皇室問題を考える3 小室氏から考えてみると

 小室問題は、ほとんど皇室の側にたった発想で論じられているものがほとんどであるように思われる。しかし、相手がいる以上、相手の立場はどうなのか、という視点も必要だろう。もちろん、個人的に知っているわけではないので、あくまで仮定による議論である。
 小室圭氏は、散々な言われ方をしているが、別に悪事を働いたわけではない。女性が白馬の騎士の出現や、玉の輿結婚を望む人がいるように、男性が逆玉結婚を望んでも、別に非難されることではないだろう。むしろ、同一大学に内親王がいることを知って、巧みに近づき、プロポーズして承諾を受けるというのは、並大抵の手腕ではない。平凡な男性には思いもつかないだろうし、思っても行動をとれないのではないか。そういう意味では、小さいころから、他人の援助を利用して、様々なスキルを身につけ、社会的に上昇しようとしてきた生い立ちを見ると、この行動は、その延長上にあるといえる。
 真子内親王からすれば、おそらく、積極的に異性として近づいてくる男性など、極めて稀であったろうから、スキルを身につけた小室氏がアプローチしてくれたことに、素直に反応したのだろう。
 現代の王室というのは、もちろん、後継者を産むことが期待されているが、後継者づくりに不可欠の配偶者を見つけることが、非常に困難なのである。どの国の王室も苦労している。日本では、秋篠宮は別として、天皇が皇太子のときに、どれだけ苦労したかは、多くの人が記憶しているだろう。ヨーロッパの王室も同様なので、王子や王女は外国にいって活動し、そのなかで相手を見つける努力をするところが多い。ヨーロッパ王室の若い配偶者に外国人が多いのは、そのためである。
 昔は、極めて恵まれた生活環境におかれ、人々の崇拝を受ける憧れの地位だったかも知れないが、現代では、王室より経済的に恵まれた地位を獲得する可能性などいくらでもあり、かつ、王室にはない自由が、民間人にはある。王室のメンバーになれば、ほとんどプライバシーがなく、どこにいっても公衆の目に晒されてしまう。通常であれば、見過ごされる些細なことでも、大きな問題となって非難されるかも知れない。ちょっとした言葉使いで問題になることだってある。つまり、王室の人間としてふさわしいという、事前チェックで問題にならないような人は、民間人として、王室で保障される豊かな生活などは容易に手に入るし、王室にはない自由も放棄せずにすむ。だから、結婚して王室にはいりたいと思う人は、極めて稀なのである。特に、同じ国民であれば、窮屈な実態をよく知っているから尚更だ。だから、王室がなく、素朴な憧れの感情が残っているような国にでかけていくのである。
 また、王室、皇室に生まれたからといっても、同じ人間だから、人間的な感情や欲求もある。しかし、王室のメンバーであることによって、著しい制限を受けなければならない。こんな生活から抜け出たいと考える王室の人がいたとしても、少しも不思議ではない。秋篠宮夫妻は、大恋愛で結婚したが、そうであればこそ、結婚前には見えなかった様々な相違が浮きでてくる。そして、衝突も激しくなるのではないだろうか。公の場で見せないが、家庭内では普通に夫婦げんかもするだろう。そういう姿をみていれば、こんな家は早くでたい、と子どもが思うのもまた、ごく普通のことである。
 秋篠宮家では、自由な子育てを重視してきたと言われている。そのことの是非は別として、そのように育てられた本人が、皇室の窮屈な生活から逃れたいと思うのも自然だろう。もし、小室氏との結婚が流れたとしたら、おそらく、今後自由な恋愛の結果としての結婚は不可能だと思うだろうし、結婚するとしても、最初から厳格に選別された「間違いのない家の人」をあてがわれるような形になる。だからこそ、いくら非難されても、小室氏との結婚にかけているかも知れない。もちろん、何不自由のない甘やかされた環境で育ってきたわけだから、その後に訪れるさまざまな苦労を想像することなどは、おそらくできないのだろう。
 さて小室氏に戻る。もちろん、想像であるが、小室氏が、自分の生活設計をたてて、それを軌道にのせ、そうしたなかで交際して、この人と一生生活をともにしたいと考えて、プロポーズしたようには思えない。多くの人も同感だろう。むしろ、内親王との結婚によって、生活設計ができると考えて、賭に出た。皇室と婚姻関係になれば、就職だって有利になるだろうし、様々な社会的な地位をえやすくなるだろう。単に一時金がえられるというだけではない。実際に、プリンセスのフィアンセということで、アメリカの大学で、多額の奨学金まで獲得しているのだから、その威力は大きい。
 結婚詐欺というわけでもないのだから、ここまでの経緯に関しては、個人的に非難されるようなことでもない。
 疑問は、自分の家庭にある、社会から見れば非難されるようなことがらを認識していなかったのだろうかという点にある。もし、小室氏や母親が「賢明」な人たちであれば、事前に解決していただろうから、表にでるようなことはなかったに違いない。もっとも、小室氏の父方の3人の自殺という事態は隠しようがないし、不自然さは誰でも感じる。そして、いずれ知られるだろう。そのことを小室氏がいつから自覚していたのか、あるいは、発覚することはないと思っていたのか。そこはもちろん、わからない。しかし、発覚した時点で、小室氏の立場でどのように考えるだろうか。
 結婚が実現すれば、おそらく通常以上の援助がなされると予想される。万々歳だ。
 もし、実現しないとしたらどうか。自分からは決して破談にしない。相手にさせる。そうして、不当な婚約解消ということで、慰謝料をとる。大正天皇の婚約破棄では、数億支払われたというから、それを基準と考えるだろう。巷間言われている、公にされたくないプライバシーを握っているということも、おそらく事実だろう。もちろん、それを表沙汰にすることはないだろうが、交渉過程で大きな影響力をもつはずである。
 そうした一連の流れを仮定してみても、犯罪行為とは認定しがたいわけである。
 つまり、秋篠宮家や宮内庁は、完全に小室氏の手玉にとられているのである。もし、どんなに自分が社会的に憎まれる存在であったとしても、実利をえられるならば、気にしないという精神をもっているとすれば、これまでの状況は、小室氏にとっては、すべてが順調に推移している。
 皇室側が、このトラブルの解決に失敗したら、皇室そのものの危機になることは避けられないと思われる。
 もし、真子内親王が、皇室離脱し、一時金も辞退し、その状況で結婚を決意したら、小室氏はそれを受けるのだろうか。それは彼にとっては、最悪の進展かも知れないが、国民の支持は最大になるだろうが。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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