党首公選を訴えた松竹氏が除名? 訴訟に訴えたらどうなるか考えてみる3

 除名理由の後半を考察する。残っているのは以下の通り。
ウ 安保条約の廃棄、自衛隊の段階的解消など、綱領に基づく政策を「ご都合主義」と攻撃している。
エ 我が党を個人独裁的運営とする鈴木元氏の本の出版を急ぐように働きかけた。これは党攻撃のための分派活動である。
オ 党内で自身の主張を述べたことはないことを認めている。
 
ウ 安保条約と自衛隊の位置づけは、誰もが感じているように、日本共産党にとっての最も困難な政策領域である。日本国憲法が審議されているときに、共産党は反対の立場であったことは、よく知られていると思う。その理由は、9条にあった。軍隊をもたない国家などありえないという、ごく常識的な理由からだった。天皇制についても反対理由の大きな部分を占めていたが、その両方に関して、その後大きな転換があった。これまた周知のように、共産党は最も強固な護憲政党であって、9条を絶対的に正しいとし、自衛隊の意見説を原則的には変えていない。その帰結として日米安保条約は廃止としている。

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党首公選を訴えた松竹氏が除名? 訴訟に訴えたらどうなるか考えてみる2

 あくまでも仮定の話として、松竹氏が処分取り消し訴訟を起こしたら、どうなるかを考えてみよう。
 まず、処分理由を整理しておく。以下に処分文書の全文が掲載されている。
 
ア 本来職場支部で処分が検討されるが、松竹氏が全国メディアや記者会見などで公然と党攻撃をしている「特別な事情」に鑑み、職場支部の同意のもと、南地区委員会常任委員会として決定した。
イ 松竹氏は、「党内に存在する異論を可視化するようになっていない」「異論を許さない政党だとみなされる」党首公選制は派閥・分派をつくらないという民主集中制と相いれないが、事実を歪めて党を攻撃している。

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党首公選を訴えた松竹氏が除名? 訴訟に訴えたらどうなるか考えてみる1

 毎日新聞によると、『シン・日本共産党宣言』を出版し、記者会見を行なって、党首公選を主張した松竹伸幸氏に対して、除名処分となる見通しであるという。そうした活動が、「分派活動である」という理由であるとされる。
「共産が党首公選制主張の党員を除名へ 規約違反の「分派」と判断」(毎日新聞2023.2.5)
 
 『シン・日本共産党宣言』については、読書ノートとして、ブログに書いたが、松竹氏の主張は、基本的に共感できるという立場で書いた。ただし、この本の出版と記者会見に対し、反論としただされた藤田健赤旗編集局次長の論説を読む限り、松竹氏は除名されるのではないかと予想はしていた。もっとも、毎日新聞によれば、まだ正式な決定ではなく、中間段階のようだが、これが、上部機関によって覆される可能性は、低いように思われる。

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同性婚否定で首相補佐官が更迭されたが 岸田首相と同じ考えではないのか

 荒井勝喜首相秘書官が、かなり迅速に、更迭された。昨年更迭された大臣たちと比較すると、そのスピードは驚くほどだった。
 そもそもの起りは、国会の答弁で、岸田首相が、選択的別姓制度と同性婚を認める意思はないかと問われて、選択的別姓については、世論が分かれているから、更なる議論が必要だと述べ、同性婚については、家族の在り方について社会を変えてしまうと、ともに否定的な見解を述べたことである。これが1月26日。「岸田首相「慎重な検討を要する」 ”夫婦別姓”や“同性婚”に… 代表質問2日目」(日テレニュース)
 この答弁に対して、2月3日に、記者10名ほどが、荒井秘書官に、首相答弁について質問をしたところ、オフレコで述べた見解を、毎日新聞が報道した。
 荒井秘書官の発言の詳細はわからないが、次のようなことを述べたとされる。

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五十嵐顕考察3 教育費2 個別分散的教育費

 五十嵐氏のそれぞれの概念の中身を吟味しよう。
 まず個別分散的教育費だ。これは、家庭教師などの支払いが典型であるが、現代でも「授業料」として生きているとする。しかし、授業料は、確かに、個々人が支払うものだが、より背景的なことを考慮すれば、本質的に異なる授業料の種類がある。
ア 家庭教師への支払い
イ 塾への支払い
ウ 義務教育公立学校以外への授業料としての支払い
エ すべての学校において求められる(個別には求められない場合もある)教材費、制服、行事の費用(修学旅行、宿泊行事等)給食費等
オ 習い事の講師への謝礼
 アイオは、確かに個別分散的教育費というイメージと合致するが、ウとエは、ほぼ強制的に徴収されるものであって、サービスや物品にかかる税と似た者といってもよい。しかも、それは強制的に買わされるものだから、望まなければサービスを受けることもない塾への支払いなどとは、本質的に異なる。

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五十嵐顕考察2 教育費1

 五十嵐顕氏は、教育費の講義を担当していたため、教育費とは何かを突き詰めて考えていた。そして、教育費が貨幣の形をとることに、つよい拘りをもって、そこから出発していたように思われる。
 五十嵐論による教育費の分類は、
・個別分散的
・社会的に組織された教育費
・国家によって組織された教育費
という三つの組織形態によるものである。形としてはすっきりしているが、私は、この分類は、教育費の「教育学的分析」にはあまり有効ではないように、ずっと思ってきた。確かに、そうした分類は、外見的に分かりやすいし、統計的にも処理しやすいに違いない。しかし、形式と量の相違を示すだけで、それが教育にとって、どのような意味をもつかは、明確に示すことができないのではないかと思うのである。

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ノート『天災から日本史を読みなおす-先人に学ぶ防災』磯田道史(中公新書)

 イタリアの歴史哲学者クローチェの有名な言葉に「あらゆる歴史は現代史である」というのがある。本書は、歴史書でありながら、現代史、あるいは未来史ですらあると感じさせる書物である。著者である磯田氏自身が、将来起きるかも知れない自然災害に、どう対処したらよいのか、それを今から準備するために必要なことを、歴史から学ぶという視点を貫いている。しかも、歴史的文書を丁寧に調査し、吟味しながら、当時の災害の起こり方、人々の対処のよかったこと、まずかったことを整理している。そして、ある災害には、こうしたことが必要だという教訓を、説得的に引き出している。最近、これほど役に立った感じを受けた本はなかった。

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高齢者は集団自決を? 成田祐輔氏への疑問

 最近話題の成田祐輔氏が、あちこちで「高齢者の集団自決」が必要だという主張をしているということを、その批判文で知った。特別に話題になったのは今年かららしいが、以前からの主張のようだ。最初に読んだのは、内田樹「『高齢者の集団自決』の提言 日本の国運の衰退の解決にはならない」〈AERA〉
であり、驚いて他の文章も探し、「成田悠輔氏「高齢者は集団自決」発言を“例え話”と笑っていられない理由」窪田順生を読んだ。
 いずれも、ヒトラーとユダヤ人撲滅などとひっかけて批判したものだ。
 では、本人はどう言っているのかと探したところ、abemaTVで語っていることが多いらしいが、youtubeにも出ているので、次のものをみた。
 
 私は、成田氏を著書と羽鳥モーニングショーにでているときしか知らないので、こうした過激な主張は知らなかったので、少々驚いた。

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