関ヶ原古戦場記念館

 現在、群響演奏会を皮切りに、九州までの旅の最中だ。高崎、関ヶ原と。昨日、関ヶ原の古戦場記念館を見てきた。今でも、関ヶ原という地名は、関ヶ原の天下分け目の闘いと結びついて記憶されているし、関ヶ原という地域でも、闘いは重要な町おこしの資源になっているようだ。至るところに、各武将の陣屋跡があり、合戦の指標などが記されている。そうした合戦資料の中心がこの古戦場記念館だ。1階がシネマ場、2階が資料展示、5階が展望コーナーだ。
 まず、シネマについては、まったく感心しなかったし、むしろ腹がたったほどだ。
 ふたつの部屋を使い、最初は立ったまま床に映し出される映像をみるというもので、関ヶ原の闘いの各部隊の動きをみせるだけのものだった。ほぼ定説にそったもので、別段興味を引くものではなかった。むしろ、何故床に映して、立ったままみせるのか。その利点がまったわからない。360度囲むように立っているので、半分近くの人は、逆さまの映像を見せられることになる。

 それが終わると次の部屋に移動して、ここには座席がある。ところが、大きな不手際があった。移動してきた順に、自由に席に座っていたのだが、車椅子のひとたちが5,6人遅れてきて、係の人が、前に座っているひとたちに、譲ってくれといい、車椅子のひとたちが最前列に座ることになった。もちろん、みんな気持ちよく譲ったのだが、係員のひとたちが複数いて、案内していたのだから、最初から車椅子のひとたちがいるので、最前列はあけてくださいと、アナウンスしておけばよかったのだ。多すぎるほどのスタッフが現場を仕切っていたのに、効率の悪さやこうした不手際が目だったのが残念だ。
 そして、肝心のシネマだが、これが酷かった。合戦の場面が、CGで描かれるのだが、あまりリアリティがなく、そして、バカでかい音をたてている。そして、大きな音がするときには、座席がズンズン揺れるのだ。始まる前に振動がいやな人は、振動しない椅子もあります、などどいう説明があったので、何だろうと思っていたら、これだった。子どもだましみたいで、当日は高齢者が多かったためか、少々あきれている雰囲気だった。
 合戦の様子についても、日本の当時の合戦で、騎馬隊が、まるで西部劇のように失踪して攻め込むなどということはなかったことが明らかなのに、大騎馬隊が突っ込んでいくような場面がたくさんあって、少々うんざりした。せっかく映像でみせるのだから、実際の様子を再現するのが、記念館の役割ではないだろうか。
 
 2階の資料館は、さすがに、充実していた。本物かどうか、少々疑問だったが、有名武将の甲冑が展示されていたり、また、関ヶ原の歴史を記した分厚い古い本など、興味深いものが多数あった。火縄銃や日本刀が、触って、持ち上げられるような形になっていて、(もちろん、保護された形で)触っている人もいたが、どうも、展示物に触れてはいけないという感覚になりきっているのか、また、触ったところで、たいしたことはないと思ったか、私は、ただ眺めるだけだった。
 
 よいと思ったのは、5階の展示コーナーだ。建物が関ヶ原盆地の中央あたりに建っているので、まわりを囲んでいる高地から低地になっていく様子が、ほぼ360度見渡すことができ、各大名たちの陣地がパネルで示されている。だから、どの隊がどのように降りてきて、どこで闘ったかというのが、なんとなく感じられる。ただ残念だったのは、エレベーターがふさいでいる部分があることだ。エレベーターを部屋の真ん中にもってくれば、文字通り360度見渡すことができる。エレベーターで隠された部分には、陣地はなかったのかも知れないが、街道などがあって、兵隊たちがこのように通ってきたのだ、ということがわかったのではないかと思うのだが。
 
 
 
 
 
 もうひとつ運営に関して。
 展示館のなかでは、非常にたくさんの人員が配置されていて、とても親切に説明してくれるのだが、シネマの誘導などは、無駄が多い感じがした。まず、シネマは30分ごとに行われていたが、予約が必要とホームページには書いてあった。しかし、別に予約が必要なわけではなく、上映の部屋に入る順番が先だというだけのことで、他には何も特典があるようにも思えなかった。そして、予約者と当日申し込み者と区別しているために、それぞれ人員が配置され、しかも、もっているチケットが違うので、別々に人数チェックする人もいた。予約制などにせず、チケット販売のところで、人数チェックをしておけばいいだけのことで、無駄なことをしているなあ、という感じがした。
 
 関ヶ原の合戦については、現在でも論争が続いており、歴史の転換点であったことは間違いないから、興味をもって訪れた人にとっては、現地で確認できるので、見る価値のある記念館であることは確かだ。そういう論争点にもう少し踏み込むような展示があると、もっと興味深くみることができると感じた。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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