浅野正氏有罪判決に思うこと

 2020年3月16日に、妻を殺害した罪で起訴された浅野正氏に、懲役7年の判決が出された。控訴するかどうかは不明だが、この話題について、これまでまったく書かなかったが、判決が出た以上、書かざるをえないと感じる。
 浅野氏は、大学の同僚で、研究室が私の隣だった。ただ、彼との交流は非常に薄かったといえる。臨床心理学科だったが、私の専門が教育学であり、他の人は全員心理系の人だから、あまり話が合わないということもあったためだ。大学の教員は、自分の用事がない限り、大学に行かない人が多いが、私もその典型だった。
 一度だけ、浅野氏と比較的交流をもったことがあった。それは、私が申請した学部内での、しかも3年間かけるという共同研究に参加してもらったことだった。私が申請したために、私が彼に依頼をして加入してもらった。テーマは「少年法廷の研究」だった。初犯で軽犯罪の場合、少年たちが、被疑者の少年を裁く裁判で、アメリカではダイバージョンプログラムのひとつとして、正規の司法プロセスとして認められている。通常の大人により司法の判決よりずっと重い判決がでるが、前科が残らないというために、少年法廷が存在している場合には、そちらで受ける人が多く、しかも、再犯率が格段に低いという結果がでている、ユニークなアメリカの試みである。研究成果は、学部紀要に、参加者全員が論文を発表するかたちで公表した。近年メディアでも大活躍している前嶋和弘氏は当時同じ学部にいて、テーマの対象がアメリカだから、前嶋氏にも参加してもらい、大変刺激的な研究を実現できた。

“浅野正氏有罪判決に思うこと” の続きを読む

ウクライナ雑感 ウクライナ兵士の士気低下とヨーロッパの支援疲れ?

 昨日あたりから、youtubeやニュースで、ウクライナ軍兵士の士気低下が生じていると指摘されるようになっているが、欧米では、既にずいぶん前から指摘されている。私が読んだのは、Independent 誌だった。セベロドネツクの戦闘で、火力がロシア軍は10倍あり、ウクライナ兵はとうてい勝ち目がないと感じて、士気低下が著しいという指摘だった。そうしたことを日本のメディアは、ごく最近まで隠していたわけだ。
 これはゼレンスキーのミスのひとつだと思う。指摘はたくさんあったが、セベロドネツクは、一端戦略的に放棄して撤退し、欧米からの武器の到着をまって、反転攻勢にでるというのが、適切な判断だったと思う。そうしない理由として、セベロドネツクには1000名ほどの市民が残されているから、置き去りにするわけにはいかないというのが理由だった。しかし、その理由は、本当のものではないと思っている。いくらロシア兵であっても、市民を大虐殺することは、それほどないと考えてよい。キーウ撤退後の虐殺は、例外的な状況で起きたし、そのことが国際的な大批判に晒されたことで、ロシア側も修正するはずである。むしろ、兵力に圧倒的な差があるにもかかわらず、市街戦が行われていることこそ、市民にとっては危険な状況であろう。

“ウクライナ雑感 ウクライナ兵士の士気低下とヨーロッパの支援疲れ?” の続きを読む

政治家の名誉毀損訴訟は敗訴させよう(細田・立花氏の提訴)

 立て続けに、政治家による名誉毀損訴訟が、二件起こされている。ひとつは、細田衆院議長からであり、もうひとつは、NHK党の立花党首からである。
 
 立花孝志「NHK党」党首は、テレビ朝日「報道ステーション」の6月16日放映に出席したが、予め、「テーマを逸脱する発言があった場合はしかるべく対応を取る場合もある」という手紙を受け取っていたが、ウクライナ戦争をテーマとする討論で、「テレビは核兵器に勝る武器です。テレビは国民を洗脳する装置です」という持論を展開したために、大越キャスターが、その発言はテーマにそっていない、と注意した。しかし、立花氏がそのまま発言を続けたために、大越キャスターが、発言を止め、立花氏が画面から消えたという。そして、別室からの参加だった立花氏は、その場を立ち去り、帰宅したが、そのまま帰宅途上の車のなかから、youtubeでライブで持論を述べたという。「テレビ朝日からの圧力」という題の配信だったという。

