ウクライナの状況が厳しいことが、かなり頻繁にいわれるようになり、領土をロシアに一定割譲しても、和平をすべきではないか、という意見が、日本だけではなく、ウクライナ内部においてもでているように報道されている。そして、ウクライナでも最高軍司令官が交代になるなど、ウクライナを支援するひとたちにとっても、全面的に信頼していいのだろうかという要素もでてきている。
ただ、これまでの支援する側の対応をみている限り、ウクライナが苦戦することは、ごく当たり前のことであり、支援する側が、支援の姿勢をかえることで、現状をかなり打開できることも間違いないのである。そして、ウクライナがロシアに領土を割譲するような状態で停戦すれば、つまり、ロシアが政治的にも軍事的にも勝利するようなことがあれば、その国際的な影響は測り知れないものがあり、真の意味で第三次対戦を誘発する要因にもなりえるのである。
では、何故ウクライナは苦戦しているのか。それは、ウクライナが当初から要請して武器を援助せず、量は多いかも知れないが、ロシアに対抗するには、脆弱としかいいようがないレベルでの援助に限定されてきたからである。そして、それは決して、そういう援助が不可能だからなのではなく、臆病だから、あるいはもっと隠微な理由のためである。
ウクライナは、ロシア軍を戦闘によって打ち破る必要はないのである。ロシアはウクライナ領土に侵略してきた軍隊なのだから、追いだせばいいだけである。戦車戦をしてロシア兵を殺害する必要などないのである。ロシア軍は侵略軍なのだから、武器や食料をロシア国内から運んでこなければならない。もちろん、占領地域からの略奪をする方法もあるが、そこをロシア領にしようというのだから、略奪もかなり限度がある。やはり、完全にそこが領土になるまでは、ロシア国内からの補給が必要なのである。だから、ウクライナとしては、その補給を徹底的にたたいて、補給ができなくしてしまえば、占領軍は撤退せざるをえないのである。
だからウクライナ政府としては、そのための武器をずっと強く要請してきた。
それは、戦闘機と、長距離のミサイル、そして、防空システムである。この三つの武器で、ロシアからのミサイル攻撃を防ぎつつ、ロシア国内の兵站を徹底的にたたけば、補給ができなくなる。そうすれば、短期的には無理であるが、この2年間の間に確実にロシア兵を撤退させることができただろう。
しかし、アメリカがこのウクライナの要請をそれなりに満たしたのは防空システムだけである。いまだに、戦闘機を(ある程度準備中とはいえ)援助していないし、ミサイルの距離を制限している。これでは、徹底的な兵站破壊はできないから、結局、戦車でもって侵略されている領土を取り返そうという作戦をせざるをえなくなり、そうなれば、圧倒的に大国であるロシアが有利なことは、最初からわかっていることである。
だから、最初からウクライナはこの三つを要求していた。しかし、アメリカがそれを現在でも認めていないのは、ロシアを刺戟する、核兵器をつかう口実を与えるということだ。しかし、このアメリカのやり方は、ふたつの点でいかにも、おかしなものだ。
ひとつは、これまでロシアはずっと核兵器の使用をちらつかせてきたが、実際には、つかっていない。これは、アメリカ・NATOがかなりつよい圧力をかけて、つかった場合の報復を伝えているからだとされている。つまり、アメリカは、ロシアの核兵器使用を断念させることは、かなりの程度可能なのである。にもかかわらず、いまでもロシアの核の脅しに拘っている。第二に、ロシアの侵略は、アメリカがそそのかした面があるという点である。バイデンがおろかな発言(アメリカ軍は参加しないと明言)をしなければ、ロシアは躊躇した可能性もあるのである。バイデンの明言によって、ロシアは安心して、ウクライナ侵略を敢行したのである。だから、アメリカには責任があるだけではなく、我々日本人としては、アメリカのそうした面を決して忘れてはいけないということである。有事にはアメリカが助けてくれるなどという甘い考えは絶対にもたないことだ。といって、だから、中国との衝突を準備せよ、というのではない。逆である。あらゆる外交的努力によって、中国との衝突を回避しなければならないということだ)。
アメリカはウクライナの要請を、もっと真剣に満たしていく必要がある。
3月くらいには、戦闘機がウクライナに配備されると噂されている。もし、それが実現すれば、状況はかなり変る可能性がある。そのことも十分に認識しておく必要があると思われる。