飛行機内でマスク拒否でトラブル 国交省と航空会社のミスではないか

 今日9.10日の羽鳥モーニングショーで、北海道から大阪に向かう飛行機でのトラブルを紹介していた。飛び立つ前に、マスクをしていない客と周囲の客にトラブルが生じた。そこで客室乗務員が、マスクをもっていって、着用をお願いしたところ、そんな義務はないと断られた。そのために座席を移動する客もいたという。しかし、客の誰かがとった映像で見ると、かなり客席は埋まっており、自由に移動できる空きがあったようには思えない。そういうやりとりで、50分ほど出発が遅れたという。離陸後も、その客が大声で話したりするので、途中の新潟空港に緊急着陸し、警官なども着て、その乗客を降ろした。そのときには、乗客から拍手が起きたということだ。そして、降りる際に、その乗客は、「バイバイ」と言ったので、不快になったという談話が放映されていた。

 この後、いろいろな意見が出たのだが、どうも、私にはずれているとしか思えなかった。
 まず大前提として、国土交通省が出している「機内でのマスク着用は義務ではない」という指針があるのだそうだが、それを基準に番組では考えていた。まあ、公共放送としては仕方がないのかも知れない。しかし、国交省がそのような指針をだしたからといって、航空会社が、マスク着用を義務とする権限はある。サービスを提供する企業が、客のことを考えて、様々な条件を決めるわけだ。それが一々国の基準に合致していなければならないわけではない。今回の事例自体が、その指針に異議を感じている客が、騒いだことが発端だ。客が全員、マスク着用していなかった客を、素直に受け入れていれば、特別な問題にならなかったわけだろう。しかし、不安に思う客がいた。当然のことといえる。だからトラブルになった。そして、そのトラブルに対して、国交省の指針は、役にたたなかったわけである。あるいは、それに従って解決しようとしたために、航空会社のほうが、解決できない状況になってしまった。会社にトラブル解決能力がなかったわけだ。
 国交省の指針と異なる指針、つまり「マスク着用義務を客に要請」することはできないという意見をもつ人がいるかも知れない。それは、法の運用に対する基本的な誤解である。
 飲食店で、喫煙を禁止する法律が現在ではあるから、その条件に当てはまる飲食店は、禁煙にしなければならない。その法律は最近できたものであって、それまでは、飲食的では禁煙にしなければならなかったわけではない。だが、ファミレスの多くは、禁煙だった。つまり、法律上では、喫煙は許されているけれども、店の判断で禁煙にすることはできる。以前は、営造物理論などで理論化されていたが、今では、営造物理論が否定されているとはいえ、公共的なサービスを提供する側が、サービスの受け手を保護するために、様々なルールを定めることは、十分に認められているはずである。国が指針を出すとしても、それがかならずしも有効に機能しないと判断できる場合には、独自のルールを定める必要があることは、当たり前のことだろう。そうしたサービスを受ける側に、明確なルールを示さなければ、今回のようなトラブルは、いくらでも起きるのである。
 今回の場合の最大の問題は、航空会社側に、明確な行動規範がなかったことである。飛行機内で、マスクの着用にばらつきがあれば、トラブルになることは、ごく当たり前のこととして予想しなければならない。そして、実際にトラブルが起きた。ところが、結果として、トラブル解決に失敗したわけである。この場合、国交省の指針に従って解決するならば、マスク着用を拒否している客ではなく、それにクレームをつけている客を、国の基準として、マスク着用は義務ではないので、お客様に着用を強制することはできないのです。了解してください、と説得する。何故、そうしなかったのだろう。それならば、国の指針を根拠にできる。しかし、どのレベルでの指示なのかはわからないが、客室乗務員は、マスク着用を「お願い」した。お願いになったのは、国の指針があるからだろう。もし、その線で解決することを目的とするならば、離陸前に警官にきてもらって、客を降ろすべきだった。だがそれをせず、「大声で騒いだ」という理由で、わざわざ新潟で緊急着陸するという、実にまずいやり方をとってしまった。
 結局、トラブルが解決されないまま、そして、心理的な不満を双方に残したまま、離陸してしまったわけだ。
 このようなトラブルを予想しなかったとしたら、航空会社として失格だろう。だから、必要なのは、「事前に」明確なルールを、チケット購入者に購入段階で明示しておくことだったのである。それは、航空会社の判断によっていいと思う。「機内では、かならずマスクの着用をしてください。従うことができなければ、搭乗できません」とするか、「機内でのマスク着用は、国の指針によって、義務ではありません。」とするか、あるいは、「機内でのマスク着用は、国の指針によって義務ではありませんが、できるだけ着用をお願いします」とするか、どれかだろう。しかし、三番目は、トラブル解決能力がないので、他のふたつのどちらかだろう。そして、どちらかに決めれば、そのルールによって、対応を曲げないことが必要だ。
 更にいえば、機内のマスク着用は義務ではない、などという指針を、わざわざ国交省が出す必要があるのだろうか。今回の混乱は、その指針にもあることは明確である。なんでも指針を出せばいいというものではない。企業の考えかた、また、外国の会社もある。そういうものを一律に規制することは難しいだろう。指針として出すとしても、それぞれの事情に応じて、制定してもよいこと、事前の明示が大事であること、などを付け加えておくべきだろう。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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