激変しつつあるウクライナ情勢

 ウクライナ情勢が、動きつつある。いろいろと変化がでてきた。その多くは、いい徴候だ。
 バフムトで、ウクライナが少しずつロシア軍を後退させつつあるようだ。ここはロシア軍が大量に兵力を動員して、守ろうとしているところだから、簡単にいくとは思えないが、三方から包囲して、ロシア軍を囲い込んでしまおうという作戦が、少しずつ前進しているようだ。ワグネルは、そうした動向を早く察知したために、おそらく逃げたのだろう。そして、一方、現政権に反抗しようとしている雰囲気がでている。ワグネルが退却しているところに、地雷があったということで、ロシア兵を捕らえたと報道されている。ロシアのもっとも精鋭であるワグネルが、ロシア兵を捕らえるというのは、もちろん、重大な変化がおきていることを示している。
 
 ウクライナに協力するロシアの義勇兵たちが、ウクライナから国境をこえて、ロシアに侵入し、第一回目はすぐに引き上げたが、二回目は、留まっているようだ。そして、まだ小さな地域とはいえ、占領したといわれている。プーチンは、こうした動きを国民に悟られなたくないので、沈黙を守っていて、有効な反撃態勢をとらないでいるようだ。それはモスクワ近郊へのドローン攻撃についても、似たような反応をしている。

 
 そして、ついにというか、ロシア各地で、プーチンに反対する抗議デモが多数起きたという。逮捕者も多数でているが、抗議運動と治安部隊の根比べのような状況になることが期待される。もっともかなり期待薄ではあるが。治安部隊のなかに、抗議行動への共感ムードが広がれば、一気にムードは変ってくる。とくに、周辺共和国は、モスクワ大都市の青年たちが徴兵されずに、自分たちが主に徴兵されていることに対して、怒りを感じてくれば、いつか態度が変わる可能性はあるだろう。
 そして、その前に、反乱をおこす部隊がでるかも知れない。正規軍ではなくても、ロシアには、現在30をこえる傭兵組織があるそうだ。もともと、大規模な工業施設をもっているような企業家が、施設を護るために、傭兵を組織していたというが、ウクライナ侵略後、そうした私的軍隊が増えてきたという。ショイグ国防大臣すら、私兵をもっているというのだから、不思議な国だ。そうした傭兵は、正規軍よりは、反乱を起こす可能性は、ずっと高い。少しでも反乱の動きがあれば、同調し、われこそ権力を握りたいと動き出す雇い主がでてくるに違いない。そして、現在のウクライナ状況からみれば、とうてい、そうした反乱を鎮圧するための充分な余力が、正規軍に残っているようにも思えないのである。
 
 ウクライナ軍の攻撃も、長距離ミサイルをえて、前線から離れた兵站基地を狙った攻撃が目立ってきた。もちろん、それはロシア領土内も含まれる。アメリカは、そうしたロシア領土内への攻撃に対して、抑制的だったが、イギリスなどの積極的支持が強まって、アメリカも消極的容認になっている。そもそも、あれだけロシアが、ウクライナの市街地を無差別に攻撃して、多数の被害をだしているのに、そうしたミサイル基地を攻撃するなというのは、身勝手な言い分だろう。兵站をたたいて物資を補給できなくなれば、やがてロシア兵は退かざるをえなくなるのだ。だから、兵站は、どこにあろうと、攻撃できるようにすべきである。徹底的に補給をたてば、闘わずして勝つこともできるはずである。実際には、そうはいかないのだろうが、だから、戦闘機と長距離ミサイルこそが、ウクライナへの必要な援助である。
 
 しかし、いまのような状態で、いくら兵站を攻撃し、また、地上戦でロシア軍に対して有利に戦闘を行っても、ロシア軍が退却させるまでには、かなりの期間が必要だろう。あるいは、何年もかかるかも知れない。状況の決定的転換は、やはりロシア国内での反乱、プーチンの暗殺等によって、現政権が倒れることによってのみによって起こると考えられる。プーチンが去っても、もっと強硬な政治家がでてくるともいわれている。おそらくそうだろう。プーチンが平和裡に退陣し、その継承者が、もっと強硬な政策をとろうにも、実際にはできずに、より大きな混乱が生じて、本格的な混乱状態にならざるをえないと思われる。そうして、戦地のロシア兵たちは、どんどんロシア領内に逃げていく、というシナリオが、ウクライナ解放のもっともありうるシナリオではないか。
 したがって、現在のウクライナと強力して、ロシア人の義勇兵たちは、極めて重要な働きをしていることになるし、ロシア軍によって、鎮圧されないことを期待したい。そうした動きが、呼応してベラルーシでも起きれば、さらによい。
 
 新しいニュースとして、ザポロジエ原発に冷却水を供給しているダムが攻撃され、決壊したという。その写真もニュースにでているが、かなりの勢いで、水が流れだしている。ニュースによると、ウクライナとロシアの双方が、相手に適任をなすりつけているということだが、はっきりしていることは、この地にロシア軍がいるということ自体が、極めて許しがたいことであって、そのために、戦争がおきていることが、考える基本であろう。また、常識的に考えれば、ロシア軍が、ウクライナによる反攻を防ぐために行ったということだろう。あきらかに、ダムの決壊による水浸しによって、ウクライナ軍の進行が妨げられる。日本の専門家とおぼしきひとの解説によると、原発はかなり前からとまっているので、冷却水がやがて不足する事態になっても、福島原発のような危機に陥ることはないそうだが、それが正しい見方であることを信じたいところだ。
 とにかく、ロシア軍が早く撤退せざるをえないようになることを願うばかりだ。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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