ジャニーズ事務所会見、あれこれ

 ワイドショーなどは、ほぼこの話題一色、(もちろん台風情報はあるが)だが、ネットでの意見も実にさまざまだ。しかし、まだまだ、すっきりしない面が多々ある。書きながら考えてみることにする。
 東山という人は、タレントとしての実力などは、私にはわからないが(そもそもドラマなども見たことがない)、ただ、身体を毎日鍛えているという話を読んだことがあって、それには非常に感心した記憶がある。なにしろ、毎日腕立て伏せを1000回やると書いてあったのだ。もちろん、腕立て伏せだけではなく、その他さまざまなトレーニングをしていて、そのなかの腕立て伏せなのだろうから、すさまじいくらいの鍛練ぶりだ。スポーツ選手ならいざしらず、芸能タレントなのだから、そのストイックな姿勢には、率直にすごいと思っていた。

 ドラマでも人気シリーズの主役ということだから、おそらく、今回社長などを引き受ける気は、自分の意思としてはなかっただろう。外部のひとがだれも引き受けないから、仕方なくという面が強い気がする。タレントとしては引退をせざるをえなかったわけであるし。
 記者会見では、東山氏の加害者性にかかわる質問がかなり出たようだ。そして、今日のネットの記事やコメントでも、その点がだいぶ話題になっている。正直にいわないのはけしからんというような文章が多かった。しかし、あの記者会見の場で、自分も反省すべき行為をした、などと加害行為を認めたら、それこそ社長失格ということになるだろう。刑事告訴の対象にすらなるわけだし、社長がそれで逮捕されてしまったら、会社は絶対的な窮地にたたされる。実際にあったとしても、明確に肯定するわけにはいかないのだ。井ノ原氏の「聞いたことがある」発言も、のちのち裁判になったら不利になることだから、いうべきではなかった、という弁護士の指摘があるくらいだ。ただし、加害行為の記憶があるのならば、「なかった」と断言するのも、あとあとマイナスになる。公然と偽証したことになるからだ。だから、あいまいにして、記憶にない、というのが、立場上、それ以外ない回答になる。国会の証人喚問でも、「記憶にない」が連発されるのは、そういう理由だ。社長を引き受けた以上、それ以外の回答はないのであって、その回答を非難するのは、個々人の自由だが、ただ、その非難する人物は、決して、こうした状況に陥った組織の建て直しなどはできない人物であることを、自ら証明したようなものだろう。お気楽な非難でしかない。
 
 ジャニーズが、タレントの起用に関して、不当な圧力をかけたという点も、質問にでていて、井ノ原氏が、これはメディア側の忖度などもあるので、一朝一夕では解決できない問題だなどと語っていたと思うが、タレントを多数かかえて、さらにたくさんの若手を育てたいと思っているジャニーズ事務所としては、起用に関して強い注文をつけることは、当然ありうることだろう。たとえば、人気のAを使うことを許可する一方、そのかわり、新人のBも使えというような条件を課す。あるいは、ある枠に他の事務所のタレントを使おうとしているのを、ジャニーズにせよ、そうしないと、Aの出演も認めない、などという圧力をかける。こういうことは、その実力が事務所にあるのならば、別に不思議でもない圧力といえる。他の事務所でも、大手で力があれば、同じようなことはやっているにちがいない。細かい条件のつけかたによって不当かどうか変ってくると思うが、要はテレビ局との折衝、あるいは力関係の問題なのではないかと思われる。
 
 まったく別だが、あきらかに不当な圧力を身近に体験したことがある。
 ピアノを購入して、購入メーカーの調律師をしばらく頼んでいた。腕もいいひとで、満足していたのだが、数年経ったときに、ピアノメーカーから、その調律師は、きわめていいかげんな人間なので、けっして依頼することのないように、という手紙が突然きた。びっくりしたが、腕もいいし、いいかげんではないので、そのまま頼みつづけていたのだが、そのうち連絡がとれなくなってしまった。あとで事情通のひとにきくと、メーカー所属の調律師が、独立すると、メーカーが、そのひとの人格を攻撃をして、仕事をさせないように画策することがめずらしくないのだという。とにかく、手紙は、読むに堪えないようなひどい内容の、そして、まったく事実とは考えられないようなものだった。そんな、独立したひとに誹謗中傷を浴びせるようなことがあるのか、とびっくりしたものだが、この場合、明かに誹謗中傷文書をまき散らして、仕事を妨害しているのだから、「不当な圧力」だと思うのである。
 
 ジャニーズはこのような、あきらかに「不当な」やりかたで、他の事務所への妨害をしたのだろうか。あなたの局が使おうとしているタレントは、実は**で問題ある人物で、あとあと問題になりますよ、などといって、降ろそうとしたり、あるいはタレント自身に、なにか圧力をかけたり、もしそうだとすると、明かに不当な圧力だが、そうした不当な要求にしたがったテレビ局も、あきらかに不当なことに協力したことになる。ここでもテレビを中心とするメディアの問題が浮き彫りになる。こうしたことは、両方がそれに合わせなければ成立しないことなのだから、一方だけを責めることもできない。
 
 ところで、事務所は今後どうなるのだろうか。既に広告の停止とりやめという動きがでている。最初は、自社の広告に使わないということだろうが、そのうち、テレビの提供番組内で、使わないようにテレビ局に申し入れることに発展する可能性がある。そうすると、ジャニーズ事務所のタレントには、逆に仕事がいかない事態になる。その結果、事務所を退所して、他の事務所に移るタレントがでてくるだろう。最悪の場合、芸能事務所として成立しなくなる。そういうこともありうるのだろうか。もし、有力なタレントがやめてしまえば、ファンはそちらについていくのだろう。
 しかし、ジャニーズのタレントは、事務所に対する愛着が強いので、そうした動きはでないということもありうるのか。
 性被害者への補償には、当然それだけの資金が必要である。事務所の資産はかなりのもののようだが、ほとんどは不動産の形で所有しているようだ。そうした不動産資産を売って補償資金を捻出するのだろうか。ジュリー氏が全株保有しているという株などは、実際に価値があるものかどうか、かなり疑問である。まったく売りにだされていないのだから、単なる紙切れに過ぎないといえないこともない。倒産したら、文字とおり紙屑になる。株を外部に売りにだしても、買い手はつかないという専門家の見立てもある。結局、ほとんどすべての資産をジュリー氏がもっているとすれば、完全に身をひくといっても、あまり現実的ではない。また、会社名を変更すれば、ジャニー喜多川氏との関連を断ち切れるのか。そんな単純なものでもないように思われる。メディアは旧ジャニーズと付記するかも知れない。現在弁護士や会計士とともに、補償の問題を検討中なのだろう。
 ただ、被害者側の姿勢の変化にも、多少気になる点はある。
 
 また、あれこれ考えてみたが、本当に一筋縄ではいかない問題が多々あるように思われる。また、まとまったら書くことにする。
 
 
 

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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