原口一博氏のネオナチ発言批判を考える

 原口一博氏が、ウクライナ政権をネオナチであるかのように表現して、日本はその背後にいるとした、と発言したとして非難されている。そして、駐日ウクライナ大使が批判しているとされ、原口批判がかなり燃え上がっているようだ。残念ながら、遅まきながら本日そのことに気づき、いろいろとチェックしてみたが、肝心の原口氏のyoutubeは削除されており、実際にどのように原口氏がのべたのかはわからない。こういう場合には、安易に削除すべきではない。削除すると、やはり、まずいことを書いたり、発言したのだ、と思われるからである。かつて、こうしたネット上の発言の削除問題については、かなり議論をしたことがあり、論争を闘わすのであれば、自分の発言にせよ、相手への削除要求にせよ、よほどのことがない限り、せず、発言を残しながら議論をすべきであるという立場だ。そういう意味で、原口氏の措置は残念だと思う。昨日のyoutubeでは、多少それに関する説明がでていて、ウクライナはネオナチだというのは、ロシアの言い方であること、アゾフ大隊には、ネオナチ的なひとたちがまざっていること、等がウィキペディアにでていることをいっている。そして、カナダでゼレンスキーが国会演説したときに、元ナチの人物が国会内にはいっていたと、批判をしていた。こちらは、ネオナチではなく、元ナチだというのが、原口氏の批判点だった。

 
 削除してしまったので、擁護も非難もできないが、おそらく、ロシアがウクライナ政権をネオナチだといっているということを、何度か紹介していたのが、表現が誤解されやすいような部分があったのではないか、そして、それを切り取られて非難されているのではないか、と想像している。あくまで想像だが。というのは、プーチンがウクライナをネオナチ政権だと非難していることは事実であり、そのことは日本人でも知っているひとは多いはずである。そして、原口氏がプーチン支持派だとはとうてい思えないから、プーチンのそうした見解を支持しているとはとうてい思えない。
 それでは、プーチンのウクライナ政権がネオナチだという規定は正しいのか。ナチとはなにか、ネオナチとはなにか、そうしたことの厳密な検証ぬきに、結論を出すわけにはいかないだろうが、少なくともゼレンスキー政府が、ネオナチというのは、かなりの無理があるだろうし、一笑に付すべき難癖であるといえるだろう。ネオナチというイメージでいえば、プーチンのほうがずっとナチ的である。国民に一方的な情報を与え、自由な言論を禁止して、自分の反対派を徹底的に、排除し、ときには殺害も辞さないという恐怖政治。これこそ、ヒトラーの行った恐怖政治によく似ている。戦時体制を余儀なくされていても、政治的反対派をテロで殺害するようなことは、ゼレンスキー政権はしていないと思われる。もともとかなり政治的に腐敗していたのが、ウクライナ政権だったし、ロシアからの工作などかなりあるだろうから、ゼレンスキーの政治体制に批判されるような部分がまったくないかとはいえないだろうが、あれだけの侵略をされながら、国民の団結を維持して闘っていることから、かなり民主主義的な政治であるように思われる。
 
 ドイツでは、かなり明確にネオナチと呼ばれる政治勢力があり、暴力行為も辞さないひとたちである。ヒトラーにつながる感覚をもっているといってよいだろう。しかし、そのほかの国で「極右」と呼ばれているひとたちが、ネオナチとまでいえるかどうかはかなり疑問であるにもかかわらず、同様に扱われている雰囲気があることには、要注意であろう。ル・ペンなどがネオナチとは、私は思わない。またアゾフ大隊がネオナチだとも思わない。彼等がかなり強いウクライナ国家の愛国者であったことは事実であり、また、ウクライナ東部の親ロシア派住民、そしてロシア軍による一種の反乱に対して、強硬な姿勢をとっていたことは事実であるが、それをもってネオナチと決めつけることには、私は疑問なのである。実際に、ロシアによるウクライナ侵略が始まると、ウクライナ政府の統制下にはいり、困難な場所で闘っている。ワグネルと似たように思われるが、ワグネルはやはり私兵であって、グローバルな金儲け集団であった。かなり性格が異なるし、ワグネルのほうが、国際的ネオナチ集団というべきだろう。
 
 おそらく原口氏は、ロシアがウクライナ政府をネオナチだと決めつけているのは、不当である、ということをいいたかったのではないか。ただ、そうだとすれば、youtubeを削除するのではなく、再度アップして、誤解されやすいところを訂正する部分を補充するべきではないだろうか。元のものにアクセスできないので、煮え切らない文章になってしまったが、やはり、一端行った発言、公表した発言には責任をもつべきである。それはまずかったとしても、削除ではなく、真意を説明することではないか。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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