ドイツビールを堪能してきたが

 約二週間のドイツ旅行(一泊だけオランダ)から帰国して数日たつが、どうもまだエンジンがかからない。ドイツに着く前は猛暑だったらしいが、直ぐに涼しくなり、大半はエアコンのないホテルだったが、なんとか過ごせた。日本はとにかく暑い。エアコン設備が完備しているだけに、つけていない空間とエアコンのきいた部屋との温度差、湿度差が大きく、どうしても活動的でなくなるようだ。
 今度ドイツにいったら、とにかくビールを堪能しようと思っていたが、その思い通り、毎日ビールを飲みまくった。今日は急肝日にしようといいつつ、完全に無視してしまった。とにかく、ドイツのビールはおいしい。どこで、どんな種類のビールを飲んでもおいしい。日本にもおいしいビールはあるが、率直にいって、ドイツのビールにはかなわないと思う。
 数年前のことだが、サントリーのプレミエをドイツにもっていって、ドイツ人に飲んでもらって、感想を聞き出すというドキュメント番組があった。試飲したドイツ人たちは、みんなおいしいといっていたが、私には、お世辞のように思われた。私自身、日本で飲むのはプレミエだが、ドイツで飲んだビールははるかにおいしいと思った。何故なのか。
 多くの日本人が同じ疑問をもつようで、「何故ドイツのビールはおいしいしのか」という検索をかけると、そのものずばりを扱っているページがけっこうある。しかし、どうもよくわからない。その回答に、「日本のビールだっておいしいものと、そうでないものがあるように、ドイツのビールにもおいしいのと、そうでもないのがある」というような、問いへの回答になっていないような文章もあった。日本では、おいしくないビールはいくらでもあるが、ドイツでは、そういう思いをしたことはなかった。日本での、居酒屋チェーン店の生ビールは、だいたいまずい。
 今回、Weltenburgというところにある、修道院のビール工場にいった。 
 ドナウ川を遊覧船で一時間ほどさかのぼったところにある観光地としても有名らしい。先にみえるのが修道院で、右側にみえる岩の部分を何人かが登っていた。

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 いまでも当然、修道院や教会としての機能を果たしているが、ビール工場が稼働しており、そこを見学することができる。これでも宗教施設なのかと思うほど、観光地として機能が整っており、レストランは大混雑だった。席をとるのに、かなり時間がかかったほどだ。

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 いつもかどうかはわからないが、この日は、音楽隊とフォークダンスを踊る人たちがでていて、30分ほどダンスを披露していた。年齢は高校生か大学生という感じだった。

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 食事のあと、ガイドが始まる時間になって、ビール工場を見学することになった。早口のドイツ語でまくし立てられたので、内容はほとんどわからなかったが、修道院のなかですべての工程があり、途中で、写真のように、参加者の大人には、ビールが振る舞われた。これは、レストランでだされているものと同じだが、それだけではなく、工場のタンクに入ったビールを、タンクから直接グラスに注いで飲むことができたのだが、これがとにかくおいしかった。日本でも、ビールに限らず、日本酒、ワインなど、工場で直に樽やタンクから注がれたものを飲むと、市販のものとは、同じ銘柄でも、おいしさがまったく違うと言われてるが、おいしいレストランのドイツのビールと比較しても、確実においしいと感じた。空気に触れる時間が長いと、それだけ味が低下すると聞いたことがあるが、そういう意味では、ドイツのビールと日本のビールの最大の違いは、ドイツビールが、すべて地ビールであるのに対して、日本では、キリンとかサッポロ、アサヒなど、全国展開する前提で作られたビールだということがある。日本でも、地ビールを現地で飲むと、とてもおいしいと感じるが、ドイツビールのおいしさの秘訣は、地ビールだということがまずあるのではないか。地産地消の野菜がおいしいのと同じだ。だから、輸入されたドイツビールを日本で飲んでも、防腐処理しているだろうから、たいしておいしいとは思わない。

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 原材料も見逃すことはできないだろう。ビール純粋令によって、ビールは、水、麦芽、ホップ、酵母以外のものを用いてはならない、という法があり、現在でも有効なのだそうだが、この4つの要素をさまざまな工夫を施すことで、多様なビールが生まれているのだそうだ。他に果汁などを混ぜたものもあるが、それは、ビールとは異なる区分で売らなければならない。
 しかし、日本でも、この4つの要素以外の混ぜ物のないビールはいくつかある。プレミエやエビスはそうだ。でも、やはり、差はわずかだが、ドイツのビールのほうがおいしいのは何故だろう。
 私は、自然科学者ではないので、科学的なことはわからないので、条件の相違から考察するしかないのだが、結局、「水」なのではないかと思っている。「びっくりドンキー」には、ドイツの製法を忠実に守って作られているドイツ風ビールがある。確かにおいしいのだが、でもやはり、ドイツで飲むビールのようなおいしさまでいかない。こう考えると、やはり、「水」ではないかと。
 よく知られているように、ヨーロッパの多くは硬水であり、日本は軟水である。当然、ドイツで生まれたビールは、硬水を前提として作られてきた。それを日本で、軟水で作れば、多少味が異なってくる、つまり、本場のおいしさは減少するということなのではないだろうか。
 考えれば考えるほど、おいしいビールはドイツにいかねば、と思いつつ、帰国したのだった。
 

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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