youtubeを見ていたら、たまたま「初心者のための5つのオペラ」という番組があったのでみてみた。早口の英語だったので、詳細は聞き取れなかったのだが、もちろん曲目とその主要な魅力の説明はわかった。その選択は、非常に納得がいくものだったが、「初心者」とは何かというのが気になったので、それを考えてみたいと思った。
まず紹介されていたオペラは、順に
1 ラ・ボエーム(プッチーニ)「私の名はミミ」の場面が流れた。
2 カルメン(ビゼー)「ハバネラ)
3 魔笛(モーツァルト)「夜の女王のアリア」
4 椿姫(ヴェルディ)「乾杯の歌」
5 セビリアの理髪師(ロッシーニ)「なんでも屋の歌」
というものだった。作曲家一人につき一曲という配慮かも知れないが、あえていえば、5番目にモーツァルトの「フィガロの結婚」をいれてもいいとは思うが、だいたい妥当な選曲だろう。
ところで初心者とは何かということだが、クラシック音楽そのものをあまり聴いたことがない人なのか、あるいは、クラシックファンではあるが、オペラはほとんど聴いたことがないという人なのか。それによって、多少選曲もちがって来るように感じるのである。私が所属している市民オーケストラのメンバーで、初めてオペラをみた、それは「ドン・ジョバンニ」だったという、そういう人がいた。長く市民オーケストラに参加している人だし、クラシック音楽歴は長い。だが、オペラを生で聴いたのは初めてということは、彼もオペラには初心者ということに違いない。たぶんCDでオペラを聴いたこともあまりないと思われる。「ドン・ジョバンニ」に違和感を感じなかったようだが、それでも、初めて聴くオペラとして「ドン・ジョバンニ」は珍しいと思う。
大分前だが、読んだ雑誌に、ドイツでは、子どもを最初にオペラにつれていくときには、ほぼ「ヘンゼルとグレーテル」で、その次が「魔笛」だという。おそらく、オーケストラの演奏会などもあまり行っていない段階でのオペラ鑑賞だろう。ドイツでは、中都市以上ではほぼオペラ劇場があり、チケットも安いので、日本よりはずっと大衆娯楽的に楽しまれている。「ヘンゼルとグレーテル」は、確かに子ども用とはいわないまでも、有名な童話が題材だから、子どもに親しませるのに最適なのだろう。そして、次に「魔笛」がくるというのも納得がいく。たしかに、あまり音楽に親しんでいない子どもでも、「魔笛」は楽しめるもので、私の子どもも小さいころに見て、気に入っていた。 ただ、上記の「初心者」は、子どもではなく、ある程度クラシック音楽を親しんでいるが、オペラはなかなかなじみがないという人のことではないかと思われる。コメントしている人はアメリカ人で、アメリカで上演されているものの映像が使われていた。アメリカは日本よりは、進んでいるだろうが、ヨーロッパほどにはオペラが市民の間に浸透しているわけではない。
それから、上記の選択は、クラシック音楽に親しんでいるといっても、ブラームス、チャイコフスキーくらいまでの音楽に親しんでいるひとたちが想定されていて、マーラーやリヒャルト・シュトラウス、ストラビンスキー、アルバン・ベルクなどまで普段鑑賞している人は想定外のような気がするのである。そういう人で、なおかつオペラにあまり親しんでいない人がいるかどうかはわからないが、もしいたとしたら、そのような初心者には、ワーグナーが入ってくるだろう。その場合、何が選ばれるのか。
昭和の時代くらいまでだと、ワーグナーの入門オペラは、「タンホイザー」か「ローエングリン」だといわれていたが、平成くらいになると、いきなり「トリスタンとイゾルデ」から、ワーグナーを聴き始める若者が少なくないという記事を読んだことがある。現在オペラを家で鑑賞する場合、映像バージョンが普通だろうと思われるが、映像としてHMVで販売されている「タンホイザー」は6種類で、「ニーベルンクの指輪」は11種類もある。レコードの時代では考えられないような状況だ。こういうことを考えると、初心者のためのワーグナーの第一に、「トリスタンとイゾルデ」がくるというのも、不思議ではないのかも知れない。それで、クラシック音楽は普段親しんでおり、ストラビンスキーやベルクまでも聴いている人だが、オペラ初心者という人のための曲を考えてみた。
1 カルメン
2 コジ・ファン・トゥッテ
3 オテロ
4 ワルキューレ
5 バラの騎士
この前提での選択は、人によってかなり異なりそうだ。