指揮者の晩年 ブロムシュテット

 最後まで現役で、幸福な指揮者生活を送った人として、絶対に欠かせないのがヘルベルト・ブロムシュテットだ。もっとも、まだ現役ばりばりだから、「最後まで」というのは、どうなるかわからないが、現在の活躍ぶりをみると、そのように予想できる。現在94歳だが、活発に指揮活動をしている。といっても、私はほとんど彼のCDはもっておらず、かなり以前に買ったドレスデンでのベートーヴェン全集と、レオノーレの全曲くらいだ。あまりフィデリオは好きではないということで、後者は聴いてもいない。ベートーヴェンの全集はすばらしい。しかし、以前からの評価でも顕著だが、多くの人は、このベートーヴェン全集をすばらしいと誉めるのだが、すばらしいのはオーケストラであって、指揮者をほめるのはまた少なかったような気がするし、私の感想もそうだった。

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「仕事のできない東大生」という記事

 『週刊現代」の記事「東大を卒業しても『仕事がまったくできない人」の意外すぎる共通点」という記事がある。かなりピントが外れているという意味でも、興味深い文章だ。
 記事の要点を整理しておく。
1 東大に合格すれば明るい未来が待っていると、受験生たちは信じているが、そんな時代は終わり、社会環境は激変している。
2 優秀な東大生の能力は青天井だが、それは1割だ。
3 企業就職した東大生は、MARCHに負けることも珍しくない。大学まで勉学一筋だった東大生に対して、イベント系サークルで楽しんでいたひとたちの口と体力に負けてしまう。
4 顧客に上から目線しかできず、失敗する。
5 昔は官僚や弁護士など、そういう東大生も活躍できたが、弁護士は供給過剰、官僚は激務の上権限はない。キャリア採用の東大卒は14%にすぎない。
6 企業でも、能力の高い東大卒は使い勝手のよい道具で、型落ちになれば棄てられる。
 細かい部分はさておき、私が一番興味をもったのは、企業における仕事のさせ方が、このようなものだとしたら、日本は、いかにも能力主義ではなく、能力を無視して社員をこき使う社会だということだ。ずっと、日本の教育は、過度な能力主義によって荒廃させられているという、教育学の認識に、ずっと疑問をもって、このブログでも考えているわけだが、この記事は、その点でもヒントをあたえてくれる。

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石原慎太郎都知事を振り返る

 石原慎太郎が亡くなった。直ぐに何人かの批判的なひとが、強烈な批判的文章を書いたので、礼儀を知らないのかというような非難が巻き起こるなどの、さすがに話題の多いひとだと思ったものだ。私が見た限りでは、最も早く石原非難をしたのは、一月万冊だったが、youtubeはあまり追いかけていないのか、たいしたことではないと思っているのか、あまり非難がないようだ。逆に、共産党の志位委員長が、「今日は控える」と言ったことが、評価されていて微笑ましかった。
 さて、日時も経過したので、そろそろ批判をしてもいいかと思う。
 まずは、私でも功績と認める点を書いておこう。

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流山市の人口急増による学校移転問題

 読売新聞が、流山市における中学移転に関する記事が掲載されて、ネット上で話題になっている。
 記事の趣旨は、人口が急増している流山市は、保育所などの政策ばかりが話題になってきたが、実は、小中学校問題は、深刻な状況になっている。この記事は、急増で教室不足になった南流山中学を、東京に移転して空家になっている東洋学園大学の敷地を活用するが、あまった部分を暁星国際中学を誘致する計画が進行しており、それに対して、住民が格差が生じるとして反対しているという記事だ。そして、ネットでのコメントは、住民のわがままを批判する声で溢れている。私立中学と市立中学が同居するのは、格差問題が起きて反対するという見解に対して、格差が実際にあるのは当たり前だし、市立と私立が隣あわせになっていることなど、他の地域ではいくらでもあるいうわけだ。その批判はさておき、記事自体が、実に不十分なもので、これでは誤解されても仕方ないように思われる。

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動画ライブ配信の女性殺害 投げ銭の弊害?

 埼玉県越谷市で、インターネットのライブ動画配信サービスをしていた女性が、視聴者だったと思われる男性に殺害される事件が起きた。越谷市は、私が勤めていた大学があるところなので、少々驚いたが、もともと犯罪が多い地域である。私が勤めていたころ、とくに前半期は、特に女子学生の部屋が空き巣に入られることが、けっこう頻発していた。その理由は、かなり明確で、とにかく街灯が少なく、夜になると住宅地は非常に暗くなるのだ。その後、街灯設置運動などの成果で、多少改善されたが、もっと改善の余地がある。
 もっとも、今回の事件は昼間であるし、特定人物を狙ったものなので、事情は異なるのだが。
 報道を読むと、以下のことがわかる。
・被害者の女性は、ライブ動画配信をしており、どうやら投げ銭システムを利用して、収入をえていたようだ。
・加害者の男性は、8歳も年下だが、彼女のライブ配信の視聴者で、当人のいうことには、一度会ったことがある。
・加害者は、女性から「配信者と視聴者の関係に戻ろう」と言われ、他の男のものになるなら、殺してしまおうと思ったというのが、動機らしい。
・加害者は自首をしている。

