カテゴリー: 鬼平犯科帳
「鬼平犯科帳」好きな話1 大川の隠居
「鬼平犯科帳」 作者の衰え?
長谷川平蔵の恩赦
鬼平犯科帳 昔の人は記憶力がよかった?
鬼平犯科帳 長谷川平蔵の油断
長谷川平蔵は、何度か危機的状況に陥ったことがあるが、その最大の危機は、京都に父の遺骨処理のために、休暇を利用して訪れていたときだった。休暇中であったにもかかわらず、虫栗一味をほとんど一網打尽にするという、実に水際立った働きを示した直後のことだ。にもかかわらず、この後で起きた事態は、まるで長谷川平蔵らしからぬ、間抜けな行動の連続によって起きたのだった。小説だから、どうということもないが、どこがどう問題だったのか、やはり、考察したくなるのである。
この逮捕劇で一躍有名人になってしまった平蔵は、江戸に帰ろうとするが、奈良見物を京都西町奉行の三浦伊勢守に勧められて、断りきれず承知する。しかし、虫栗一味の吟味の間暇なので、同行の木村忠吾と一緒に、愛宕山参詣にいく。しこたま飲んだあとの帰途、突然女に助けを求められ、脇差しを抜いて追いかけてきた30男が、女を差し出すように頼むが、それを追い払う。このとき、平蔵は、この30男が「只者ではない」と直感している。その後女を連れて、宿に帰る途中、この男があとをつけてくるのだが、平蔵は、それをうまく撒いてしまう。つまり、この日既に、只者でない男が、一端引き下がったのに、あとをつけてくる、という事態を、後々気にしていない。これが第一の油断。 “鬼平犯科帳 長谷川平蔵の油断” の続きを読む
鬼平犯科帳 鬼平の危急
「鬼平犯科帳」 平蔵は剣豪?
小説やドラマとしての「鬼平犯科帳」では、盗賊をとらえるときには、長谷川平蔵が出張るだけではなく、最も手ごわい相手と切り合い、切り殺したり、あるいは召し捕ったりする中心となる。しかし、それはあくまでもフィクションとしての面白さをだすための、時代劇に必須のアイテムとして設定されていると考えられる。NHKの「その時歴史は動いた」の長谷川平蔵篇では、 実際に捕まえたのは、スリなどばかりだったと放映したと、どこかに書かれていたが、それは違うだろう。小説ではなく、実在の長谷川平蔵を紹介する文献でも、かなりの人数の盗賊を捕縛したことは、何度もあるという。しかし、ほとんどの盗賊は、実際に現場を押さえられ、多数の盗賊改方の捕手たちに囲まれると、抵抗もせず逮捕されたらしい。これは、現在の暴力団ですら、警察が逮捕にきたら、銃で応戦するなどということはなく、そのまま素直に逮捕されることから考えれば、納得できることである。
ただ、そうした派手な捕り物以外の場面で、「鬼平犯科帳」では、当代随一ともいえる剣客として、切り合いを演じたり、あるいは、襲われる場面が多数でてくる。 “「鬼平犯科帳」 平蔵は剣豪?” の続きを読む
鬼平犯科帳 悪事への欲求
鬼平犯科帳は、いうまでもなく、犯罪者、とくに盗賊の犯罪を扱った小説である。盗賊といっても、様々なタイプの盗人が登場する。しかも、「本格の盗賊」とそうでないものに区分までしている。本格の盗賊とは、
・盗られてこまるようなところからは盗らない。
・人を殺さない。
・女を犯さない。
という三カ条を守るものをという。それに対して、財産全部盗ったり、あるいは殺人、強姦をするものに対して、平蔵は厳しく取り締まるし、また、本格盗賊も、彼らの軽蔑する。
ところで、盗賊といっても、いつまでも盗みを働き続けるわけではなく、途中で嫌になったり、あるいは、高齢になって引退することもある。また、捕まってしまう場合もある。捕まった者のなかで、改心し、役に立つと平蔵が判断すると、密偵に取り立てる場合もある。そういう引退したり、あるいは、密偵になった元盗賊が、盗みへの欲求を抑えられなくなるときがあるようだ。また、とくに盗賊だったするわけでもない、普段は善人なのに、ふと火付けをする話もある。 “鬼平犯科帳 悪事への欲求” の続きを読む
「鬼平犯科帳」 鬼平の隠蔽
現内閣は、隠蔽の名人ともいえる。いや、名人はうまくやるものだが、現内閣の隠蔽は、隠蔽していることが白日の下に晒されているから、何の工夫もしていない。追求側に、それを覆す力がないので、露骨な隠蔽をされても、隠蔽側は嵐はやがて去るという姿勢だ。日本の政治家の劣化が甚だしいという事例だろう。
現内閣の隠蔽は最高責任者の悪事が対象だから、始末が悪いが、さすがに長谷川平蔵は、失策を何度かしているが、悪事はしていない。若いころのごろつき同様の生活をしていたころには、何度かあり、それが物語で蒸し返されることはあるのだが。ただし、長谷川平蔵も隠蔽をしている。しかし、それは自分のことではなく、部下たちの不祥事に関してである。
もちろん、隠蔽不可能だったこともある。「あごひげ三十両」で、盗賊改方与力高田万津之助が、津30万石藤堂家の家来3人と切り合いになり、相手のひとりを死なせ、自分も怪我をして、翌日息をひきとる。高田に非がある喧嘩で、平蔵は、若年寄堀田摂津守に呼び出され、「いずれにぜよ、お役目は相つとまらぬものとおもうていよ!」と謹慎を言い渡されてしまう。
料理屋で始まった喧嘩であり、大藩の家臣を切り殺したわけだから、隠蔽のしようがなかったわけである。
しかし、以下紹介する4つの事例は、いずれも、当人は事情は異なるが、いずれも死んでしまうが、平蔵はそれを届けることなく、形としては、隠蔽してしまうのである。 “「鬼平犯科帳」 鬼平の隠蔽” の続きを読む