小学校卒業文集廃止の動きについて


 確かに、これまでは卒業文集なるものを作成するのが普通だった。少なくとも小学校においては。中学校や高校ではなかったと思うし、大学では当然ない。しかし、小学校でも卒業文集を廃止する動きがひろがっているのだそうだ。
「小学校で広がる 「卒業文集」廃止の動き 背景に先生の業務過多も保護者たちの反応は?」
https://news.yahoo.co.jp/articles/d199210f44f58bc44436695de04f3a856d05ffc5

 結論からいえば、廃止はごく自然なことだと思う。
 私が大学を定年で退職したのはコロナが拡大し始めた2020年だが、その時に、学部で独自に作成していた卒業アルバムの作成を止めた。大学が作成している卒業アルバムはつづいていると思うが、私の学部では学部独自のものが中心だった。何故、止めることになったかといえば、ほしがる学生が極めて少なくなったからである。当然欲しい人だけに配布するので、有料である。しかし、お金をとられるよりも、そもそもアルバムという存在に、あまり関心がなくなっていることを感じた。彼等にとって、写真はアルバムなどでみるものではなく、スマホの画面でみるものなのだ。お互いに親しい者同志が写真をとりあって、それをスマホに入れておくほうが、写真を保存してみる上では、ずっと便利である。だから、わざわざ重い紙に印刷されたアルバムなど欲しくないのだ。

 若い世代ほど、紙媒体よりはデジタル媒体で処理することに慣れているし、そのほうが便利であることを感じている。だからアルバムにせよ、文集にせよ、若い世代と中年以上の世代とは感じ方。が違う。紙に印刷された媒体ではなく、ネット上、あるいはパソコン、スマホに残された形で保存するほうがしっくりくるという感覚である。そういう世代が育っているのだから、そうした感覚に合わせて、「思い出」の形も変えていけばよい。
 ただ、記事になっている卒業文集の廃止は、そうした子どもたちの感覚の変化に応じたものではなく、あまりに過重な労働を強いられている教師たちが、更にたいへんな時間と労力が必要な卒業文集の作成から逃れたいという願望が原因である。ということは、受け取る側の感覚と、作成する側の願いとが一致することになる。だから、自然な流れだと思うのである。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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