教育学を考える30 教育の定型化2 名字+さんの校則

 コンピューターにおける教育を続きとしていたが、それはいまいろいろと整理している段階なので、今話題の「苗字にさんづけ」校則について考えたい。
 youtubeでも話題になっているようだし、かなりの批判がだされている。私も、この関連のニュースをみて、実際にどうなっているのか、現場の教師たちに聞いてみた。私のゼミの卒業生たちだが、やはり、かなり普及している校則だという。ある教師は、自分の赴任した小学校で、この校則が存在しなかったところはない、と言っていた。しかし、逆に、この校則に共感している人もいなかった。誰しもおかしいと思いつつ、校則としては表立って反対していないのかも知れない。しかし、厳格に運用しているかどうかは、また別問題だ。つまり、授業中の発言のなかでは、誰かの意見に対して反応するときに、「名字+さん」で呼ぶように指導するが、休み時間などは自由という運用もありうる。休み時間まで、干渉する必要はないというのもありうるからだ。

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非常勤講師が上智大学を訴えた 大学と講師のどちらも是と非がある

 上智大学が訴えられて、話題になっている。「上智大学を「賃金不払い」で刑事告訴、労基署からの「是正勧告」に応じず 「そんな前例聞いたことない」」の記事だが、コメントには正反対の見解が並んでいる。https://news.yahoo.co.jp/articles/4a1b16bc23d6c69450d92f20f9262401cac653c1
 60代の非常勤講師に、賃金を支払われていないとして、中央労働規準監督署が、是正勧告をだしたが、大学は勧告書を受け取らず、当然是正勧告に応じないので、講師が加盟する「首都圏大学非常勤講師組合」が、中央規準監督署への告訴をしたということだ。
 では、未払いの賃金とは何か。記事によれば、
・2019年~2021年に、会議への参加、学科コース全体で他の講師も使うオンライン教材の作成で、205時間の授業外労働があった。
・大学は会議への参加費は払ったが、教材作成は払わなかった。
 大学によって、異なるかも知れないが、私自身が経験した非常勤講師や、私の所属していた大学での非常勤に対する経験から考えてみる。この問題は、単純にはいえない面がある。そして、理系は実験等もはいるし、この事例は語学教師なので、文系を前提に考えてみることにする。

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熊本丸刈り訴訟判決 繰りかえす歴史の茶番か

 5月30日に、熊本地裁で、丸刈り訴訟ともいうべき裁判の判決があった。
 
「部活で丸刈り強制され不登校に 元県立校男子生徒の1円損害賠償請求を棄却」と題する読売の記事は以下の通りである。
 
 「熊本県立 済々黌(せいせいこう) 高(熊本市)のソフトテニスの部活動で丸刈りを強制されるなどしてうつ状態になり、退学を余儀なくされたとして、元男子生徒が県に1円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、熊本地裁は30日、原告側の訴えを退けた。
 同校は明治時代からの伝統校で、原告側は「バンカラな校風で知られ、『シメ』と呼ばれる強制行為で不登校になった」と主張していた。」

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出生数80万人以下の予想 教育には大きな影響

 まだ予想ではあるが、2022年の日本の出生数の予測値がでた。80万を超えているけれども、予測値より実数はたいへい少ないので、80万人を下回る可能性が高いと報道されていた。80万というのは驚きだ。
 私は団塊の世代真っ只中の生まれで、所謂団塊の世代の出生数は平均で278万人ほどになる。80万というと、30%未満ということになる。それだけの少人数で高齢者を支えるのは大変ということは、多少割り引く必要がある。現在でも団塊の世代は人口比で大きな割合を占めているが、今年生まれたひとたちが20歳になるときには、団塊の世代は90歳代の半ばに達しており、かなり死亡して、少なくなっているはずだからだ。それにしても、この少子化は、様々な面で大きな影響を与えるに違いない。

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教育学を考える 29 授業の定型化1

 先日、臨床心理学の専門家と意見交換する機会があって、心理臨床分野でも、カウカンセリングの定型化を進めるような動きがあると知った。私は、精神の問題というのは、千差万別だから、カウンセリングの基礎として、定型的な方法を学ぶことは有効だとしても、現場では柔軟さが不可欠と思っていたのだが、どうも、とにかく、統合的、定型的な手法を絶対視するひとたちも出てきているらしい。臨床心理は、私の専門ではないので、触れないことにするが、教育の世界では定型的な教え方を求めることは、昔からある。そして、定型的な教え方を可能にする技術も進歩している。そこで、授業を忠臣に定型化に関して考えてみたい。
 
 何故、定型的な教え方を、教わる側から求めるのか。それは、教師の質に対する不信感があるといえる。優れた教師に教わればいいけれども、教え方が下手だったり、教える内容そのものをあまり理解していない教師がいる。そういう「はずれ」にあたってしまったときには、がまんするしかない。今はどうかわからないが、私が子どものときにも、新学期の担任発表のあとは、あたりとか、外れとか、いいあう人たちがいた。

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すっかり変質した筑付?

