朝鮮半島でも台風増加

 日本人と韓国人の性質の違いは、かなり気候風土と周囲の政治的環境によって生じていると考えてきた。端的にいえば、日本人が闘ってきたのは自然災害であり、朝鮮の人たちが闘ってきたの外敵の侵入である。日本は、自然災害の博物館のようなものだが、海に囲まれているために、外敵の侵入は、ごくわずかしかない。それに対して、朝鮮半島は、自然災害は極めて少なく、冷害が代表的なものではないだろうか。地震も火山の爆発もない。だが、どの時代でも、まわりの大国とどのように対峙するかに神経を使ってきた。
 自然に怒りを感じても仕方ない、受け入れて対策をたてるだけだ。しかし、外敵と常に対峙していれば、人間的にきつくならざるをえない。こうして日本人の穏やかと言われる性質と、韓国人の激しい性質との相違が生じたのではないか。もちろん、個々にはいろいろな人がいるとしても、平均的にこうした対比があることは、多くの人が感じているだろう。

 ところが、こうした状況に変化が生じてきた。今年は、観測史上、最も多くの台風が、既に朝鮮半島を襲っているのである。通常は1度か2度しかこない。これまでの年間最多台風は、半島では4回だったそうだが、既に今年は5度も台風に見舞われており、甚大な被害が生じている。これまでは、台風は、1号からしばらくはフィルピンから始まって、台湾などを遅い、それから次第に沖縄・九州から、本州へと進路を移動してくるのが普通だった。台湾と九州の間をすり抜けて、半島に向かうことは、これまであまりなかったわけだ。それは、気圧配置のためで、太平洋高気圧が強い時期には、台湾のほうに向かい、涼しくなって太平洋高気圧の勢力が弱まると、九州や本州のほうに向かうようになる。偏西風のために、当然東に向かうように力が働くからである。ところが、今年は、太平洋高気圧の勢力が弱くならず、それで、短期間の間に、台湾と九州の間を通って半島に台風が向かったといえる。特に北朝鮮の被害は甚大だという。
 素人だから、断言することはできないが、常識的に考えれば、温暖化が有力な要因のひとつだろう。
 BSの朝8時から放送されているワールドニュースは、いくつかの国のニュースの主要な部分を放送しているか、韓国のKBSが最後にはいっている。私は、このところ、韓国の台風状況を、これでチェックしている。もちろん、台風がくれば、起きる被害はどこでも同じようなものだ。強風が吹けば様々な物が飛ばされ、豪雨で洪水や浸水が起き、田畑の作物が水につかってしまう。
 ところが、韓国が日本の台風状況などをどのように放送しているかはわからないが、日本の地上波のテレビはほとんど報道しない。台風がくれば、天気予報は非常に詳細に、来る以前から去るまでその成り行き・様子を知らせるし、ニュースでも大々的に報道する。しかし、日本から去った台風がどうなるのかは、日本に対する影響以外はコメントしない。台風10号は非常に大型だったので、中心が朝鮮半島に上陸しているのに、なお日本の北九州や中国地方が暴風雨圈にはいっていた。そこで、中国地方や九州の状況を伝えるのに、上陸して大変な状況になっている韓国のことには、まったく触れない。韓国などどうなってもいい、という嫌韓日本人の声が聞こえてきそうだが、自然災害に苦しむのは、皆同じである。そのような天気図を大きく表示している以上、現在は韓国にかかっています。韓国の人たちの無事を祈ります、くらいのことをいってもいいのではないかと思うのだが、どうだろう。そういうことなしに、国際化など無理ではないだろうか。
 他方、韓国人に対しても、これだけ台風を経験すれば、長い歴史のなかで、日本人が受けとめてきた自然災害の一端を理解することを期待したい。 
 また、日本人も、もっと外国の自然災害に対して、情報をえようとする必要がある。近年、ヨーロッパでも40度を越える状態がでてくる。私は家族とともに、昨年ドイツに旅行したのだが、たまたま暑い日にぶつかって、オランダの列車が止まってしまった。日本でも列車がとまることはめずらしくないが、暑さで止まることはほとんどない。地球温暖化の影響は、世界各地で多様に現われており、日本だけで災害対策をしても、不十分である。少なくとも、となりや近隣の国々の自然災害に、もっと目を向けるべきだろう。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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