」という文句が繰り返されるのだが、そこに製品の傘の映像が流れるので、傘を買いにいく客が、「なににしますか」と問われると、自然に「アイデアル」という商品名が出てきたと言われたものだ。
 しかし、テレビのCMは、制約が多い。時間が短いし、そこで商品名を覚えてもらい、その利点を納得させるのは、至難のことに違いない。
 あくまで消費者として、テレビとインターネットの広告を比較すると、やはり、かなり違う。
 テレビのCMは積極的に見る意志がなくても、テレビを見ているついでに見るが、インターネットの広告は、突然目に入る仕組みにはなっているけれども、やはり、意志をもって見なければ、ほとんど無視される。ただし、AIによって、その人の興味のある商品が出てくるので、効率的であることは間違いない。
 テレビはそこで終わってしまうが、ネットであれば、広告自体は、小さなもので、わずかなスペースしかないものでも、そこから自社のホームページに誘導することで、詳細な説明が可能である。興味をもった場合には、クリックすればそこに飛んでくれる。そして、ネット活用者は、テレビCMにしろ、ネット広告にしろ、その広告だけをみて購入を決めることは少なくなっているはずである。
 ハズキルーペの場合、私自身高齢者でもあり、小さな字が苦しくなっているから、当然この商品には注目した。そして、眼鏡屋さんにいったときに、ちょっと試してみた。しかし、私には、丁度よく大きめに見えるということがなかった。しかも、かなり高価だから、それ以来、別の方法を試みている。それは、文字の小さな本は、スキャンしてパソコンの画面で拡大してみる方法だ。このほうが、字の大きさを調整できるから、ずっとよい。多少面倒だが。
 
 広告は、ひとつの媒体で決めることはあまりなく、テレビで見たものをインターネットで確認し、それから、買う意欲がでたら、アマゾンや楽天でレビューを見て決める人が最近は多いのではないだろうか。したがって、いくつかの媒体を有機的に結びつけるような広告が有効になると思われる。
 そして、最終的には、やはり、品物の質によって決まるのではないだろうか。ひとつの製品を購入するときに、様々な広告手段があり、また、検証手段もある。そして、実際に使っている人の評価も、簡単に参考にすることもできる。
 単純な結論だが、広告は、複数の媒体で行い、会社のホームページに誘導して、詳細な説明を伝達すること、そして、レビューの書かれ方を注意することが、宣伝効果としては重要ではないだろうか。レビューに企業の人が回答している場合には、好感度があがるのを感じる。
 テレビCMの効果が検証できるようになったということだが、ぜひ、CM効果と、購入後の評価の関連も明らかにできるようになってほしい。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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