伊豆旅行1

 これからは、年に1回程度旅行に行こうということで、今日から伊豆旅行にでかけた。中央道、圏央道、東名から、伊豆縦貫道を通って、下田にきた。
 下田はずいぶん前にきたことがあり、歴史を感じさせる町だが、今回もペルー道などを通ってみた。本格的には明日からになるが、その報告をしたい。まったく個人的なことだが、ご寛恕願うということで。
 伊豆縦貫道に入って、しばらくスルト、「天城越え道の駅」があり、そこでしばらく時間を過ごした。というのは、「昭和の森」という記念館があり、下田・伊豆に関係する文学者の資料がそれなりに展示されているので、それを見たかったわけだ。「天城越え」といえば、私にとっては、当然松本清張の小説が思い浮かぶわけだが、どういうわけか、この「昭和の森」記念館には、松本清張がまったく扱われていない。最も重視されていたのは、井上靖で、移転された旧宅まである。

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ユージン・オーマンディ 不当に低く評価された指揮者3

 ずっと書こうと思っていたが、ウクライナ情勢などもあり、書けなかった話題「評論家に不当に低く評価された指揮者」の3人目、というか、最も極端に実力と日本人評論家の評価に落差のあった指揮者といえるオーマンディを取り上げたい。オーマンディといえば、「フィラデルフィア管弦楽団の華麗なる響き」とか「協奏曲伴奏の名手」などといういい方をされていた。肝心の指揮者としての実力を、まっとうに評価する評論家は、非常に少なかったという印象は、多くのひとがもっていたに違いない。いまでもウェブを検索すると、オーマンディの人気がないのはなぜか、という話題がけっこうあるのだ。もちろん、そういう話題を振るひとは、オーマンディが好きなわけだし、偉大な指揮者だと思っているのだが。かくいう私もオーマンディは非常に偉大な指揮者だと思っているが、実は、それほどCDをもっていない。子どもの頃には、「ピーターと狼」のレコードがあって、これは、子どもながらすばらしいと思っていた。ピーターを表現する弦楽器の音がさわやかだし、小鳥のフルートが超人的にうまい。各場面の描き方が、目に浮かぶようで、いまだにオーマンディ以上の「ピーターと狼」は聴いたことがない。しかし、その後は、ほとんどオーマンディのレコードを買うことがなく、CDとしては、「オーマンディ・オーケストラ作品」というソニーのボックスをもっているくらいだ。最近でたモノラル録音のコンプリートは、さすがに買う気持ちにはなれず、とりあえず、このオケボックスを、もっと聴いてみるつもりだ。

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鬼平犯科帳 木村忠吾はいつ結婚したのか

 今日は少々息抜き気味に、久しぶりに鬼平犯科帳ネタ。
 題名の通り、「木村忠吾はいつ結婚したのか」を解こうということだ。「シャーロック・ホームズ」には、国際的なクラブがあるそうで、入会するためには、極めて難しい試験をパスしなければならないということだ。つまり、ホームズに関する、細かい内容を知っている、つまり、全シリーズの内容を詳細に知っていることを示せないと、入会できないというもので、日本人は数えるほどしか会員がいないとか。逆にいえば、ホームズには、それだけの作品としての魅力と、それから膨大な量の物語があるということだ。
 日本の小説で、そこまでするだけの人気を誇る物があるだろうか。たくさんのひとが原文で読んでいるだけではなく、ドラマになっていて、内容が知悉されていることが必要だ。だから現代小説でなければならないが、私には、第一候補は「鬼平犯科帳」だと思われるのだが、難点は、鬼平犯科帳の内容には、いくつか矛盾があることだ。前にも書いたことだが、平蔵の部屋に忍び込んで煙管を盗んだ船頭の友五郎(かつての盗賊浜崎の友蔵)は、「流星」(8巻)で盗賊の手伝いを無理やりやらされて、島流しの刑になる。(もっとも予告だけだが)それが、「火付け船頭」(16巻)では、もともと働いていた「加賀屋」で普通に船頭をしており、常吉の逮捕に協力している。つまり、作者は、友五郎が島流しになるはずだったことを、忘れてしまったのかと、少々疑わざるをえないのである。このように、物語のなかに、辻褄が合わない点があれば、「試験」をつくるうえで難点になる。そういう例をいくつか「分析」してみようというわけであり、今回は、題名のことを扱う。

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ウクライナ侵攻はなぜ起こったか トルストイ流に考える4 マクロンと旧東欧

