ウクライナ戦線は膠着状態が続いているが、2月3月になると大きな戦闘が行なわれると予想されている。そうしたなか、森元首相が、「ロシアが負けることはない」と述べ、更に鈴木宗男氏が追随する発言を繰りかえしている。森氏の発言の紹介は、「森元首相「ロシアが負けることは考えられない」発言に大ブーイング「立ち位置が不適切」「さすがプーチンのお友達」…官房副長官も “反撃”」
であり、鈴木氏は、「鈴木宗男氏 森喜朗元首相に同調「私も国力から見てロシアが負けることはないと考える」」
である。
ふたりは、ともに北方領土解決のために努力した事実はあり、プーチンともパイプをもっている。おそらく、今でもそうしたプーチンとの友好的関係を土台に発言しているのだろうが、状況の変化を認識できないのか、もともと、プーチンとの交渉自体か砂上の楼閣だったのか。おそらく、両方だろう。それはともかく、両氏が今回述べたことは、以下のように整理できる。
・ロシアは負けないし、もし負けたとしたら、大変なことになる。
・せっかく日露の改善に努力して積み立ててきたのに、ウクライナにこんなに肩入れしていいのか。(以上森)
・プーチンだけ批判するのは間違いで、ゼレンスキーも国民を苦しめている。
・ウクライナとロシアのどちらが日本にとって重要なのか。(ロシアだという含み)
現時点でも、こうした見解を堂々と述べることができるというのは、それなりに肝が据わっているといってよいのかも知れない。しかし、誰がみても、ウクライナ人を苦しめているのは、プーチンとロシアであって、ゼレンスキーではない。ウクライナ国民の8割は徹底抗戦を支持しているのだ。なかには、ロシアの言い分を受け入れてもいいではないか、と考えている人もいるだろうが、国民の圧倒的多数は、ロシアの言い分を認めれば、単なる戦争終結ではなく、残虐なロシアによる支配が待っていると考えているに違いない。各地で実行された虐殺や、民間インフラを狙ったミサイル攻撃などでわかる。人間がやっていることだから、ゼレンスキー政権にもいろいろと問題はあるだろうが、現時点では、プーチン「だけ」を批判することが正しい。
いかに、森、鈴木両氏が、事態の推移をみていないは、キッシンジャーですら、当初ウクライナは占領された州を、ロシアに割譲してでも停戦に応じるべきだと述べていたのが、今でも割譲論は引っ込めていないとしても、その領域はかなり縮小して考えている。もう少したてば、キッシンジャーも、ロシアの撤退が停戦の条件と考えようになると、私は推測している。
鈴木氏のロシアとウクライナのどちらが日本にとって重要か、という点での認識には、驚く人が多いに違いない。ロシアは、緩い協調国家は少数あるが、ほぼ国際的に孤立している。ベラルーシですら、大々的な協力は控えている。それに対して、ウクライナは、欧米諸国が真剣に応援している。自分たちにとって、かなり不利な状況(エネルギー不安)にもかかわらずの支援である。つまり、重要度の選択は、ロシアとウクライナなのではなく、ロシアと欧米諸国(ウクライナを含む)のどちらが、日本にとって重要なのか、という問題である。答えは明らかである。森氏や鈴木氏は、欧米と対立しても、ロシアとの協力関係を維持すべきであるとまで言うのだろうか。
鈴木氏は、ロシアが負けたら大変なことになるという。大変なこととは何なのか。核戦争だといいたいのか。核戦争にならないことは、アメリカが明言している。ロシアが核兵器を使っても、NATOは核を使わず、通常兵器でロシアを徹底的に叩きのめすと言っているのだから、それは核戦争とはいわない。しかし、その場合、滅亡するのはロシアだろう。
私は、ロシアか敗北して、ロシアという国家が分裂して、ロシア共和国自体が小さな国家になり、国連の常任理事国の継承を認められなくなることを望んでいる。これは、ロシアの敗北なしには実現しないから、ぜひそうなってほしいと思っているし、また、同様に願っている人も少なくないだろう。それほど、ロシアがやっていることは酷すぎる。
両人の言い方は、乱暴なことをやってきた暴力団に対して、警察になど訴えるのではなく、暴力団のいうことをきくべきだ、と言っているようなものではないだろうか。
重要度の選択は、ロシアとウクライナなのではなく、ロシアと欧米諸国(ウクライナを含む)のどちらが、日本にとって重要なのか、という問題である。
とありますが、どちらかを選ぶのではなく、どちらともつきあっていかなければならないのが日本の地政学的な立場だと思います。森元首相や鈴木氏のようなロシアとのパイプを持っている人を叩いている場合ではなく、彼らの力を上手く使いこなす政治家や実務家がいないことが日本の問題だと思います。
コメントありがとうございます。おっしゃるように、ロシアを切り捨てることは間違いですし、また、「選択」が、どちらか一方に属するという意味では、あってはならないことだと思いますが、重要度という意味では、明らかに、欧米諸国であって、森・鈴木両氏のように、ロシアが重要だというのは、やはり批判されることなのではないかと思います。どちらともつきあっていかなければならないというのは、その通りでしょう。日本の問題だとおっしゃることについては、本当にいないのかどうかは、私には断言できませんが、少なくとも、お二人がそうした実力をもっている人のようには、私には思えないというのが、正直なところです。