今日、東京交響楽団によるバッハ「マタイ受難曲」を、ミューザ川崎コンサート・ホールで聞いてきた。2時開始で終了が5時半という、オペラなら普通だが、合唱曲とはいえ、定期演奏会としては、異例の長時間の演奏会だった。ミューザ川崎は、初めていったのだが、以外と便利なので、これからもたまにいくかも知れない。このホールは、響きのよいことで有名で、日本で最もよいという演奏家の声もある。席がよかったせいもあるが、とても心地よい響きだった。
ジョナサン・ノット指揮、カタリナ・コンラディ、アンナ・リヒター、ヴェルナー・ギューラ、ミヒャエル・ナジという外国人歌手に、桜田亮、萩原淳、加藤宏隆の日本人歌手、合唱は東京交響楽団専属の合唱団と東京少年少女合唱隊が参加していた。
マタイ受難曲は、演奏会として初めてなうえに、全曲をCDでも聴いたことはわずかしかない。正直1枚目から聴いていても、時間の関係やあるが、途中で脱落してしまうことが多かった。今回はさすがに演奏会だから、途中脱落はありえないが、字幕が出ていて、物語の進行がわかるのが、途中で脱落しないで、しっかり最後まで聴けた理由だと思った。オペラの場合、最近はまず字幕があるが、字幕がない時代でも、実際にドラマとして演じられるので、大体の筋がわかっていれば、劇を進行を理解することはできた。しかし、マタイのように、固定された舞台で、オーケストラと合唱団がならび、その前でソリストが歌うという形式だと、筋がわからない。マタイ受難曲は、明確にそれぞれの声がドラマの進行の内容を歌っているので、内容がわからずに聴いていても、やはり没入できないのだ。やはり字幕はとても大事だと思った。もちろん、ドイツ語として理解できるひとは別だが。
今回の演奏は、モダン楽器によるロマン的な演奏といえるものだった。ビブラートはほとんどかけていなかったが、管楽器は現代の楽器をつかっていて、編成も比較的大きく、合唱の人数も多かった。カール・リヒター流の厳しさが前面にでた演奏でもなく、やさしさ系といいたいような感じだった。しかし、激しい場面での合唱は迫るものがあった。
ソリストたちは、外国人の4人はほんとうに素晴らしかったように思う。エヴァンゲリストは、リヒター(旧版)では、テンポが遅く、説明的すぎる感じがギューラは、快適テンポをとることが多く、物語が進んでいく感じがした。コンラディ以外はドイツ系のひとたちなので、表現にゆとりが感じられる。他方日本人の方も、奮闘していたと思う。もちろん、外国人たちを超えているというわけではないが、劣っていないと感じた。
これまで若干遠ざけいたマタイだが、これを機会にもっとじっくり聴いてみようと思う。