トランプはヒトラーに似てきた

 題名のごとく、最近のトランプ及びその周囲をみていると、ヒトラー登場の状況に似てきていると、どうしても感じてしまう。
 まず、話し方だ。ヒトラーの話し方には、いくつかの特徴があるが、ひとつは、「熱狂的」な話し方をすること。何かに憑かれたような感じだ。トランプの話し方も、特にコロナに感染してからは、ステロイドの使用でハイになっているという説もあるが、選挙戦での不利を自覚して、なんとか挽回しなければならないという焦りもあるだろう、狂信的な人の話し方になっている。
 第二に、集会に参加しているひとたちの熱狂ぶりだ。大観衆がトランプの、まとまった演説というよりは、スローガンの列挙と叫びに、呼応して叫ぶ。ヒトラーが群衆を前に演説している映像を見れば、その類似性を多くの人が感じるだろう。

 第三に自警団をあおっていることだ。黒人が警官に殺害された事件を機に盛り上がった人種差別反対運動に対して、武装自警団(ミリシア)がにわかに注目されている。一部報道によれば、トランプが大統領選挙で敗北したら、それを認めず、民主党の不正行為として武装蜂起する可能性すら言われている。ヒトラーは、選挙で多数派を獲得して首相になったが、その選挙は、公正なものとはほど遠く、暴力による反対派の威嚇が横行していたのである。ナチスは当初から突撃隊(SA)を組織して、政治的反対派に暴力を加えることで、勢力を拡大してきた経緯がある。突撃隊は、その後親衛隊に再編成され、ドイツの国防軍とは異なる軍隊組織になっていくわけだが、現在、トランプを支持するミリシアをみていると、ナチスが組織した突撃隊のように、トランプに組織されているわけではないが、醸しだす雰囲気が、似ていると言わざるをえない。先日テレビで、あるミリシアの実弾の機関銃などを使った軍事訓練の様子を放映していたが、トランプの応援部隊になっている。
 宣伝戦のやり方も似ている側面がある。有名な言葉だが、「嘘も百回つけば真実になる」とか「小さな嘘は信用されないが、大きな嘘は、信じられる」というのは、ナチスと結びついて言われることが多いが、トランプも同様だ。新型コロナの流行か始まってからのトランプの「嘘」は、枚挙に暇がない。尤も、新型コロナウィルスは風邪のようなもので、心配ないとのは、自身や家族、そして側近たちが感染したことによって、見抜かれてしまったのだが。
 そして、極めつけが、ミシガン州知事に対する誹謗中傷だ。トランプのコロナ対策を厳しく批判する知事に対して、自分を暗殺しようとしていると非難し、本当かどうかわからないが、送られてきた毒物の送り主であるかのように決めつけ、そして、逮捕しろと聴衆の前で叫んだという。まだ、ナチスのように実力行動を起こして、政敵を排除するようなことはしていないが、ツイッターを使っての政敵排除は、技術の進歩もあって、ヒトラー以上なのかではないか。
 前回の大統領選挙も、誹謗中傷合戦で酷かったが、今回は更に酷い。多くのアメリカ人はうんざりしているだろう。今回の争いは「共和党と民主党」ではなく、「トランプ対反トランプ」になっているというひともいる。共和党対民主党の争いならば、政策論争もあるだろうが、トランプに対する賛否では、どうしても人格的な罵り合いにならざるをえない。
 しかし、そうはいっても、アメリカの国際的影響力は大きいわけだから、ヒトラーみたいの人物に大統領になってもらってはこまるのではないだろうか。最後のところでは、アメリカ人の良識を信頼したいものだ。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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