マクロン
 フランスという国家が、私には、非常に遠い国になってしまった。フランスのニュースといえば、同時多発テロでの被害だったり、あるいはワクチン義務化をめぐる騒動だったり、とにかく、騒乱が主なニュースになってしまった感じが強い。日本との関連でいえば、日産におけるカルロス・ゴン騒動が、フランスのルノーと関わっているから、大きなニュースになったが、とにかく、いいニュースがあまり記憶にない。
 ロシアのウクライナ侵攻に関しては、マクロンがいち早くモスクワに飛び、プーチンと差しで談話をしたが、長いテーブルの端に座った対談で、とうてい何か有益な結果が残せる雰囲気ではなかった。マクロンとプーチンの「遠い距離」が目立った会談となり、その後も、何度か電話会談をしたが、成果があがったという話は聞かない。当初は、プーチンに話をつけられる大統領ということで、支持率があがったそうだが、今では前に戻ったとされる。そして、フランスでも、間もなく大統領選挙があり、国民連合のル・ペンに追い上げられており、最新の調査によれば、決戦投票になった場合の予想投票率は、誤差の範囲だという。つまり、ル・ペン当選の可能性も出てきたのだ。

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ウクライナ侵攻はなぜ起こったか トルストイ流に考える3 中東産油国とドイツ

中東産油国
 日本人からみると、あれだけ不当なロシアのウクライナ侵略は、北朝鮮や中国、そしてシリアのような超独裁国家、しかも、かなり非人道的な独裁国家しか支持していないのは当然として、他の国はロシアとの交流など断って、制裁を加える側にたつと思われるが、実際には、非難決議には賛成しても、実際に経済制裁をせず、あるいはウクライナに、様々な援助をすることを拒む国家も少なくないことは、不思議な感じがする。しかし、国際的にみれば、民主主義国家よりは、独裁的な国家のほうが多いことは、忘れるべきではないし、中国やロシアの経済的影響を受けている国は多いのである。
 だから、中東産油国が、反ロシアの実際行動をとっていないことは、意外ではないのかも知れない。しかし、私が認識していた以上に、中東産油国のアメリカ離れは進んでいた。

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ウクライナ侵攻はなぜ起こったか トルストイ流に考える2

ゼレンスキー
 ゼレンスキーにとっての、ロシアによるウクライナ侵攻を考察するのは、非常に難しい。誤算はプーチンにだけではなく、ゼレンスキーにもあったと考えられるし、また、大統領になってから、かなりスタンスが変化したことも考えなければならない。
 ゼレンスキーは、周知のように、喜劇役者だったが、国立大学で法学の学位をとっている。だから、日本のような,あまり学校にもいかず、芸能界で生きてきたタレントとは異なる。大学卒業時に、喜劇役者として生きていくか、あるいは大卒のひとが一般的に歩む道に進むか、迷った末の選択だった。しかも、単なる役者ではなく、自らドラマを作成するクリエーターでもあり、かつ、ITを駆使することもできた。
 そうして、有名になった大統領役をしたドラマも、自ら制作したものであり、たまたま、そうした企画で採用された一俳優ではなかった。だから、政治経験がなかったとしても、そうしたドラマ制作を通じて、政治や行政、そして社会全般の問題について、相当勉強し、考えたに違いない。
 ゼレンスキーの経歴を見ると、ロシア語の環境で育っており、東部出身だから、ロシア人との交流もあり、ロシアで仕事をしたこともあるようだ。だから、ロシアとは、元来敵対的ではなく、ドネツク、ルガンスクの「自治共和国」についても、強権的な対応を当初からとっていたわけでもなかった。

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ウクライナ侵攻はなぜ起こったか トルストイ流に考える1

 トルストイは、『戦争と平和』のなかで、何度も、戦争はなぜ起きるのかを考察している。小説であるのに、その部分は論文調なので、退屈に思うひとも多いのだが、私はなかなか面白いと思って読んでいる。しかし、結局は、トルストイにとっても、その答は明確ではないようだ。巷間言われている説、ナポレオンの征服欲が原因だ、とか、ロシア皇帝がナポレオンの要求を受け入れなかったからだ、とか、あるいはより地位の低いひとたちの意志などを、様々にあげながら、しかし、それらのひとつが原因なのではなく、全体の複合によって、必然的に戦争へと人々は導かれていった、というような考えなのだろう。しかし、それでも、100万人を越えるような人々の殺し合いを引き起こした要因は、確かにひとつではなにせよ、いくつかの主要なものは想定できるのではないだろうか。そして、確かに、ある時点で、誰かが別の行動をとったら、ナポレオンはロシアに侵入しなかったというようなことは、確かにあるのかも知れない。また、ナポレオンの侵入後にしても、ロシア軍がボロジノでも闘わず、退却していたらとか、ナポレオンがモスクワにとどまることなく、皇帝のいるペテルブルグに進軍していたら、など、ひとが決断できる行動だから、別の決断にすることは不可能だったわけではないはずだ。だから、違う結果が起きた可能性を否定することはできない。結局、明確な、万人が納得できる理由を提示することは、不可能かも知れないが、様々な立場から考察してみることは、理解を深めることになるに違いない。