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大学のオンライン授業拡大を文科省が容認の方向

 毎日新聞に次のような記事がでた。
「大学のオンライン授業「60単位上限」規制緩和へ 留学生獲得後押し」(2022.2.3)
 現在、上限が60単位となっているオンライン授業を、より緩和するということだ。私は、インターネットは大学のあり方そのものを変えることになると予想している。私は、既に定年退職してしまったが、この動向に関与できないのは、少々残念である。映像付きのオンライン授業はできなかったが、インターネットを可能な限り活用して、授業だけではなく、前後に様々な実践をしていた。
 コロナによって、オンライン授業が普通になったことによって、これまでの大学の制約を大きく取り払う可能性がでてきた。もちろん、可能性であって、実施するかどうかは大学自体が決めることだ。それは、積極的に活用する大学と、消極的な大学の格差が開いていくということでもある。

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佐渡金山の世界遺産推薦 自民党内の政争は国民の迷惑

 佐渡金山の世界遺産登録への推薦をめぐって、日韓をまたいだ政争になっているようだ。しかし、日本政府が、ユネスコに推薦をするという行為自体が、あまり気持ちのいいものではないし、余計な韓国との軋轢を生むことになり、ますます不快な状況になっていると思われる。
 報道によれば、まず、最初に推薦をするための候補にいれる決定をしたのは、民主党の菅直人政権であるという。そして、そのときには、現在韓国との争点になるような、強制労働の有無というようなものはなかった。戦時中の強制労働については、朝鮮人だけではなく、日本人に対しても行われたのだから、それを否定するような前提での候補ではなく、歴史を見据えた形でのものだったとされる。それなら、事実に則しているし、韓国も反対しないわけだ。

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菅氏と維新の争い 不祥事と言論を一緒にするな

 菅直人氏のツイッターに維新が噛みついている問題が、なんともみっともない。ことの始まりは、菅直人氏が、以下のような文章をツイートしたことに始まる。
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菅直人 衆議院議員(府中・小金井・武蔵野) 立憲民主党
@NaotoKan
1月21日
橋下氏をはじめ弁舌は極めて歯切れが良く、直接話を聞くと非常に魅力的。しかし「維新」という政党が新自由主義的政党なのか、それとも福祉国家的政党なのか、基本的政治スタンスは曖昧。主張は別として弁舌の巧みさでは第一次大戦後の混乱するドイツで政権を取った当時のヒットラーを思い起こす。
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 これに対して、維新がかみついた。ちなみに、言われた橋下氏自身は、「ほめ言葉と受け取っておく」という皮肉めいた返しをしているだけで、抗議する意志は示していない。維新は、まず立憲民主党に批判の矛先を向けたが、管議員の個人的見解で、党としては関与しないと言われたので、維新の馬場代表(議会での代表)が菅氏に抗議にでかけたが、菅氏から「橋下氏と維新の関係」を問われ、現在は関係ないと馬場氏が答え、それなら、なぜ馬場氏が抗議にくるのかと、いなされてしまった。

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教員不足 文科省に大きな責任がある

 読売新聞(2022.2.1)に「教員不足、ハローワークに求人も…授業できない事態に現場悲鳴「毎日電話で頭下げてる」」という記事が掲載された。何を今更という感じだ。私は、既に20年以上も前からこういう事態が来ると、あちこちで書いていた。最も大きな要因は、文科省が、教師を尊重していない点である。
 35人学級の実施、特別支援学級の増設、高齢者の大量定年退職、産休等々、様々な原因が書かれている。そして、教育委員会が、教師確保のために、電話をかけまくっている状況が報道されている。https://news.yahoo.co.jp/articles/609bca3cead773cd35ae5cb9c3bf9998d9a95faf
 似たような記事は他の新聞にもある。
 しかし、単に不足しているだけではなく、より深刻なのは、教師志望者が減少していることである。「コロナ禍で大学の説明会を十分に行えず、教師のやりがいをアピールできない」という嘆きを紹介しているが、事実は、その逆だろう。教師のあまりの過酷労働が、誰にも知られるようになり、「やりがい」などあるのか、という疑問が学生のなかに浸透していることだろう。いくら、やりがいをアピールする場があっても、響かないのではないだろうか。だから、いくらアピールしても、教師の労働条件が根本的に改善されないと、志望者が増えることはないに違いない。

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