日本は本当に能力主義社会か10 岩田龍子の議論から1

 岩田氏は、日本を能力主義社会と規定しているわけではない。学歴主義という規定での能力の問題を扱っている。そして、そこには、大いに参考にすべき、そして検討すべき論点があるので、2回に渡って考察したい。

 岩田氏は、「実力」と「能力」を区分する。それは一般的な区分法とはいえないが、とりあえず岩田氏の意味で理解しておこう。「実力」とは、特定の分野のことを遂行できることで、分野が特定されていることが特質である。それに対して「能力」とは、潜在的な可能性をもっていることで、更に、特定の領域における可能性と、領域にとらわれない一般的な潜在的能力とにわかれる。 “日本は本当に能力主義社会か10 岩田龍子の議論から1” の続きを読む

読書ノート『満洲暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦』安富歩 角川新書

 今や一月万冊の常連として有名な東大教授の安富氏の本来の研究分野である満洲問題を、一般向けに講演した内容をもとにした著書である。満洲の専門家であるとともに、「立場主義」を批判する著者が、このふたつを結びつけて、実は日本人にあまり知られていない満洲事変から満洲国設立、そして崩壊をわかりやすく説明している。
 詳しい紹介は省き、感想のみ書いておきたい。
 満洲国は、関東軍の暴走として語られるが、安富氏の問題意識は、なぜ暴走が起きるのかという点にある。それは、ポジティブ・フィードバックが想像もできなかったような爆発的な結果をもたらすという。原因が結果を生み、また結果が原因に作用して拡大していく。これをフィードバックと呼ぶが、これが連関してしまうのがポジティブ・フィードバックだ。満洲での例では、鉄道の発達が馬車用部材の流通を効率化、すると馬車が発達、馬車を利用して、ヒトとモノが鉄道に集中し、更に鉄道が発達。そして、その循環によって、爆発的に鉄道、馬車、モノ、ヒトの移動が発達するというわけだ。 “読書ノート『満洲暴走 隠された構造 大豆・満鉄・総力戦』安富歩 角川新書” の続きを読む

読書ノート『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』鴻上尚史・佐藤直樹 講談社

 同調圧力は教育学的にも、極めて重要な概念であり、「克服の対象」と考えられている。しかし、学校現場では、同調圧力を積極的に利用して、生活指導をしているところが多い。この本は、日本社会の息苦しさの原因を、同調圧力に求め、同調圧力を生んでいるシステムを「世間」と規定して、世間と社会の違いを日本と外国(欧米)の比較を通して分析している。対談なので、かなりラフな議論をしているところが少なくないのが不満だが、興味をもって読んだ。しかし、読み終えて、かなりの不満が残った。私は「愛国者」ではなく、欧米の教育研究者だから、こうした比較的手法を自分で行うが、このような「日本」は問題だらけ、「欧米」はよりレベルが高い、式の議論には、どうもついていけないというか、おかしくないかと感じてしまう。そして、この手の議論は、たいてい、欧米についての大きな誤解が散見されるのだ。 “読書ノート『同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか』鴻上尚史・佐藤直樹 講談社” の続きを読む

イベルメクチンの議論について感じる疑問

 しばらく旅行に出ていたので、通常の話題について書けなかったが、昨日ネットをみていると、産経新聞が、「イベルメクチン個人輸入に警鐘「科学的根拠ない」
2021/10/17 と題する記事を掲載していた。イベルメクチンは、新型コロナ治療薬として、世界的な論争の対象になっている。私自身は、専門家ではないので、正確なところはわからない。しかし、この議論について考えるところは多々ある。
 専門家の間でも効果があるという人と、ないという人がいる。そして、議論は、「科学的」な検証を重視する者と、実際に使って効果があった、なかったという人がいる。立場も様々だ。 “イベルメクチンの議論について感じる疑問” の続きを読む

旧中山道旅行記6

 今日は帰宅する日で、夜遅くに帰った。早速パソコンをセットしたが、対して書くことはないのだが、最後の報告として。
 まず、宿を出て、せっかくだから琵琶湖を一周したことにしようと、今回は北回りに車を走らせた。これまでは、米原あたりから、琵琶湖の東側を通って、坂本あたりまでいっていたが、坂本に宿泊していたので、西側を北回りにすると、一周したことになる。それで改めて感じたのは、琵琶湖は大きいという当たり前のことだ。諏訪湖を通ってきたので、特に強く感じた。
 昨日、滋賀県の人と偶然少し話したのだが、滋賀のいいところは自然災害がないことだという。地震もないし、台風も来ないと。火山も廻りにない。大雨は降るだろうが、琵琶湖が吸収してくれるのだろう。確かに、滋賀は暮らしやすい土地なのに違いない。だから、商人を多く輩出したのかも知れない。
 途中長浜城があったので、見ようと車を降りたのだが、来年春まで休館だったために、諦めて、最後に彦根城を見るために、彦根に向かった。
 残念ながら、時間があまりなかったので、資料館のみ見ることにしたが、予想に反して見応えがあった。

