最近、ラジオやテレビのコマーシャルで、払いすぎの利息を取り戻せるという、弁護士事務所のものが非常に多い。特に車の運転中にラジオを聞いていると、1時間に1度は必ずその種のコマーシャルが入る。私自身は、カードローンやリボ払いを利用したことがないので、そうした種類の利息を払ったことがないから、過払い金などはないのだが、こうしたコマーシャルを聞いていると、考えさせられることが多い。
まず、何故そんなに過払い金が生じるのかということだ。現在こうした「借りたお金(=貸したお金)」に対しての利子は、法律によって上限が決まっている。もちろん、過払いが生じている「貸し手」は、銀行やカード会社等のきちんとした企業である。だから、弁護士から正規の手続きで返還を求められたら、そうするわけだ。だが、昔のサラ金ならいざ知らず、銀行が利息を法定利息分以上にとってしまうことがあるのだろうか。
正確な仕組みはわからないが、上限利息は、貸し付け額によって変動する。従って、カードローンにしても、リボ払いにしても、利用額が増えていくと、途中で利息が高くなってしまう。その変動過程における利息計算が、正確に行なわれないということなのかと、考えてみたが、計算式はきちんとしているはずだから、多額の過払いが生じるというのも、やはり不可解である。
第二に、コマーシャルでは、かならず、どのカードで発生しているか、いつどのくらい借りたか等々が分からなくても、過払いが生じているかがわかると説明している。ということは、個々人のカード利用状況、返済状況などが、一括したデータベースになっていて、特別な資格、例えば弁護士などは、そのデータベースにアクセスできるということになる。本人ですら分からないことが、調べられるということは、そうしたデータベースが存在していると考えざるをえない。このデータが、誰かの不正によって売られるとか、あるいは不正な侵入によって漏れることは、当然考えられる。権力機関が、データベースを活用することもありうるだろう。不正に使われなくても、そうした集積データが存在していること自体か、なんとなく気味が悪いではないか。
第三に、この手のコマーシャルが頻繁に行なわれており、しかも、複数の法律事務所が事業をしていることは、実際に過払い金の取り戻しがたくさんあり、営業として大きな利益をあげているということだろう。完全に成功報酬方式で、過払い金が戻った場合に、その3分の1を事務所がとる以外、調査依頼等への支払い義務はないという。人件費と調査費用に、コマーシャル費用がかかるわけだから、かなりの収益があると考えられる。
逆にいえば、かなりの高利だと思われるが、そうしたローンやリボ払いを利用する人が、たくさんいるということでもある。私からみると、いかにも無駄なことをやっていると、残念な気持ちになる。過払い部分が返還されたとしても、合法的利子分そのものが、かなりの額になっているはずである。リボ払いなどを使わないのは、お金があるからではなく、お金がなければ買わないからである。
莫大な過払い金が生じているらしいこと、その取り戻し事務を実施している弁護士事務所が、かなり利益をあげているらしいこと、こうしたことは、健全な社会のあり方のようには思われない。