またまたマイナンバー・カードにおかしなことが

 マイナンバー・カードが新しくなるというニュースが、16日夜に流れると、17日朝に既にヤフコメが5000以上になっている。
「【独自】“新”マイナカードを検討 政府 2026年視野に」https://news.yahoo.co.jp/articles/a6247294503fae4d872532a6886a270ace28d94b
 記事は、カードに顔写真等の個人情報が記載されているので、載せたくないという声に配慮するのだそうだ。こうした政府のいっていることや、それを伝えるメディアは、本当に問題を掘りさげていない、あるいはしているのにそれを公表しないことがわかる。こうしたニュースだけ読んでいても、まったく問題は理解できないだろう。ヤフコメなどは、馬鹿にする専門家もいるが、けっこうその分野の専門家も書いており、また、様々な観点からの意見が載せられているので、記事よりは、ずっと掘りさげ可能である
 
 最も重要なことはマイナンバーをどう構築するのかであって、カードはそのインターフェースに過ぎない。しかし、ニュースで語られることは、ほとんどがマイナンバー・カードのことであって、その基礎となるマイナンバーではない。そもそも、カードでなくても必要な情報にアクセスすることは可能なはずであり、機器やシステムの発展によって、インターフェースの形も変化していくことは当然だが、インターフェースだけが議論になって、その展開が示されるというのは、まったく本末転倒である。マイナンバーが決められたときに、全員に通知があった。その通知のなかに、マイナンバーの確認方法が明示され、それによってマイナンバーの機能が活用できるようになっていれば、カードはなくてもマイナンバー制度は機能する。
 しかし、マイナンバー・カードをもっていないとできないような宣伝がなされ、他方でカードを取得するとポイントがもらえるなどという、姑息な手段が用いられて、カードの普及にやっきになっている。そして、まったくおかしな、というより、マイナンバー制度そのものを壊しかねない方法をとっている。健康保険証機能を組み込み、マイナンバー・カードがないと、健康保険が利用できなくなる、などというのがそれである。調査によれば、マイナンバー・カードをつくる意思がないと答えている人が4割もいるのだから、もし、本当にマイナンバー・カードをもたないと健康保険を使えなくなったら、大混乱が起きる。そんなことを強硬できるはずがないのだ。そうやって、次々と新しい分野を開拓して、マイナンバー・カードをもっていないと、これができなくなると発表しているが、実際に、多くの国民がもっていないマイナンバー・カードに対して、それがないとサービスが受けられないようにすることなど不可能である。
 
 身分証として使えるということになっていたが、今回の改定では、写真などをのせないという。それでは身分証明書としての機能を果たせなくなる。もちろん、身分証確認をするために、いちいちサーバーにアクセスするのであれば、身分証として活用できるだろうが、現在免許証で本人確認するときには、ほとんど写真や住所、氏名、生年月日を、そこに印刷されている情報で、視認で確認している。マイナンバー・カードを身分証明として使うためには、やはり、写真や個人情報が書かれていることが必要であろう。そうすると、多くの苦情によって、個人情報を載せないことになると、通常行なわれている本人確認が、マイナンバー・カードではできなくなる。健康保険証や免許証としての確認きためのツールとしても、活用できなくなるに違いない。
 
 なぜそのようなことが起きるのか。
 それはマイナンバーをどのように活用するのかが、きちんとシステムとして政府において、コンセンサスがないからである。そこに様々な利権が入り込んでくる。マイナンバー・カードが実施されれば、読取機など、多くの機材が必要となる。新しい分野が、マイナンバー・カードに取り込まれれば、更に、機器の必要性が高まる。それは大きな利権である。他にもあるだろう。利権がからめば、かならずものごとが歪んでいく。そして、機能しなくなるし、本来あるべきことが頓挫してしまう可能性が大きい。
 
 日本の政治家は、本当に必要なことをきちんと制度設計することができなくなっているのだろうか。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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