北朝鮮情勢を考える ボートピープルへの備えは必要ではないか

 金正恩危篤、あるいは死亡の憶測が、さまざまなメディアで流れている。もちろん、正式発表がなされるまで、正確なことは、当事者の近くにいる者以外にはわからないわけだが、できるだけ公開されている情報を元に、何がおきていて、何が今必要かを考えてみたい。
 金正恩は、政治的には死亡していると思われる。4月15日と25日の極めて重要な行事に出席していないこと、これだけ死亡説が流布し、しかも、アメリカの有力メディアが報道しているにもかかわらず、北朝鮮がなんらコメントしていないこと、中国から2度に渡って医師団が北朝鮮に入ったと、かなり確度の高い情報として流れていること、米中韓の政府がいずれもこの点について沈黙を守っていることなどが、その根拠である。
 私自身は、もちろんオリジナルな情報を収集できる人間ではないので、あくまでも公表されているネットでの情報を、私なりに考えての考えであるが、まず、トランプ大統領が、親書を受け取ったというのは、事実であると思う。その親書の内容は、想像するに、金正恩が再起不能であることを伝え、後継が決まるまで、沈黙を守ってほしいという内容であったと考えられる。しかし、トランプは完全にそれを守ることができず、観測気球的な意味もあって、微妙な内容を漏らしたか、あるいは、CNNがどこからか情報を得て、報道してしまったので、火消しをしているかのどちらかだろう。送ってもいない親書を「もらった」と語ったのだとすれば、もっと大きな反発を、北朝鮮はするはずだと思うが、単に、「送っていない」という程度のものだったようだ。「秘密に状況は知らせるから、どうかだまっていてくれ」ということではないか。
 中国から送られた50名の医師団というのは、むしろ、政治家を多く含んでいるだろう。金正恩が倒れれば、当然後継問題が深刻な状態になり、権力闘争が起きて、国家社会がどうしようもない混乱に陥る。だから、もちろん闘争状態だろうが、とりあえず、中国に頼んで、調停してもらっているのではないか。米中韓、そして日本も沈黙を守っているのは、権力闘争が起こって内乱状態になることを、絶対に避けたいから、とりあえず、中国の調停で後継者が安定的に決まることを待っているのだろう。下手に表沙汰になれば、当然さまざまな政治勢力が動き出すわけだ。
 しかし、後継者が安定的に決まることは、かなり難しい。金日成から金正日、そして、金正恩への権力委譲は、既に先代死亡時には、規定の路線になっていた。それでもかなりシビアな権力闘争があって、粛清が起きたのだが、今回は、正式に後継者が決まっているわけではなく、また、金正恩が、金与正を後継指名したといっても、実際上の体制として動き出していたわけではないし、なんといっても、女性であることが朝鮮社会では不利になるとされる。
 金王朝が倒れるというシナリオもあるだろうが、(その場合には、金正日や金正恩に粛清された人たちやその遺族たちが、崔竜海を担ぐとされるが。)それは事実上の内乱状態になるわけで、中国もアメリカも望まないだろう。結局、金与正の線で中国は調停する可能性が高いのだろうが、それでも、一時的に安定しても、その後どうなるかわからない。少なくとも大量の難民が発生するはずだ。
 事実、中国では難民が来ることを防ぐための交通機関の遮断などの準備に入っているという報道もある。日本には、ボートピープルとして、大量に押し寄せる可能性がある。日本は近いわけだし、海岸線が長いから、かなり対応は難しく、どんどん入ってきてしまう可能性がある。どうするのだろうか。少なくとも、近々そうなるとしたら、コロナ感染者が大量に含まれる可能性があるわけだから、やはり、遮断するという対応をとらざるをえないはずである。そのためには、かなりしっかりした防御体制をとる必要があるのではないか。
 もちろん、上記のことが間違いである可能性もあるし、また、今の状況で隣国が大混乱するのは好ましくはないから、危篤説が間違いであるほうがよいのだが。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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