アメリカでの教育上の対立 保守・リベラル対立図式では解決できない

 9月11日毎日新聞に「リベラルな学校教育を批判する「ママたち」急増 共和党も後押し」と題する記事が掲載された。
 コロナによるオンライン授業で、それまで見えなかった学校教育の部分が見えるようになり、あらたな親の組織による運動が発展しているという紹介記事だ。しかし、注意して読まないと、誤解をしてしまう部分が多い。
 紹介されている中心は、「マムズ・フォー・リバティMoms for Liberty」という団体だ。記事によると「人種や性に関するリベラルな教育内容を批判」していると同時に、もっとも主要な主張は「親の権利」だ。

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少年自然の家・青年の家廃止 欧米型キャンプ場に活用できないか

 8月28日の読売新聞に「中高年には懐かしい「少年自然の家」、存続の道は険しく…20年間で廃止250か所以上」という記事がでた。
 少年自然の家や青年の家は、中高年の人は、ほとんどが利用した経験があると思うが、コストや利用数、そして、建築物の老朽化等々の理由で、廃止されるところが増えているという。しかし、なかなか跡地利用が進まないとも。
 いろいろな利用形態が、現在ではあると思うが、主要には学校単位で、教師が引率する宿泊行事に活用されているのだろう。そのために、教師の負担も大きく、そのための利用の減少がある。少子化の影響もあるだろう。私も中学時代に林間学校で利用した記憶があるが、人数が私の世代の3分の1くらいになっているのだから、利用数の減少が起きるのは当然だろう。

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吉村 部活改革案は何も改善しない

 吉村大阪府知事が、部活の改革として、複数の学校でひとつの部活という案を検討するという。各種メディアで報道されているが、NHKの記事でみていこう。「大阪知事 複数の府立高校で1つの部活動運営 制度検討を指示」
 文科省は、教員の働き方改革の改善として、部活については、順次地域のクラブに移管していくことを提起している。それに対して、吉村知事は、それは、多くの財源が必要なので、絵に描いた餅ではないかとして、ひとつの学校で部活を完結させるのではなく、近隣の2校で1つの部活を運営されるような「複数校1部活制」があってもいいという意識だそうだ。記事によると、会議に出席した4人の教育委員がおおむね賛成だった。

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女子中学生の無差別殺人未遂

 私の記憶する限り、これまでまったくなかった事件だ。15歳(自称)の少女が、まったく見ず知らずの人を、渋谷という人々が多数いる場所で刺した。刺されたのは母と子ども(女子)で、今のところ生命に別状はないようだが、昨日のニュースでは、意識はあるという、かなり危険な状態であることを思われる表現をしていた。(最低3カ月の重傷ということだったが、娘のほうは腎臓にまで傷が達していたという。)
 前代未聞だと思っていたら、ヤフコメに、自分の近所で女性が刺した事件が、昨年だけで3件もあったという文章があった。報道されないだけで、実はたくさんあるのかも知れない。しかし、それにしても、未成年がこうした特に無差別の殺人未遂、殺人のような凶悪犯罪を起こすのは、ほとんどが男だったが、今では、女性でも起こす時代になったのか。

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大学における実務家教員の増加

 最近、大学の教師として、アカデミックな道を通らずに、実務をしてきた人が教授などになることが多くなってきた。文科省も推奨しているようだ。8月17日マネーポストWEBに「査読論文なしで教授職に… 大学教員たちから噴出する「実務家教員」への懸念」という記事が掲載された。
 実務家教員の負の側面を中心にまとめた記事である。私の在職したいた学部にも、実務家教員は少なくなかった。しかし、その実態は様々であり、前歴は実務でも、研究能力に優れた人もいたし、やはり、研究面は弱いと感じる人もいた。
 この記事で、実務家教員へのネガティブな評価は、
・個人的な人間関係で採用される場合が多い

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偏差値教育は間違いというが2 具体的構想

 入試を廃止するということは、どういうことだろうか。それは、高校での成績を規準に考えるということであり、また、資格試験を設定しても可能だろう。理想的には、大学に定員を設けず、規準を満たしている者はすべて入学できるようにすることである。アメリカの州立大学は、基本的にそうしたシステムになっている。州立大学は敷地が広く、キャパシティが大きいこと、そして、学部は理学部と文学部のふたつしかなく、教養大学であることが、そうしたシステムを容易にしている。アメリカでも私立大学は、独自の選抜システムを設定しているが、日本のように、一定期日に一定の場所に集めて、学力試験をすることはない。高校の成績、資格試験の成績、そして種々の提出書類によって選抜が行われる。大学入学の時点では、日本人のほうが、少なくとも以前は、学力水準が高かったが、卒業時には逆転すると言われていたのは、こうしたシステムによるところが大きい。
 ヨーロッパでは、高校の成績と全国的な資格試験を突破すれば、大学への進学が認められる国がほとんどである。ただし、大学のキャパシティによって、第二、第三志望に廻されることがあるが、大学間の格差はあまたないので、学生にとっては拘りは少ないようだ。

