木原問題と文春の思惑のずれ?

 最近の動きをみると、『週刊文春』が当初目論んだことと、展開が変ってきて、文春としても今後の展開をどうするか、迷っているのではないかと思われるのである。当初の目論見とは、当然木原氏のスキャンダルの追求であり、それは、おそらく、自民党内の反岸田勢力と結びついていたと考えられる。当時の捜査状況を正確に把握していた杉田氏と二階、菅氏が、岸田政権への打撃をあたえるために、捜査資料を文春に提供し、文春が裏付け取材をへて、報道に踏み切った。そして、それはかなりの効果をあげ、おそらく木原氏は文春の攻撃に耐えられず、辞任の意思をかなり強くしたところまで追い詰められた。
 しかし、事態は文春が想定した部分以外に波及し、文春は、岸田政権より協力が敵対勢力をうみ出してしまったのが現状なのではないだろうか。端的にいってそれは警察である。

 
 『週刊文春』が、最初から木原氏のスキャンダルとしてとりあげたように、木原氏が捜査に介入したという再捜査時点に焦点をあてていた。そして、木原氏が介入したことによって、捜査が中断、終息したのだという構図を描いていたに違いない。ところで、捜査が打ち切りになったきっかけは、何だったのか。文春報道では実は、それはあいまいなのである。木原氏が介入したことが、事実だったとしても、国会が再開されたために、木原氏妻の事情聴取がむずかしくなったというようにいわれてきたが、実は、違う見方も可能である。つまり、木原氏妻への事情聴取が進み、Z氏への追求にかかりはじめたという時点でもあった。元刑事の告発によると、そういう時期だったとされる。国会がはじまっても、別に妻の聴取をすることに、それほどさしさわりがあるとも思えない。もっとも、任意だから拒否されてしまえば、それまでのことなのだが。そして、木原氏妻の聴取ができなくても、Z氏の聴取は可能だし、別の捜査も可能だったわけだから、捜査自体が全体として終わりになったのは、国会開催では説明がつかないのである。やはり、Z氏に矛先をむけ始めたからではないかと考えると、次の重要な点が浮かび上がってくる。それは、木原氏がまったく無関係であった事件当時の捜査打ち切りである。youtubeでさまざまな人が調べ、情報をあげているが、それを元に考えると、推測ではあるが、次のようなことが確認できる。
・捜査したほぼ全員が、自殺ではなく、事件であると認識していた。
・同様にほぼ全員が、Z氏がもっとも犯人の可能性が高いと考えていた。
 つまり、現場で捜査をしていたひとたちには、共通認識があり、その後の展開とはまったく違っていたのである。だから、最初の時点でストップが上層部からかかったことを示している。それはZ氏が警察の人間だったからだけではなく、どうやら、かなり秘密を要する重要な任務を遂行していたかららしい。単なる一警察官だったら、警察官による事件であることが公表されることと、それをストップさせて隠蔽が発覚した場合とで、どちらが警察のマイナスが大きいかといえば、明らかに後者である。にもかかわらず、ストップさせたということは、そのマイナス面を考慮しても隠蔽する必要があったということだろう。それで、どの上層部からの指示であるかは、現在では不明だが、事件当初からすでに捜査へのストップがかかり、事件性がないとされてしまった。
 
 しかし、2018年になれば、そういう事情をした人は、大塚署にはいなかっただろう。だから、純粋に書類を検討して、これは事件だと担当刑事が判断し、そして、地道な捜査がはじまったことになる。おそらく、Z氏が犯人であると判断されたような証拠は、もともとなく、捜査中の刑事たちが、そう思っていたということだろう。だから、事件現場の自殺とは思えない状況の記録をみて、熱心な再捜査が開始された。しかし、そのうち、Z氏の存在が当然浮かび上がり、それが警察上層部に、捜査対象に浮かび上がっていることが再度認知された。そうして、警察上層部と自民党上層部との間に意思疎通がなされ、Z氏への捜査が開始されそうな状況になって、ストップをかけられた。二階、菅両氏も、当時は政権を担う立場だったから、警察のスキャンダルが表にでることはさせたかったろう。そして、封印された。当然、身近に当事者がいた木原氏は、重要な役割を担わされた。当時すでに岸田側近だったから、二階・菅氏に巧妙に操られていたとも考えられる。
 
 そして、岸田氏によって政権の中枢を追われた二階・菅両氏は、反撃の機会をねらっており、木原再度のスキャンダルから岸田おい落としを図った。G7の成功で、長期政権になりそうだったから、なんとしてもそれは防ぐ必要を感じたに違いない。もちろん、木原氏の状況は、だれがみても非難されるようなことだったから、当初のキャンペーンは非常にうまくいった。しかし、文春は、事件当時から、Z氏が犯人であると考えられ、そのために隠蔽されたことを、認識していなかったか、あるいはあまり重視していなかった。しかし、事件を追求していけば、どうしても真犯人にいきつかざるをえない。そして、当然Z氏が浮上してきた。そして、大々的にZ氏が話題になってしまった。そこで、警察が組織をあげて、(といっても上層部だが)事件性がないことにしなければならなくなったわけである。そうすると、警察としても、全力で捜査の再開を防ぐ必要があるし、また、政府としても、警察への国民の信頼を喪失することは避けねばならない。そうして、逆に岸田首相の反撃が可能になった。それまでは二階・菅におされていたが、警察と共通利害ができたために、二階・菅路線をおさえこむ道が開けた。だから、岸田首相は木原氏をかばう道を選択しつつある。
 そして、今度は政府自民党と警察をあげて、文春攻撃を強化させつつある。最初は広告をださせないような働きかけである。おそらく、広告代理店に圧力をかければ、かなりの効果があるだろう。広告がなくなれば、雑誌には致命的である。そういう事態が『週刊文春』に進行しつつある。(つづく)

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です