34年前の今日、日航ジャンボ機が御巣鷹山に墜落した。その年は、私が大学に就職した年で、初めての講義などの準備で忙しかったせいか、細目は憶えていないのだが、とにかく大事故だったし、有名人が多く犠牲になったり、また、生存者がいたりということで、ずっと話題になっていた。しかし、肝心の事故原因については、当時から既に公表されたことについては、多くの疑問があり、しかも、今日まできちんと明らかにされたことがない。事故当日から既に、さまざまな疑問が投げかけられ、政府も、日航も、またボーイング社も、まともな調査とその公表をしたとは、考えられていない。
参議院選をおえて、安倍首相は憲法改正論議を国会で起こすと意欲を示しているが、自衛隊が議論の中心である以上、この日航ジャンボ機の事故を素通りするわけにはいかないと、強く主張したい。
最近でも、この事故に関する著作がだされており、その多くが公式事故原因(ボーイング社による点検ミス)に疑問をもち、独自の調査で、事故の本当の原因を究明しようとした本である。そのいくつかを読んで、最も合理的な説明が可能なのが、自衛隊による誤爆説であると考える。私自身が調査できるわけではないので、さまざまな立場の見解や、だされた事実を組み合わせて、最も説得力があると感じる説を、まずは採用する以外にない。
大別すると、原因については、3つの説がある。
第一には、日航や政府が公式に表明したボーイング社による点検ミスで、尾翼が破損したというものであるが、少なくとも、この事故を真剣に考えた人は、無理があると感じているようだ。史上最大の犠牲者がでた飛行機事故の原因となったというにもかかわらず、ボーイング社は実質的な責任をとっていないとされる。本当に点検ミスによる事故なら、かなり大きな責任のとりかたが実施されたはずであるし、また、そんな会社の飛行機を事故後は、できるだけ使わない方向になると思うのだが、むしろ、日本の航空会社は、ボーイング一辺倒になっていく。
第二は、米軍による撃墜説である。これは、誤爆説と、トロン技術者が大量に搭乗していたので、彼らを抹殺するために撃墜したという説があるようだが、これは、どう考えても無理がある。横田基地は、ジャンボ機の不時着陸を受け入れる体勢だったとされていることと、墜落現場にいち早く米軍ヘリが到着して、救助体勢をとろうとしたところ、日本政府の要請で中止したとされている。自分たちで打ち落としておいて、そうしたことまでやるというのもおかしなことだし、また、トロンに脅威を感じていたとしても、圧力をかけて妨害することは、いくらでもできる。技術者を殺害したからといって、責任者は残っているのだから、それによってトロンの完成を妨害するというのも、信じられない話だ。
そして、最も有力だと考えられるのが、自衛隊による誤爆説である。この説を補強する情報は多数あり、私もこの説が正しいと考えている。この説は、実際には発射しない形でミサイルを打ち込む訓練をしているのだが、このときに限って、実際に発射してしまい、それがジャンボ機に命中したと解釈している。
まず、自衛隊が民間機を仮想の標的として、さまざまな訓練をしていることは、否定できない事実として知られている。これは、決して日本独自のことではなく、世界中で行われているようだし、アメリカでは、民間機と軍用機の衝突事故は、少なくないそうだ。日本では全日空の雫石事故が、自衛隊機が全日空の旅客機に衝突した大事故として知られている。
次に、事故が起こってからの救助体勢の不可解さは、当時からさかんに言われていた。墜落場所は、直ちに多くの人によって知られたにもかかわらず、墜落場所が不明なので、その解明がまず必要だとされて、かなりの時間が経過したあと、救助隊が向かった。救助隊が到着すると、既に自衛隊が到着していて、人の救助ではなく、残骸の回収をしていたとされている点である。森林地帯に墜落したので、衝撃が和らぎ、墜落当時は多数の生存者がいたことが、確認されている。にもかかわらず、人命救助は後回しにされたことは否定できないようだ。
次に、フライトレコーダーの記録が隠蔽されたことである。救助隊が入る前に自衛隊がはいって、回収をしていたのは、フライトレコーダーとミサイルの破片だというのが、自衛隊による誤爆説をとる人の解釈である。かなり年月がたってから、日航の体制が変わった結果、フライトレコーダーの記録が公表されたが、その記録は、自衛隊誤爆説を裏付ける要素が強いとされている。
更に、日航ジャンボ機は、完全に操縦不能になったのではなく、いくつかの空港(軍の基地)に着陸可能だったにもかかわらず、自衛隊機が追尾してそれをさせなかったのではないかとされていること。自衛隊機の追尾に関しては、多くの目撃証言があるという。
この事故では、生存者が4人いた。全員女性で、子ども2 人と、その一人の母親、そして客室乗務員だった。客室乗務員は、その後発言を封じられたが、一人の少女が共産党員の子どもで、父親が政府の公式発表とは異なる見解を述べたことで、公式発表への疑問は当時からもたれていた。墜落当時生存者が少なからずいたことが、生存者から語られていたのである。
そして、最後に、当時の中曽根首相が、日航ジャンボ機事故の真相は、墓のなかまでもっていく、と発言したとされることである。総理大臣が、このようにいうということは、国家にとって極めて都合の悪い事情があるのだ、ということを公言していることに他ならない。
もちろん、真相はわからないし、断定することはできない。自衛隊誤爆説が絶対正しいと考えているわけでもない。しかし、自衛隊がフライトレコーダーを回収したにもかかわらず、その内容を当時公表しなかったこと、真相を墓までもっていくなどと首相が述べたこと、この事実だけをもってしても、公式発表を疑うに足るといえる。
憲法改正論議との関連でいえば、国を守る軍隊が必要であること、ほとんどの自衛隊員がそういう目的を誠実に果たそうとしていることを充分に認めるとしても、トップの人たちが、国民に大きな犠牲をだしてしまったミスを隠蔽してしまうということが、仮にあったのだとしたら、真相をきちんと明らかにしない限り、憲法を改正して、自衛隊を位置づけることに、賛成などできないということである。
もしミスがあったのだとしたら、「絶対にあってはならないミス」というのだろうが、人間である以上ミスを100%防ぐことはできない。ミスをしたときに、どのような対応をとるかという問題だ。