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ネトレプコがウクライナ侵攻に反対 ゲルギエフは?

 世界でトップクラスのソプラノ歌手アンナ・ネトレプコが、ロシアのウクライナ侵攻を非難する声明を出した。ロシア出身で、プーチンと親しいとされていた彼女は、ウクライナ侵攻が始まったとき、反対するように求められながら、「平和を望んでいる」と述べつつも、ウクライナ侵攻そのものには反対意見を述べず、芸術家に政治的発言を強要するのは間違っていると主張。欧米での重要な出演をキャンセルされていた。しかし、態度を変えたようだ。「ネトレプコがロシアのウクライナ侵略に反対、プーチン大統領との関係を否定する声明」という記事がそれを紹介している。
・ウクライナの戦争を明確に非難し、犠牲者と家族に思いを馳せる。
・いかなる政党のメンバーでもなく、ロシアの指導者と手を結んでいない。
・過去の言動に後妻される可能性があったことを認め、反省している。
・プーチンとは授賞式などで会ったことがあるだけで、ロシア政府から金銭的支援を受けていない。
・オーストリアに居住し、納税者でもある。
 以上のような内容の記事である。

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札幌五輪は招致すべきではない

 報道によれば、札幌市議会は、2030年冬季五輪の招致を可決したという。
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 札幌市が招致を目指す2030年冬季五輪・パラリンピックについて、札幌市議会は30日の本会議で招致を支持する決議案を可決した。決議案は自民党、民主党・市民連合、公明党が共同で提出し、賛成多数で可決された。共産党、市民ネットワーク北海道は反対した。(朝日新聞2022.3.30)
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 また、事前に行われたアンケートでは、約56%が賛成、約40%が反対だったという。しかし、世論調査には疑問もでていて、「そんな調査やっていたのか?」という意見や、新聞社の調査では、反対が多かったからか、公表後すぐに削除されたとか、賛成派にとって不都合な事実が、いろいろと語られてい。
 このことで、思い出すのは、荒川恭啓がやっていたラジオ番組で、東京五輪招致についての意見を求めたところ、圧倒的に反対が多くなった。もちろん、いくら政府に批判的な見解を述べることが多かった番組でも、オリンピック招致は、メディアとして実現したいというニュアンスで伝えていたのだが、この結果を伝えざるをえなくて、結果のみ発表したのだが、いかにも不快そうな感じで、そのあとすぐに別の話題にふってしまった。番組内で意見聴取をするなら、もっとちゃんと扱うべきではないかと思ったが、メディアってこうなのかと思ったものだ。

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読書ノート「発達障害は学校からうまれる」井艸 恵美 東洋経済オンライン

 読書ノートというのは多少おかしいかも知れないが、東洋経済オンラインに「発達障害は学校から生まれる」という連載のレポート記事がある。まだ継続中だが、学校現場のこまっている面、また筆者によれば、弊害を生んでいる側面について、深刻な報告がなされている。
 現在第6回まで進んでいるが、最初のほうは、もっぱら発達障害児に対する投薬治療の弊害を、患者たちの取材に基づいて警告を発している。詳細は、記事を読んでもらうことにして、自分なりに考察してみたい。
 ここで書かれていることを整理すると
・子どもに対して、安易に向精神薬を使用するのは問題があり、さまざまな弊害が生じている。
・近年は、こうした子どもの発達障害に対する薬物使用が広まっており、教師の側から、親に勧める事例も多くなっている。
・こうした状況に、警告を発する医師や教師もいる。
・子どもの発達障害は増加しており、その原因は環境によるところが多い。
・発達障害に関する文科省の大がかりな調査があり、通級学級から、特別支援学級、特別支援学校への、事実上の誘導がなされている。
 以上のようなことだと解釈できる。

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