 筑波大学付属高校(筑付)で、SNSが禁止されたと、ネット上で書かれている。悠仁親王関連の情報が、SNSを通じて拡散しないようにということらしい。実際に、それでもあえてツイッターに書かれた文章が、削除されたという。現在ではネット上での情報だけのようなので、真偽のほどはわからないとしても、その内週刊誌が取り上げるようになるに違いない。本当だとしたら、そこまでやるかと驚かざるをえない。また、筑付生や親がだまっているとも思えない。理由は、当然、悠仁親王に対する否定的な情報が、国民に拡散しないようにと、紀子妃が圧力をかけたということになっている。親王に関しては、作文コンクールの件は、弁護のしようがないことだろう。当人だけではなく、宮内庁、両親、そしてコンクール主催者すべてが、社会的な規範、道徳を蹂躙したことを意味している。また、予想されたことではあるが、授業内容がまったく理解できなくて、頭を机に伏せた姿勢をとっていた親王に、教師が注意をすると、汚い言葉で教師にくってかかったという情報も出ている。

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東北大学の女性限定教授募集について

 都立高校の男女別定員問題とは、大分性質が異なるが、東北大学工学部で、享受を女性限定で募集する例が話題になった。
 募集要綱は、東北大学のホームページで見ることができる。
 私は、文系の教授だったので、理系の募集形態はよくわからないが、募集要項を見る限り、厳格に決められた領域での募集ではなく、6つのグループに属する13の専攻のなかから、配属を希望する専攻を選択することになっている。つまり、13の領域にかかわって、5名の教授を募集する、そして、それは女性限定であるということだ。
 私が経験してきた大学教師の募集は、すべて、特定の領域が指定されて、募集は1名である。もちろん、別の領域の募集も同時に行われることがあるから、その場合は、その数だけの募集になるが、領域が広範囲に指定されて、そのなかから自分にあう領域を選択できるという募集様式は、私自身ははじめて目にした。理系ではそういうことがけっこうあるのかどうかわからない。だからこそ、女性限定ということを打ち出せるのだろうと思った。特定の領域を指定して、募集1名ということになると、さすがに、女性に限るというのは、コンセンサスを得にくいのではないだろうか。

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読書ノート「発達障害は学校からうまれる」井艸 恵美 東洋経済オンライン

 読書ノートというのは多少おかしいかも知れないが、東洋経済オンラインに「発達障害は学校から生まれる」という連載のレポート記事がある。まだ継続中だが、学校現場のこまっている面、また筆者によれば、弊害を生んでいる側面について、深刻な報告がなされている。
 現在第6回まで進んでいるが、最初のほうは、もっぱら発達障害児に対する投薬治療の弊害を、患者たちの取材に基づいて警告を発している。詳細は、記事を読んでもらうことにして、自分なりに考察してみたい。
 ここで書かれていることを整理すると
・子どもに対して、安易に向精神薬を使用するのは問題があり、さまざまな弊害が生じている。
・近年は、こうした子どもの発達障害に対する薬物使用が広まっており、教師の側から、親に勧める事例も多くなっている。
・こうした状況に、警告を発する医師や教師もいる。
・子どもの発達障害は増加しており、その原因は環境によるところが多い。
・発達障害に関する文科省の大がかりな調査があり、通級学級から、特別支援学級、特別支援学校への、事実上の誘導がなされている。
 以上のようなことだと解釈できる。

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教職員の懲戒 横浜の事例から2

 新聞で報道された事例2は、以下の小学校教諭である。
 まず、教育委員会の公表を見てみる。
 
教職員の懲戒処分について
所 属 小学校
当 該 者 1 教諭(男性 40代)
2 校長(男性・50代)
処 分 日 令和4年3月25日(金)
処 分 内 容 1 懲戒免職(退職手当等全額不支給)
2 減給 10 分の1 3月
事 案 概 要
当該教諭は、令和2年度に担任していた学級において、配付物を配らない、
給食を極めて少量しか盛り付けないなど、特定の複数の児童に対する差別的取
扱を行った。

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教職員の処分 横浜の事例から1

 横浜市で、小学校教師が、特定の子どもに、配布物を渡さない、給食を減らす、試験を受けさせないなどを行ったので、懲戒免職にしたという記事があり、横浜市教育委員会のホームページをみてみた。他にもいろいろな処分事由があったので、ふたつを選んで、教職員の懲戒処分について考えてみたい。
 
 まずは、ある校長に対する「戒告」処分である。
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被 処 分 者 校長(60代・男性)
概 要
当該校長は、自身の印を副校長に預けて管理させ、事務職員が発注伺に押印すること
を黙認していたほか、発注伺を確認していなかった。そのため、事務職員が口頭発注等
を行ったことに気づくことができなかった。
また、当該校長は事務職員に自身のID及びパスワードを教え、決裁事務の一部につ
いて代行させていた。

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