火葬場のこと

 今日の羽鳥モーニングショーで火葬場問題をやっていた。東京23区の火葬場は公営が2つのみで、あとは民間だというのだ。そのために、他の通常の公営に比較して火葬費用が非常に高い、小池知事がなんとかすべきという方針をだしたということで、火葬場の現状について、議論をしていた。アメリカの葬儀などと比べると、日本は非常に複雑な構造をもっていることが、再認識される。ドラマや映画の話なので、どこでもそうなのかはわからないが、アメリカの葬儀というと、土葬される場所に、神父(牧師)がきて祈り、そして、設定された場所にお棺ごと埋められるという場面がほとんどだ。
 ところが、日本はほとんどが火葬だから、葬式を別のところでやって、車でお棺を火葬場まで運んで、再度簡単な儀式めいたものがあって、火葬され、ごく近い関係のひとが、最後までまっていて、その後場所をかえて、食事会などがなされるという感じが多いのではないだろうか。僧侶が葬式や火葬場にきてお経をあげることも少なくない。別に告別式をやったり、お通夜、寺での葬式などが入る場合もある。つまり、最後は火葬される点で共通しているのだが、その前の儀式は多様であり、宗教がからむこともからまないことも、家族の考えでちがってくる。葬儀などは、ほとんど民営であろう。
 火葬場だが、23区に火葬場が少ないだけではなく、多くが民営だというのが驚きだった。私は20歳まで世田谷にいたが、葬式に出たことはないので、火葬場を意識したことはなかった。その後親の葬儀は、八王子と千葉県だったので、公営の火葬場を利用し、料金も高くはなかった。

 では何故東京の23区に公営火葬場が増えないのか。理由はいくつかあるようだ。
1 民営の火葬場があるために、民を圧迫しないために、公営をつくりにくい。
2 住民の反対運動が強い。
3 超過密地域であるために、場所がない。
 考える必要があるのは2だろう。結局、住民が反対しているが、その結果として、火葬場が圧倒的に不足し、かつ民営のために料金が高いという不便を強いられることになる。火葬場は住民に嫌われる施設のひとつということだが、必要な施設であることも、住民はわかっているだろう。ごみ焼却場が反対運動にあう、そしてそれが不便を強いることになるという点で似ている。
 デンマークにしばらく滞在したときに、ごみ焼却場がやたら多いことに驚いたが、これは、ごみ焼却場の熱を利用して地域に熱湯を供給するシステムになっているからだという。たしかに、デンマークにいたときには、民衆学校の寮にいたのだが、いつも適度のお湯がでていた。シャワーとコーヒーを飲む程度のことは、充分に賄えた。一般の家庭でどの程度まで使えるのかはわからないが、寮の食堂でも充分に使用できていたから、家庭でも問題はないに違いない。こうなれば、ごみ焼却場の必要性は誰にもわかり、反対運動などは起きないだろう。
 日本のごみ焼却場も、新しくつくられるところでは、なんらかの地域への還元をしている。さすがに地域給湯システムは無理としても、温水プールを設置したり、共同風呂などには利用されている。
 火葬場も当然高熱をだすわけだから、熱を活用した地域住民サービスを行えば、反対運動に対応できるし、むしろ設置要望がでるかも知れない。
 日本の過疎地域では、刑務所の設置要望などがでたりしているのであるから、地域に必要であり、かつ有効な付加価値があれば、火葬場をつくる困難は減少るのではないだろうか。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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