“政治家の名誉毀損訴訟は敗訴させよう(細田・立花氏の提訴)” の続きを読む

「地球を救え スタートアップが描く未来」 目標・自由・規制2 教育の場合

 規制をどうするか。
 私の専門の教育で考えてみる。教育の世界にも、規制はたくさんある。まず、私立学校を設立するためには、知事(高校まで)や文部科学大臣(大学)の認可を受けなければならない。高校までの一条校の教育には、学習指導要領という「規制」が存在する。
 しかし、国の認可がなくても、学校を設立することができる国もある。アメリカが典型である。
 学校設立に規準や認可が必要であることと、必要ないことと、どちらが教育的に望ましいのだろうか。単純化していえば、多様な教育を認め、信念に基づいて教育活動が行える、つまり規制がないほうが、全体としては、活発な教育活動が行われ、子どもたちは、自分の気にいった教育を受けることができるから、十分な発達を促すことにつながりやすいといえる。しかし、教育の実態は入ってみなければ、十分にはわからないものだから、いざ入学してみたら、酷い教育条件だったということがありうる。規制の緩い専門学校で、留学生への教育をきちんと行わないために、留学生たちがどんどん行方不明になってしまった事例があった。当然その専門学校に対しては、厳しい監督と規制が行われたことだろう。

“「地球を救え スタートアップが描く未来」 目標・自由・規制2 教育の場合” の続きを読む

破綻している最高裁原発事故判決 もしかしたら、原発稼働停止命令なのか

 まだ詳しくはわからないが、テレビで、最高裁が原発事故に対する国の責任を認めなかったという判決が出たことを速報していた。ミヤネやだが、要するに、地震が来ることを予想できたとしたも、対応することは不可能であったという理由だったという。一応その線で理解しておく。
 論点は、
・大きな地震が来ることを予知できたか
・予知できたとして、有効な対策をとることができたか
ということだったそうだ。
 いじめ自殺事件でも、よく論点となるところだ。このいじめで、被害者が自殺することが予見できたか、予見できたとして、自殺意志をもった当人の自殺を思い止まらせることはできたか、というような論点だ。

“破綻している最高裁原発事故判決 もしかしたら、原発稼働停止命令なのか” の続きを読む

先進国最低のジェンダー平等、まず何を変えるか

 先進国における女性の活躍、男女の平等において、日本が最低であることは、長く問題とされてきた。政府も、取り組むという表向きの姿勢をみせているが、実はこのランクは低下傾向にある。いろいろな議論がなされているが、私なりに考えてみたい。
 まず、高齢者となってしまったが、団塊の世代としての、ひとつの実感を確認しておきたい。私が学生の頃は、まだ大学進学率は男女差がけっこうあって、四大にいく女性はまだ少なかった。かつ、私は男子校であり、大学も男子校的なところ(女子学生は1割未満だった)だったためもあってか、リーダーとしての資質や知的能力において、この人はすごいと実感した女性には、あまり遭遇したことがない。そもそも、社会のなかでリーダーとして遇されていない時代だから、当然のことかも知れない。

“先進国最低のジェンダー平等、まず何を変えるか” の続きを読む

ドキュメント「権力と闘うあるロシアTV局の軌跡」ロシアの報道の自由の悲惨さ

 日本は、G7では報道の自由ランクで最下位であり、かなり問題であるし、近年更に低下傾向にある。2022年では71位である。韓国嫌いの日本人が多くなっているが、韓国は、43位で日本よりもずっと報道の自由がある。日本人としては、本当に真剣に考えねばならない。そして、ウクライナに侵略戦争をしかけているロシアは、2022年155位となっている。昨年より低下している。
 そして、このドキュメントは、ウクライナ侵攻の6日後に、ロシア政府によって廃止に追い込まれた独立系テレビ局「ドシチ」の誕生から消滅までの記録である。ロシアにもこんなテレビ局があったのかというほど、徹底した「事実報道」によって際立っており、そして、プーチンに直接にらまれたのも、必然だったともいえる。しかし、逆に、こうした報道を求めているロシア人がいたことも、また否定できないのである。
 
