新型コロナウィルスの影響で困窮する学生向けに政府が創設した「学生支援緊急給付金」の対象から、朝鮮大学校が外れていることに対して、大学教職員709名の署名を集めて、同志社大学の板垣竜太郎教授が、文科省担当者に要望書を手渡したという記事があった。給付は20万円だが、京都新聞によると、「国公私立大や短期大、専門学校のほか日本語教育機関や外国大学の日本校も対象としているが、各種学校の朝鮮大学校に関しては認められていない。」https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/429136
朝鮮大学校の卒業生は、日本の多くの大学院への進学を認められており、高等教育機関として認知されている。なのに、除外するのは、差別であり、政治的理由だとするものだ。板垣教授は、治安管理的な思考や外交的思考で考えるのではなく、人道的な見地、歴史的な実態と実績に則した見地から対象に含めるべきだとする。
非常に難しい問題だと思う。結論的には、私は給付金の除外は適切だと考えている。その理由を説明しよう。
それは何よりも、朝鮮大学校が、日本に開かれた教育機関ではないということによる。朝鮮大学校のホームページで確認すると、入学資格が、明確に規定されている。朝鮮の国籍、韓国の国籍が基本的な入学条件である。しかし、日本人の場合、朝鮮・韓国人の子孫であることが条件になっている。つまり、一般的な日本人には、門戸を開いていないのである。専門学校、日本語学校、外国大学の日本校は、いずれも、日本の教育機関であるか、外国の大学でも日本人に開かれている、そして、語学学校は、外国人のための教育機関であるが、日本の学校に入学するための予備訓練の教育機関である。したがって、いずれも、日本人一般に開かれているか、日本の法体系に則った学校なのである。そこが、朝鮮大学校とは根本的に異なる。
朝鮮大学校は、あくまでも、日本に住んでいる朝鮮・韓国の人たちのための教育機関であって、体系としても、日本の法律の体系にそっているわけではなく、基本は北朝鮮学校体系であって、日本的な体系を考慮したものになっている。以前は、まったく自由な独立した機関だったが、美濃部東京都知事が各種学校として認可したものだ。何故、認可を求めたのかは、詳細にはわからないが、おそらく補助金の獲得が目的だろう。日本人に開かれていない学校の存在そのものは認めてもいいと思う。しかし、100%民族のための教育機関である以上は、民族からの資金で運営するのが原則だろうと、私は思う。
日本に限らず、特定外国人のために、その特定国が学校を国内に設置することを認めている。日本にあるアメリカンスクールや、海外にある日本人学校などである。しかし、原則的に、それは当該特定国が資金も含めて提供し、独立して運営しているものだ。もちろん、国同士の協定によって、援助が行われることは当然ありうる。そして、多くの場合、現地人が入学することも認めることが通常だろう。日本にあるアメリカンスクールは、日本人がたくさん入学している。近年ではインド人学校が、日本人にも人気だと言われている。このように、国家同士の協定と、現地人に開かれている場合には、外国人学校であっても、様々な支援があってしかるべきだと思う。
また、日本政府は、韓国学校・朝鮮学校が、日本のなかで正規の学校、つまり一条校になることを否定していない。実際に、韓国学校の多数は、一条校の認可を受けている。一条校となっている韓国学校は、日本人にも開かれているし、実際に、日本人が多数学んでいる韓国学校も存在する。これは、韓国の政策でもあるからだが、朝鮮学校の場合には、完全に朝鮮人のための学校となっており、一条校となることは意図していないといえる。
朝鮮学校や朝鮮大学校を、こうした補助から除外するのが差別であるという見方が、まったく間違いだとはいえないが、朝鮮大学校が、日本にありながら、日本人をシャットアウトしていることも、差別ではないのだろうか。他方、日本の学校は、在日朝鮮人や韓国人に対しても開かれている。というより、多くの在日韓国人は、日本の学校に通っている。つまり、多くの国では、現地校に入ることも、自国民のための外国人学校に入ることも、選択可能なのである。、
そういう双方の入学関係が保障されている国において、特定の民族に属する人しか認めない学校は、基本的には、自前主義で運営すべきものだと、私は考えるのである。日本人の入学を認めていない学校に対して、日本人の税金で補助をすることが妥当とは思えない。
私の主張は、決して、朝鮮大学校が反日教育をしているからだ、などという理由ではない。彼等にすれば、民族教育ということだろうし、また、朝鮮大学校が、日本の正規の大学として認可されることをめざして、必要な条件を満たして、認可されたとしても、民族教育を行う自由はある。私立大学は、特別な価値観に基づく授業を行うことは認められているからである。
尤も、より根本的な解決のためには、いずれは北朝鮮と国交を回復し、相互に協定を結んで、朝鮮大学校の位置づけを、双方の了解が達成される必要がある。また、在日と言われる人は、ほとんどの人が日本の学校で学び、日本で就職するのであり、文化的にも、日本人とあまり変わらない。したがって、国籍の法的規定の変更も必要になると思われる。