ジャニーズ問題の一側面

 BBCが昔のジャニー・喜多川氏による性加害問題を報じたことで、日本でも、ついにという感じで、大きな問題になっているようだ。私自身は、この分野(音楽・ドラマ)にまったく興味がなく、学校の音楽の時間に習うらしいスマップの歌も、年代が違うこともあり、まったく知らないのだが、私自身は、多少ななめからこの問題を考えている。それは、端的にいって、ネット対テレビという勢力争い、あるいはネットによる告発対テレビによる既存勢力の防衛戦といったらいいだろうか。(性被害問題については、被害者救済の措置がとられるべきことは当然なので、ここでは論点とはしない。)

 テレビでは、ほとんど報道していないから、この件に関しては、圧倒的にネットで議論されている。しかし、大手メディアが、特にテレビがこの問題を報道しないのは、ジャニーズ系のタレントで番組が成り立っているからだ、とされているのは、少々疑問である。それは確かにひとつの理由だろうが、もっと大きな問題があるように思われる。それは、別に私だけの見解ではないが、テレビ業界が、この手の問題をたくさん抱えているからだ。あるドラマに出演させるかどうかを決めるときに、その番組に影響力をもっているスタッフが、候補者に関係を迫るようなことは、よく話題になっている。そうしたことが、ないとは考えられない。つまり、ジャニーズ事務所とテレビ業界は、同じ穴の狢なのである。だから、報道しないのだ。報道したら、お前のところはどうなんだ、ということに、必ずなってしまう。テレビ側にしても、あれはジャニー・喜多川という、有能ではあっても、とんでもない性癖の持ち主の、ごくごく特殊な事例であって、一般的なことではない。しかも、本人がなくなっているのだから、取り上げてもしかたない、という姿勢をとったほうが、自らに火の粉が飛んでくることを避けるためにも、賢明だと思っているのだろう。
 
 他方、ネットは個人のばらばらな集積だから、個々人にはいろいろな事情があるとしても、みずからが後ろめたい状況を抱えているわけではない。だから、自由にものがいえる。そして、正義の立場にたつことができる。しかし、現時点では、所詮それは、個々人がばらばらに勝手に意見をいっているに過ぎない。現時点では、テレビや新聞のほうが、社会的影響力は圧倒的に大きいだろう。そして、問題によっては、ネットにおける扱われ方と、テレビや新聞などでの扱われ方が、まったく正反対であることも、めずらしくない。それが明瞭に現れたのが、小室圭-真子内親王の結婚問題と、それにからむ秋篠宮家への評価である。チャールズ三世戴冠式に、秋篠宮夫妻が出席したわけだが、大手メディアは、皇室外交をりっぱにやりとげ、皇太子待遇では一番前の席を割り当てられるなど、優遇されたことが明瞭だ、と報道していたが、ネットでは、皇室外交の成果はほとんどなく、となりに座っている他国の皇太子たちとは、ほとんど話もせず、雨もあったが、紀子妃の和服はあわれに乱れ、皇太子格の席は一列しかなかったから、優遇などというものではまったくなかった、と散々なのである。どちらが正しいかという問題よりも、これだけ正反対の見方をしているということだ。
 
 こういうブログを書いているし、また、食事のときにしかテレビなどみない、そして、新聞はとっておらず、ヤフーニュースや新聞データベースで読んでいるから、完全にネット民に属する。しかし、いかにネットで秋篠宮の評判が悪くても、彼が廃嫡され、皇統が現天皇のほうに維持されることは、あまり起きそうにない。つまり、国民の意見といっても、世論調査とは違う、メディア見解が秋篠宮を守るからである。
 しかし、この関係は、ずっと維持されるだろうか。
 このジャニーズ事件をめぐる結果が、大きく左右することになると思う。というのは、ジャニーズ事件の要素は、とくにテレビ業界は、ひろく同様に抱えており、ジャニーズ事務所が、社会の批判におれて、社長が辞任したり、あるいはさらにドラスチックに事務所そのものが解体してしまうようなことがあれば、当然、テレビ業界にも監視の目がいくはずだからである。
 立憲民主党が積極的に取り上げ、官房長官が記者会見で触れたことは、このままジャニーズ事務所(社長)やテレビがこのままやり過ごせる状況ではなくなってきた。これも、ネットでの批判活動の影響をぬきには考えられないだろう。
 ネット空間は、一種の言論空間である。言論には自由がもっとも大切だ。そういう意味で、いろいろな弱点や問題発言があるとしても、ネットこそ、より優れた言論空間であると思っている。そして、言論の力が、問題を解決させることになることが望まれる。その意味で、ジャニーズ問題は、これだけにとどまらない形で、ネットの力が発揮したいものだ。
 

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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