何度か紹介したスウェーデンの少女グレータ・トゥンベルが、またスウェーデンの新聞で扱われているので、紹介をしたい。
日本でも、いくつかの新聞で紹介されたが、気候変動に関するパリ条約を、きちんと履行しようとしない政治家たちに抗議して、昨年からグレータが始めた運動が、世界に広まって、いまでも、勢いという点では弱まっているが、むしろ大人にも影響して、確実に定着しつつあるといえるものである。
記事は、För ett år sedan gjorde hon debut som debattör i SvD. Nu är Greta Thunberg världskändという題で、説明を加えながら、グレータの発言やインタビューを載せている。Svenska Dagbladet の2019年6月3日付け、筆者は、Henning Eklundである。
昨年5月31日に、はじめてこの新聞に登場したという。
「みなさんが、何をして、何をしないかが、私たちの孫や曾孫たちに影響を与えるのです。おそらく彼らは、何故しなかったのか、何故知っているのにしなかったのか、という問いかけをするでしょう。」
これは、当新聞社が募集した懸賞論文に彼女が応募した文章だが、気候変動について論じたこの論文は、実は二位だった。しかし、読者の評判がよく、最もよく読まれた論文だったとツイッターで公表された。そして、8月に学校闘争を開始する。「闘争」と訳したが、原語はストライキをも意味する。実際に、9月になっても闘いを続け、学校を休んでしまう。だから、学校へのストライキという側面ももち、海外に広まったときに、あえて「金曜日」に高校生たちがデモを行い、学校を休むストライキとしての闘争を継続したのである。そして、前にも紹介したように、学校をあえて休むことに強い意味をもたせたので、大人たちからは批判も受けることになるし、逆に強い支持も獲得していった。彼女の闘いは、国会前に座り込み、選挙までそれを継続した。学校を休んでいることで、父親の見解が求められたようだが、自分が影で指示しているということはないが、娘の決心を理解している、と述べて、事実上支持表明をしている。
「確かに私は学校にいくべきだが、彼ら(親)が私をとめることはできない。そして、彼らは私がしていることを理解している」とグレータは、彼らの親が何を考えているのという問いに答えている。「私はできることをやっているだけなのです。何もしないことは、フラストレーションとなります。最初の短い時間だった日、私はたった一人で座り込み、みんなが私を無視して、見もしませんでした。」
しかし、誰もが彼女を無視したわけではないく、メディアは、数名の子どもたちが、ストライキに参加し、それは、総選挙まで毎日続いた、と報道したと記事は書いている。トータルすると、ストライキは3週間続いた。選挙のあとは、金曜日に闘い、その他の日は学校に行くようになった。しかし、それとともに、ヨーロッパの各地に金曜日の運動(未来のための金曜日)が広まり、毎週数万人のデモ行進が行われるようになった。
大人の世界での称賛
そして、次には大人の世界の称賛が続いていく。
12月に、タイム誌が、世界で最も影響力のある10代の若者に指名した。「彼女が闘いを始めて以来、世界中の数百の同様の行動に励ましを与えた。」とタイムは書いた。
その数日前、グレータは、Katowiceでの国連の気候サミットに参加して演説をしていた。
「世界のリーダーたちは、我々を無視し続けるでしょう。だから、彼らには何も要求しません。しかし、彼らが認めようが、認めまいが、変化は起きています。我々の世代が大人になったとき、今の政治的リーダーが昔したことに対して、責任をとらなければならないのです。」
国連の会議での演説で、聴衆の一人は、国連事務局長だった。
翌年(2019年)には、ダボスの世界経済フォーラムに招かれている。世界を動かしているスーパースターたちが集う場である。そこに、グレータは30時間かけて列車でいった。それに対して、スターたちは、自家用ジェットなど1500機ものジェット機でやってきた。気候を議論する会合に、ジェット機でやってくるなんて、と彼女は嘆いてみせた。
「考えられないほどの大きなお金を得るために、どれほど大きな価値もないようなことに、価値あることを犠牲にしてきたかを、人々や企業や政策決定者たちは、知っている。そして、ここにいるひとたちの多くは、そのグループに属している。」
「私は、みなさんが希望一杯になることを望まない。私は、みなさんがパニックになることを望んでいる。」と、世界の指導者たちに対して言った。
このパニック発言は、次の4月のEUの環境会議の演説につながる。
「私は、家が燃えているかのように行動することを、みなさんに望む。多くの政治が、パニックは、いい結果にならないという。それは私もそう思う。しかし、家が燃えていて、それをなんとか守りたいと思えば、パニックになるのではないか。」
これは、このときの会議で最も有名な演説の一節となったそうである。
彼女に続く若者も続々と出現した。
そうして、大人の活動家のように認められるようになっていく。
3月には、Aftonbladet/Inizio 誌、Expressen 誌、Swea International 誌などが、本年度の代表的な女性としてグレータを選出し、更に、ノーベル平和賞にノミネートまでされるにいたった。その理由は、気候変動は、戦争の脅威となる大きな要因であり、グレータの活動は、それ故平和に寄与するものだというのが理由である。ノーベル平和賞が、事前にノミネートされた人を理由とともに公表するのかどうか、若干疑問だが、ただ、この場合「推薦」という意味であろう。
4月には、ローマ法王と会談し、更に、タイム誌が、今度は若者としてではなく、大人として、世界で最も影響力ある100人の一人として選出した。
記事は、グレータのファンになった人物を何人か紹介している。その一人がオバマである。彼はツイッターで書いた。
「世界の若者たちは、地球を守るための闘いの道を示している。その一人は、16歳のグレータであり、議会の外での抗議活動、運動を組織した。」
更に、ハリウッドスターの Anne Hathaway と Leonardo DiCaprio、そして、アーノルド・シュワルツネッガーである。シュワルツネッガーは、グレータと会談して、過去の自分がいかに頑固者であったかを認識したそうである。
もうひとつ、いくつかの大学が、グレータに名誉博士号を贈っているそうだ。
グレータき活動については、スウェーデン在住の日本人が、日本で紹介しているページがあるので、ぜひ見てほしい。
http://www.stockholm-log.com/archives/28614249.html
日本では何故運動が起きないのか
さて、何度か彼女のことを紹介するのは、日本では何故、彼女に呼応した運動が拡大しないのかを考えたいからだ。もちろん、まったくなかったわけではない。しかし、その規模は20人程度だったようだし、また、休日に行われている。つまり、学校を休んでまで社会に訴えたいという、強い気概を示すものでもなかった。もちろん、学校を休んで運動することが、それ自体に強い主張がこめられるとしても、それがよいことかどうかは議論の余地がある。
だから、日本の若者はだらしない、という主張をするつもりはまったくない。つい最近まで、日本の高校生は(中学生はもちろん)、一切政治活動をしてはならない、と法律で禁じられていたのだ。18歳選挙権を規定したために、さすがに、その禁止はやめたが、それでも、日本の与党の政治家たちは、日本の高校生が高い政治意識をもち、行動することを好まないだろう。麻生副総裁が、日本の若者は新聞を読まない、だから、考えない、それで自民党を支持してくれるのだ、と述べたという話がある。本当かどうかわからないが、少なくとも、日本の教育政策がそうした意識で実行されていることは、否定できないだろう。そうした政治を変える必要がある。それは大人の責任でもある。若者が無気力で、政治・社会のことを考えないようにして、政権党にもプラスになるとは思えないのである。
しかし、その主題は、また別に書きたい。
確かに、家が燃えている。と思えばパニックになるべきですね。
アマゾンではジャングルがもえてるし
自分に出来る事から始めなければ。
と思いますね