楽観できないウクライナ情勢

 ウクライナ側の反転攻勢の話題が盛んになっており、既に始まっているとか、バフムトで逆転しつつあるような報道がなされているが、気になることもある。毎日の軍事・戦況状況を報告するyoutubeのサイトで、ウクライナの弾薬庫が大々的に攻撃されて、爆発したとされていた。これは、おそらく初めてのことではないだろうか。ロシア側の攻撃能力が改善されているという面もあるだろうし、そもそも、これまでなら、ウクライナ側が弾薬を一カ所に多数保管しておくことはなかったように思うのである。ウクライナはロシア側の弾薬貯蔵施設を何度も攻撃しているのに対して、ウクライナは、弾薬等を小分けにして、分散保管しているから、たとえ攻撃されても、被害が少ないといわれていたはずである。それが、かなり大規模な集積所に保管してあり、そこが攻撃されたというのは、今後の反転攻勢にかなりマイナスである。

 前に書いたが、西側の調査団がウクライナの軍事状況をみて、若い欧米式の軍事知識をもった将官たちが、かなり戦死してしまい、ソ連流の教育をうけた退役将校たちが駆り出されており、それが、古くさい感覚で指揮している部分では、うまくいっていないところが散見されるということだった。もしかしたら、兵站を小分けにするというのでなく、古い将官たちが、兵站の設置についても、安易なやりかたを実行しているのかも知れない。この弾薬は、反転攻勢のために、欧米が援助したものであることは明らかだから、援助した側にとっても、そんな安易な管理をしていたのかという不信感を起こさせかねないし、また、攻勢の実行もかなり鈍らせる危険性がある。
 もっとも、ロシア側の弾薬庫が爆発したという情報もある。
 またバフムトの戦況も一進一退のようで、ロシア軍も激しく攻撃しているようだ。
 
 事実はわからないが、ロシアは米国がウクライナに供与したパトリオットをミサイルで破壊したと公表し、ウクライナは、同日、ロシアのすべてのミサイルを撃墜したと発表している。ウクライナの報告のほうが、詳しいし、欧米の技術でロシアのミサイルに対抗できることがわかった、とまで述べているから、ウクライナの発表が正しいように思われるが、確定的なことはわからない。
 
 そして、相変わらず、旧東欧諸国を除いて、NATOは、戦闘機の供与を渋っている。彼らの懸念は理屈としてはわかるが、早く終わらせるためには、戦闘機と射程の長いミサイルが必要であり、それがなければ、戦闘が長引くだけだ。極端にいえば、ウクライナとしては、ロシア兵を追い出せばいいのであって、戦闘で殺傷する必要はない。そのためには、後方までの兵站を徹底的に叩けば、数カ月で占領軍は退却せざるをえなくなるのだ。しかし、それでは、兵器の消費や兵器性能の調査に支障があるとでも考えているのか、と疑いなくなる。戦闘が長引けば、一番の被害者はウクライナだが、欧米も経済的負担が深刻になるはずだ。早く、戦闘機と長距離砲弾を供与して、戦争を終わらせてほしいものだ。ロシア兵を完全に撤退させることによってしか、戦争は終わらないのであり、長引けば、結局、ロシアによる占領の既成事実が固定してしまうのだ。いろいろと協議はされているようだが。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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