 5月中旬にNHKBSで放映されたイギリス制作のドキュメント番組で、「メディアを支配するものが思考を支配する」という言葉から始まる。

“ドキュメント「権力と闘うあるロシアTV局の軌跡」ロシアの報道の自由の悲惨さ” の続きを読む

ウクライナ雑感 バイデンは梯子を外すのか

 バイデンが、記者会見で、プーチンによるウクライナ侵攻を早くから指摘していたにもかかわらず、ウクライナのゼレンスキー大統領は聞く耳をもたなかったという趣旨の発言をしたことが報道されている。
Joe Biden says Volodymyr Zelenskyy ‘didn’t want to hear’ US warnings of Russia’s Ukraine invasion
 戦争が4カ月になるなかで、ウクライナを援助する必要を語っているなかでの発言であった。
 ゼレンスキーは、リーダーシップを発揮しているが、侵攻への準備には問題が残されていた。侵攻開始前の数週間、アメリカの忠告に対して、ゼレンスキーは怒りを表わしていた。そして、戦争の掛け声がウクライナの脆弱な経済を乱すことを気にしていた。戦争の100日間ゼレンスキーは、ロシアを打ち負かす信念を保持している。ウクライナは重火器を提供してほしいと訴えている。

“ウクライナ雑感 バイデンは梯子を外すのか” の続きを読む

ウクライナ雑感 ロシア兵は何故あれほど残虐行為ができるのか

 ウクライナ情勢は混沌としてきた。日本の報道の多くが楽観論を振りまいているが、割り引いて受け取るべきだ。もちろん楽観的見方が今後実現していけばよいが、あまり楽観はできない。
 
 ロシアのウクライナでの蛮行を見ると、何故こんなんに酷いことをするのか、あるいはできるのか、ということに、日本人の多くは疑問に思うだろう。ここをロシアの領土にしようと目論んでいると思われる地域でも、遠慮会釈のない砲弾を浴びせて、廃墟にしてしまう。現在激戦が行われていると報道されているセベロドネツクの写真をみると、本当にほとんどすべての建物が防弾を浴びている。ここを領土化して再建することを考えているのであれば、こんなに破壊ができないはずだ、というのは、日本人的な甘さなのだろうか。いろいろと考えていると、いくつかのことが思いつく。

“ウクライナ雑感 ロシア兵は何故あれほど残虐行為ができるのか” の続きを読む

メルケル引退後初のインタビュー 自身を弁護

 朝日デジタルにメルケルが、退任後はじめてインタビューに応じたという記事があったが、あまりに簡略だったので、もう少し詳しい記事を探した。「Angela Merkel opens up on Ukraine, Putin and her legacy」https://www.dw.com/en/angela-merkel-opens-up-on-ukraine-putin-and-her-legacy/a-62052345
 朝日デジタルだと、メルケルは、ロシアのウクライナ侵攻を非難したが、2014年のクリミヤ併合について、もっと厳しい対応がありえたことを認めたこと、ソ連崩壊後も戦争を防ぐための安全保障機構をつくることができなかったが、自分は間違っていなかったから謝る必要はない、ということが簡潔に紹介されているだけだ。
 英文の記事には、「退任後最初のインタビューで、対ロシア政策を弁護し、現在のウクライナの状況に関して、自分が責任を感じることはない」と述べたというリードが付けられている。

“メルケル引退後初のインタビュー 自身を弁護” の続きを読む