最近のウクライナ情勢

 ウクライナの大規模攻勢が、予想したほどの進展をみせず、膠着状態が続いているように見える一方、ウクライナの汚職報道も目立っている。そして、ロシア内の爆発や火災などが目立つ。鈴木宗男氏が、テレビに出演して、ロシアは負けない、北方領土は、2島以外は日本が正式に放棄している、というような話を、例の口調で「熱弁」していた。
 もちろん、専門家ではないので、正確なところはわからないが、できるだけ情報を集めている。それをもとに、以下、自分なりに想像していることである。

 
 ウクライナは、独立以来、政治的汚職で際立っていた国家だ。だからこそ、西側につきたいという意思が表明されても、西欧として、少々扱いに困っていた可能性がある。NATO加盟について、否定もせず、しかし加盟を促進するようなこともせず、ということから、西側のウクライナ不信は明らかだった。とにかく、西欧派、ロシア派ともども、政治的腐敗はそうとうなものだったというのは、間違いないだろう。そういうところから、国内はあきらかに統一がとれておらず、乱れていた。そこをロシアにつけ込まれたと考えるのは、間違っていないだろう。
 しかし、たしかにゼレンスキーになって、少しずつそうした汚職体質も若干弱くなってきたのではないかという印象がある。そもそも、ゼレンスキーは、人気俳優であり、かつ企業経営者だったから、資産は充分あるようだし、とくべつ汚職をする必要がない。そして、ロシアとの戦争という事態に直面して、少なくとも、自身とまわりの人間は、汚職で財産を築こうなどという意識よりは、国難をどう克服するかに頭が一杯になっているはずである。そして、ほとんどの国民もそうだろう。だが、それでも、ごく一部の人間は、欧米からの莫大な支援を横流しして、腐敗した状態になっているといわれてきた。だから、何度か、ゼレンスキーによる汚職摘発と追放が報道されてきた。長年の悪弊だから、一朝一夕でなくなるはずもないが、それを許さない政治指導があるから、改善されていくに違いないと期待せざるをえない。
 
 さて、戦況だ。これも報道によって力点が違うが、私は、少しずつウクライナの攻勢の効果があらわれ始めているように感じている。それは、ロシア兵のなかで、逃亡する兵が増加しているとされているからだ。なんといっても、ロシア兵は自分の国から、遠く離れた故郷から連れてこられて、意味のわからない戦闘を強要されている。当然士気は低い。それに対して、ウクライナ兵は自分たちの国を守り、占領されているところを取り戻すために闘っている。こういうなかで、これまで数と火器で圧倒してきたから、ロシアは攻勢に出られたし、また、ウクライナの反転攻勢のなかでも、とりあえず踏ん張ることができた。しかし、どこかが崩れてしまえば、それは情報として伝わるだろう。そして、この間のウクライナの戦略は、兵站とそのルートを攻撃することで、ロシア兵への補給を困難にする作戦をとって、占領しているロシア兵を孤立させることだった。食糧は占領地域から略奪することができても、弾薬は無理だろう。そうすると、孤立していているという感情と、反転攻勢で相手の勢いを感じたら、恐怖に駆られるはずである。そこで、脱走が始まる。そして、それは当然連鎖していく。今、そういう状況になりかかっている時点ではないだろうか。
 
 鈴木宗男は、ロシアはこれまで負けたことがない、といっていたが、それは二重の意味で間違っている。ひとつは、実際にロシアの前身であるソ連は、負けたことがある。10年間アフガンに侵攻して、結局破れて、全軍が引き上げ、そして、破れただけではなく、この敗戦が大きな要因となって、ソ連そのものが崩壊してしまった。
 また、負けたことがないというのは、おそらく、祖国戦争(対ナポレオン戦争)と大祖国戦争(対ヒトラー戦争)が念頭にあると思うが、これはいずれも、侵略されたのであり、侵略軍を追い出した闘いである。現在のウクライナ側と同じ立場なのである。そういう意味ではロシアは確実に敗北する。あわせて、ロシアほどの大国が負けるはずがない、とも語ったが、アメリカがベトナムに敗れたことでわかるように、どんなに大国であっても、侵略戦争に勝つことは、現代社会では不可能になっているのである。そういうことは、少しの歴史的知識でもわかることだ。
 
 それほど遠くない時期に、ロシア兵の大規模な崩壊がおきるのではないかと思われる。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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