いじめアンケートの目的と方法
実は、いじめアンケートは法律で年3回実施することが義務付けられているが、内容は教育委員会や学校に任されている。だから、アンケートの内容、種類、回収方法、取り扱い方法などは、かなり多様なようだ。
新聞報道によると、野田市の場合、アンケートには、「秘密は守ります」と書かれていたのだそうだが、すると、教育委員会にアンケートが保管してあり、教育委員会では内容が読まれるようになっていることになる。それは、「秘密」の範囲だとは、書いた人にとっては思えないだろう。学生たちと討論しているうちに、いろいろな疑問が生じてきた。
・アンケートはどのように処理されるのか、誰が集計するのか、誰が読むのか。それについて、実施段階で明示されているのか。
・保護者に知らせるのか。今回のように、保護者が加害者である場合は、どのように処理されることが想定されているのか。
・担任の教師、あるいは、生徒指導の教師が加害者である場合は、どう処理されるのか。
・児童、生徒は、これをまじめに書いているのか。
・スクールカウンセラーは、どう関わっているのか。
等、様々な疑問がある。
アンケートを構想した段階では、加害者は、学校内部の子どもであるという想定だったのだろう。しかし、野田の事件では、加害者が父親であるという想定外の事態だった。当然、父親を「生徒指導」することはできないから、学校は、福祉当局に通報した。これ以降は、学校の管轄外だから、ここでは除外するが、しかし、親にどのように連絡し、関与してもらうのかという問題は残る。もし、秘密であることを明示してあるならば、親に対しても、連絡しないと子どもは理解するだろう。何故父親は知ったのだろうか。
また、教師による体罰やハラスメントを受けている場合はどうなのか。アンケートは、書いたらそのまま袋にいれるので、担任がアンケートを配布して書かせるが、担任はその段階では読まないのが普通らしい。しかし、ほとんどの者は、担任は読むだろうと、書く側は考えている。実際に、ほとんどの学校では、担任が一次集計をすることになっている。そして、何か問題があれば、生徒指導担当や管理職に報告されるという扱いになっているようだ。生徒たちは、そのように解釈している。そうすると、やはり、担任や生徒指導担当教師が、加害者である場合は、書くことができないだろう。
それに対応するために、複雑な方法をとっている学校もあった。担任が読むアンケート、生徒指導教師が読むアンケート(担任は読まない)などに分けているという。なるほどとは思うが、かなり大変だし、教師にとってのストレスが大きくなるだろう。
そこらがどのように情報開示されているのか、比較的きちんと開示しているように思われた広島県の資料をみてみよう。
子ども用のアンケート内容の案である。記名か無記名かは学校で判断するように指定してある。
次に保護者アンケートである。
アンケートに付随する説明書がある。調査についての説明としては、
・全保護者に対するアンケートである
・学校と家庭が協力していじめ問題に取り組むことを目的としている
・指定の封筒に封をして子どもを通じて学校に提出する
・集計結果は後日連絡する。
・質問の問い合わせ先
更に、別紙で、「いじめ発見のポイント」(家庭用)が配布されている。
・口数がすくなくなり、学校や友達のことを話さなくなる
・食欲不振になり、考え事をしている時間が増える
・学習時間が減ったり、宿題や課題をしなくなったりする
・学校への通学の時刻になると腹痛等身体の具合が悪くなる
・感情の起伏が激しくなり、動物やもの等にやつあたりする
・衣服に汚れや破れが見られ、手足や顔等に擦り傷や打撲の跡がある
・家庭から品物、お金がなくなる。使途のはっきりしないお金をほしがる
「いじめアンケート調査」の実施について、という文書による、留意点が示されている。記名については、一長一短あるので、どちらにせよとの指示はしないない。調査は速やかに校長に報告し、個別面談など、早期発見、早期対応に取り組む。教職員観で情報を共有し、保護者に対応策を説明、重篤な場合は教育委員会に報告し、必要に応じて、警察等の機関と連携を図るとしている。
以上のような説明を見ると、次のような処理スタイルがわかる。現場の教師に聞いた話ともだいだい合致している。
「秘密を守る」というような言葉は、通常のいじめアンケートにはなく、担任がざっとみて、いじめがあると回答した事例を集約して、校長なり、いじめ担当の教師に報告する。学校として、どのような体制をとるかは、学校によって異なるだろうが、まずは担任が対応し、学校としてバックアップする。文科省が統計をとっているから、数値については、教育委員会に必ず報告しているはずである。