統一教会に押し切られた会見

 本日8月10日の3時から1時間半、外国人記者クラブで、統一教会田中会長の記者会見があった。開かれた経緯は、よくわからないが、記者クラブのほうで、統一教会の問題を明らかにしたいと思って招待したのであれば、まったく意図と反する結果になった。ほとんどが田中会長の独壇場といった感じで、統一教会の主張に席巻された印象である。
 ライブをずっと見ていたのだが、(テレビでは途中でコマーシャルになったので、そのあとはyoutubeで最後までみた)テレビ画面に、鈴木エイト氏の言葉がでて、「統一教会が被害者であるという印象を与える会見になる」と危惧していたが、その通りになったといえる。

 
 会見は、まず田中氏の説明が約一時間あり、そのほとんどが、今回の騒ぎで統一教会員が、様々な被害にあっているという話がたくさん語られた。自分たちが被害者であるという印象操作だ。そして、かつて統一教会が一般市民に被害を与えたこともあったが、それは2009年以降、コンプライアンスを重視したために、激減し、現在ではほとんどない。それに対して、信者に対して、不当な取材をしたり、家族に暴力を加えたり、信者の子どもをいじめたりという被害が多数ある。率直にいって、こんな会見なら、やらないほうがよかった感じがするし、主催者たちの準備不足か、あるいは統一教会を甘く見ていたのではないかと疑問に思ってしまう。
 とりあえず、いくつか質問への回答も踏まえて、気になった点をまとめておきたい。
 
 まず名称変更についてだ。
 「世界平和統一家庭連合」という名称変更について、政治的圧力があったのではないかという問題について、以下のように述べていたと思う。
・名称変更については、形式的に整っていれば、認めなければならないものであるのだが、当初、文化庁が、認めない対応をしたときに、争うことは好まないので、大人しく引き下がっていた。
・その後もなんども交渉したが、そのまま続いた。
・名称変更は、文鮮明の当初からの意思であり、その意思を継いで願い出ているものである。
・2015年には、強い決意で望むことにして、もし認めないなら訴訟も辞さないということで、変更の申請を提出した。すると認められた。誰かの政治的圧力などではない。
 以上である。統一教会側からの事実はそうなのかも知れない。しかし、統一教会を批判的に見ている者からすると、そこには重大、かつ意図的な欠落がある。つまり、2015年の変更については、当然安倍氏等に訴えているはずである。何度かの選挙協力で交渉があるのだから、そういう機会に訴えていただろう。そして、その結果、「強行して申請書を提出せよ。そうすれば、文科省側はなんとかする」というような了解があったに違いない。確かに、実際に申請書を提出してしまえば、官僚としては、それを拒否することは難しい。しかし、それでも、上層部まで書類があがったという。ということは、決済を上に求めたのだ。担当の官僚としては。その際、文部大臣が「認めなさい」と命令する必要はない。法令に則って処理せよ、といえばよい。それは政治的圧力とはいいがたい。しかし、全体を見れば、名称変更に、政治が関わったことにてる。
 
 献金について。
 献金については、信者の自発的な行為であり、現在では決して強要していないという答に終始した。しかし、自発的な行為などということだが、こうした団体では、「自発的行為をさせるテクニック」を使っているのだということが、これまでの元信者たちの証言で明らかになっている。マインドコントロールされているのだから、確かに「自発的」に出すかも知れない。しかし、献金こそ天国にいける保障だなどといわれれば、献金するだろうし、壺なども売り歩くだろう。まともな宗教なら、そうした法外な献金などは、決して求めないものだ。だいたい、自己破産までする献金を、本当に自発的に行うはずがないのだ。
 この点については、前にも書いたように、具体的に献金や高額商品の押し売り等をしている人物を、身近に知っているので、会長の言っていることが事実でないことは、断言できる。
 
 エバ国について
 全体として、質問が甘かったので、田中会長は、統一教会的にはうまく説明していたが、ひとつだけ、質問に答えないまま、はぐらかした点があった。それが、エバ国の件である。ある記者(外国人)が、日本の献金が際立って多いのは事実か、また、日本は韓国を特別に支援しなければならないような「教義」があるのかと質問をした。それに対して、田中氏は、日本人は非常に献身的なので、献金が多いこともそうだが、多くの人が世界中に宣教師として出かけて、活躍している。そういう貢献が多いことは事実である、と答えて、そこで終わってしまった。日本がエバ国で、韓国を助ける義務があるという教義は、日本にとって、また、日本の保守的政治家にとって、絶対にさけて通ることのできない教義だから、回答を待ったが、無視してしまった。やはり、ここは答えることができないのだろう。だからこそ、司会の神保氏が再度回答を求めてほしかった。
 
 その他合同結婚式については、ちゃんと組み合わせを考えてやっている、だから、離婚はほとんどない、というようなことをいっていた。事実とはずいぶん違うと思うが、あのような場で突っ込むことはできないのかも知れない。
 
 全体として、統一教会の宣伝の場になってしまった感じが強い。招待した側が、まさかそういう印象操作を意図していたとは、とうてい思われないから、甘さが露呈した感じだ。考えるまでもなく、ジャーナリストと、統一教会のような組織のトップとして、組織を動かしている人物とでは、修羅場対応の力量に、大きな差があるのは当たり前なのかも知れない。日本の被害者援助をしている弁護士や、ずっと続けて取材をしている人がいないと、ごまかしの言に突っ込みをいれるのも難しいに違いない。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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