ファミリー・コンサート

 昨日は、私の属する市民オーケストラ(松戸シティフィル)のファミリー・コンサートだった。ほとんどその話題では書いたことがないのだが、今回はいろいろとおもうところがあって、演奏会のことを書こうとおもう。
 まず、プログラムだが、前半にベートーヴェンの7番の交響曲、後半に、サウンド・オブ・ミュージックの抜粋接続曲(オーケストラ用の編曲なので、歌は入らない)、スター・ウォーズ組曲というものだった。このプログラムが団員に示されたとき、私も含め多くの団員は、「えっ、ベートーヴェンが前プロなの?」と驚いた。実は、指揮者が、けっこう練習が進んだ段階で、そのことを知り、「ほんとうですか、はじめて知りました」とやはりびっくりしていた。ベートーヴェンの交響曲が前半にある場合は、私が知るかぎり、ほとんどベートーヴェンプログラムで、前半に偶数番号あるいは1番、そして、後半に1番以外の奇数番号の交響曲を配置するものだ。7番は長く、激しい曲だから、前半というのは、聞いたことがない。

 まして、後半が映画音楽というのだから、更に驚きだった。
 しかし、このプログラミングは集客力において、非常に力を発揮した。だいたい、私たちのオーケストラは、プロオーケストラの定期演奏会のようなプログラムを組むので、普段は客の入りが悪い。私が所属した他のふたつの市民オケのほうが、はるかに集客力があった。市民オーケストラとしては、松戸のほうが絶対的に強力なのだが。今回のスター・ウォーズの演奏でも、ハープ・ピアノ・チェレスタ、多くの打楽器などは仕方ないとし、ごくわずかの弦楽器のエキストラだけで演奏できるというのは、市民オケとしては、比較的少ないと思う。団員が多いということだ。しかし、通ごのみのプログラムでは、たくさんの客はこない、しかし、誰でも知っているようなポピュラーな曲をいれれば、たくさんの人が聴きにきてくれるということが、改めてわかった。ただ、だから、そのほうがいいというわけではない。松戸シティフィルは団員が長く所属している人が多いので(私も20年以上在籍している)、やはり、いろいろな曲をやりたいわけだ。すると、これまでやらなかった曲を中心にプログラムを組むことになり、どうしても、ポピュラーな曲、こうした映画音楽はほとんどやらないことになる。むずかしいところだが、やはりやりたい曲をやるのが、アマチュアのいいところではないかというのが、私の実感だ。
 
 ベートーヴェンの7番の演奏も、団員がけっこう考えるものがあった。というのは、今回の指揮者の設定したテンポが、非常に速いのだ。2度ばかり別の指揮者が代振りにきたのだが、テンポの速さに驚いていた。もっとも、そのテンポが非常に不自然で、異常に速いというものではなく、とくに近年ベートーヴェン演奏のテンポは速い場合が多いので、そのなかでも、おそらくもっとも速い部類にはいるというようなものだったろう。
 演奏会が終ったあと、他に仕事があって、すぐに帰ってしまった指揮者から、メールがきたそうで、これまで7番をやっても、どうしても要求とおりの演奏ができず、今回はじめて、納得が行く演奏ができた、と書いてあったそうだ。リップサービスということもあるだろうが、しかし、以前にも、別の指揮者が、プロオケである曲をやったのだが、この部分がどうしてもうまくいかなったが、私たちとの演奏ではうまくいった、よかった、という話をされたことがある。
 ただ、その別の指揮者のその部分の解釈が、通常のものとは著しくちがっていたので、プロオケはそんな妙な演奏はできないと抵抗したのではないかと思うのである。ところが、私たちは、まったくのアマチュアだから、かなり普通ではない解釈だとは思っていても、指揮者がこうやれというのだから、そのとおりやろうとしただけのことで、もちろん、プロオケより私たちがうまくできたわけではない。
 今回の7番では、私たちのオケには元プロだった優れた奏者がいるのだが、彼の演奏を聴いていると、なんとか指揮者の解釈を多少なりとも穏健なものにしようと、試みているのが感じられた。これまで何十人もの指揮者がきたが、彼の演奏に注文する人はほとんどいないのだが、今回の指揮者は、なんども注意していた。彼の抵抗を感じていたのだろうと、私には思われた。プロの指揮者とプロのオーケストラとの間というのは、かなりシビアなものだと、実感したおもいだった。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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