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偏差値教育は間違いというが1

 ダイヤモンド・オンライン(8月11日)に、「日本電産・永守会長による「日本の偏差値教育は根本的に間違い」と断言する理由」という記事がでている。要するに、日本の生徒たちは、自分のやりたいことではなく、偏差値によって入れるところを選択する進学指導を受けて、実際に自分でもそうしている。それは根本的に間違いだ。だから、本当に自分がやりたいことは何なのか、それをしっかり見つけて、進路を選択せよ、という趣旨のようだ。
 確かに、全く正しい。そして、そんなことは、ほとんどすべての日本の生徒・学生たちが、一度は思ったに違いない。偏差値が足りなくて、志望を変更せざるをえなかった生徒たちだけではなく、お前は偏差値が高いから医学部に行け、と指導されて、無理に医学部に進学した生徒などもいる。

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文科省が「ギフテッド」支援へ?

 朝日新聞8月7日に「飛び抜けた能力、なじめない学校 文科省「ギフテッド」の子を支援へ」という記事が掲載されている。
 しかし、どうも趣旨のよくわからない記事だった。
 「突出した才能をもつ子どもが円滑な学校生活を送れるよう、支援する。」というのだ。周囲となじめず困難を抱える子どものために、学習プログラムを展開するNPOに情報を提唱し、教員の研修を充実させるということらしい。
 突出した能力をもって、授業になじめない子どもを、なじめるようにするというのは、ギフテッド対策として、いかにも一面的なのではないかと思われるし、授業になじめない子どもは、ギフテッドでない子どももたくさんいる。授業になじめない子どもは、誰であれ、なじめるように工夫するのは、教師にとって重要な仕事だ。
 この記事には、「文科省のアンケートから」、特異な才能の例として、「8歳で量子力学や相対性理論を理解」する子どもがあげられ、困難な経験の例として「授業が面白くないと我慢の限界となり、不登校に」とある。このふたつが「組み合わされて」いるわけではないが、本当にこうした例があるのかという問題と、あったらどうするのかを少し考えてみよう。

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科学五輪参加者 女子は5%

 毎年夏に、高校生を対象とした科学五輪が開催される。それを機にした記事が朝日の掲載されていた。
「科学五輪日本代表、女子は5% 科学技術振興機構が直近10年を集計」
「科学五輪の日本代表に極端な性別の偏り 識者が指摘する問題点」
である。
 教育未来創造会議が、理工系学生の50%を女子にするという構想が、現在文科省が工程作成をしている最中である。これについて、ブログで触れた。「理工系学生を50%にという未来像」
 
 私は、理工系の大学生の割合を増やすことは大賛成であるが、しかし、女子を有利にすることで達成することではないから、教育を変えていく必要がある。決して、女子を抑圧・差別して、理系の女子学生が少ないわけではない。もちろん、大きな社会的背景などを考えれば、広い意味で差別であるかも知れないが、少なくとも意図的に女子の理系進学を抑圧しているわけではない。これは、科学五輪の参加を見れば、やはり女子が理系について消極的であることがわかる。科学五輪は、国内選考を経て、国際大会に出場するわけだが、国内選考への参加段階で、女子は3割未満だそうだ。例外は生物で5割が女子だった。過去10年間に選出された女子は16名で、情報と物理は0である。生物でも5名だ。因みに総計は302名。中高一貫の男子校が圧倒的に多いというのも、考える必要があることだろう。

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大学の定員管理の緩和 授業料等を考える

 私は、2020年3月に定年退職したのだが、2018年問題が深刻化するといわれていたのを、文科省が、定員管理を厳格にすることによって、深刻度がかなり緩和されるということがあった。2018年問題とは、少子化による18歳人口の減少が、2017年まではかなり平坦になっているのが、2018年から再び減り始める、したがって大学受験者数の減少傾向が続き、特に偏差値上位校以外は、苦しくなるという問題だった。そのことによる私立大学の倒産を回避すべく、文科省は、定員管理を厳格にすることによって、多くの私立大学を救った。つまり、それまで定員の2割増しまで認めていたのを、1割増しまでにするというのが厳格化である。定員の2割以上を入学させると補助金を支給しないのを、1割以上で支給停止ということだ。補助金カットされたら、非常に困るので、大学としては、入学定員を定員以上、110%の間にすることに、腐心した。しかし、効果はてきめんだった。早稲田・慶応からはじまって、それまで合格するはずだった1割が順次下位校にまわっていくことになる。だから、中堅校あたりは受験数が確実に増え、辞退者が減った。

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