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旧中山道旅行記5

 今日は、まず滞在先のすぐ近くにある日吉大社にでかけた。滋賀県大津市坂本にある日吉大社は、全国の日吉、日枝、山王神社の総本庁であり、かなり大きな神社で、山の反対側には比叡山延暦寺がある。数年前に、延暦寺を訪れ、坂本のほうに降りてきたのだが、今度は坂本に宿をとった。
 非常に大きな神社で、たくさんの建物があった。

 日吉神社は、猿を神としており、実際に日本猿の雄雌一組を小さな檻にいれて飼っていた。「時々乱暴になって水を浴びせるから注意」という看板がたっていた。あまり神のような雰囲気をもった猿ではなかったようだ。こんな小さな檻に閉じこめられているのだから、ストレスもたまるに違いない。残念ながら、暗い檻だったので、写真は撮れなかった。 “旧中山道旅行記5” の続きを読む

旧中仙道旅行記4

 今週は台風のせいで、雨が多いと事前の予報では言われていたのだが、よく晴れた日が続いて、旅行にはもってこいの天気が続いている。今日も熱いくらいだった。一昨日と昨日は、南木曽の山奥のホテルに宿泊したのだが、一昨日は、真っ暗になってついた。やっと予約ができた人気ホテルだということだったのだが、直前にキャンセルが続いて、私たちが到着した2組目の客で、他は全部キャンセルされたということだった。その日は、食事を頼んでいなかったので、食事で利益をだすホテルとしては、本当にこまったことだろう。復元された宿場町での観光も、コロナの影響で影響をうけたということだったが、ホテルはもっと大きいことが、実感として理解できた。GOTOが切実にホテル業界にはやってほしいことなのだと感じたのであるが、それでも、観光業に対する援助が、GOTOなのかという点については、まだ納得がいかない。

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旧中仙道旅行記3

 今日は、いよいよ本来の目的である、旧中仙道にある史跡巡りを実施することができた。というより、今回の旅行の目的は、岐阜県にある馬籠宿と、長野県の妻籠宿を見ることにあった。島崎藤村の「夜明け前」の舞台となっている宿場であり、当時の面影がどの程度かはわからないが、できるだけ保存しようと努力しているふたつの旧宿場街である。しかし、実際にいってみて、となりの宿場であり、互いに復元という点において影響しあっている両宿場でも、ずいぶん雰囲気の違いを感じた。そして、それが、人出の違いにも現れていたように思う。
 とった宿の関係で、まず妻籠宿にいった。最初間違って車で乗り入れてしまい、まずは車で妻籠宿を通りすぎてしまった。完全に通行禁止になっているわけではないようだが、車の乗り入れはほとんどない。私たちが歩いている間に、他の車は通らなかった。しかし、通りにある家は、もちろん車をもっているわけで、この通りを避けることはできない。再度駐車場を探して、そこから、いよいよ歩いて妻籠宿の通りを端から端まで歩いてみた。

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旧中仙道旅行2

 今日は、ホテルで朝食を食べてから、まず山下清美術館を訪れた。貼り絵の天才山下清の作品が多数展示されているので、平日の午前というのに、けっこう観覧者が多かった。
 私は、あまり美術に興味がないので、詳しいことは知らないのだが、とにかく、山下は放浪で有名だ。ある程度名前が知られるようになってから放浪癖が始まったので、食べることにはこまらなかったという。それでも、最初は、食べ物を恵んでもらって、駅や野原に野宿する形だったのだが、そのうち、作品を書いてあげるなどして、かなり謝礼をもらったり、あるいは、宿泊場を提供してくれる人がでてきたそうだ。それで、山下は、芸術家として、将来的にやっていけるという自信がついたという。

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旧中仙道旅行1

 以前から、国道を制覇することを、趣味としてやっていた。あまり時間もないので、たまにしか行けないが、これまで、1号、2号、4号、6号、7号、8号、9号、20号を制覇した。もちろん、そのほかにも、125号とかたくさんの関東近辺の国道は制覇したが、江戸時代からの基幹的な道路に添った国道として、中仙道が残っていた。ところが、他の江戸時代の基幹道路と国道の関係は、ほとんど一致しているが、中仙道だけは、ひとつの国道になっていない。17号から始まって、順番に21号までの部分がそれにあたっている。そこで、中仙道を国道にしている道をたどってみようという計画を立てた。
 ところが、最初から、計画が頓挫し、2日目からになった。そして、当初の国道17,18号は帰りに通ろうということで、最初に諏訪にやってきた。下諏訪大社と高島城をみた。

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