「食道がん公表の秋野暢子 食事・運動・睡眠こだわり生活だった「なるべく無添加、有機」」という記事が掲載された。治療がうまくいくことを願うが、いろいろと考えさせる記事だ。
喉・食道に5個の癌ができたことを、本人がブログで報告したということだ。考えてしまうのは、当人は、
・煙草は吸わない
・毎年人間ドックを受けている
・なるべく無添加で有機なものを利用して、彩りやバランスを意識した調理をして、発がん性のあるものは避けてきた
・週に2~3回ストレッチ、軽いジョギング、筋トレ、ヨガを欠かさず
・入浴にも気をつけ、早寝早起き、8時間の睡眠を確保
・心の健康にも気をつけ、毎日幸せ日記をつけ、声をだして笑うことを心がける
というような生活を送っていたそうだ。つまり、これ以上ないほど、健康には気をつけて、生活をしていた。
また、別の記事になるが、娘さんに介護などの負担をかけないように、生活や仕事をしているということだ。
にもかかわらず、癌が進行してしまった。
ヤフコメでたくさんの書き込みがあり、多様な意見に分かれている。和田秀樹氏の著作の紹介で、健康に関する文章を書いたが、人によって、健康状態は実に千差万別なのだと感じる。
この記事を読んで、2つのことを思い出した。ひとつは、単なる英語教材の内容だが、何でも熱中してやる人が、ストレスのために精神が病んでしまって、精神科医を受診したところ、何かストレス解消できるような、例えば絵を描くなどしてみたらどうか、とアドバイスした。少し経って再び受診しにきたが、一向によくなっていない。むしろ悪化している。医師が聞くと、ストレス解消に絵を描いているんですが、あまりに熱中して徹夜しています、と語ったという内容だ。
もうひとつは、羽鳥モーニングショーで、インフルエンザワクチンがテーマだったとき、青木理氏は、ワクチンをうったことがないと語り、玉川氏は毎年うっているという。ところが、青木氏はインフルエンザに罹ったことがなく、玉川氏は何度も罹っているというのだ。
つまり、健康に気をつけることは大事だが、気をつけたからいって、病気にならないわけではないということだ、過度に気をつけることが、逆にストレスになって、病気を誘発することもあるのだろう。
私は秋野氏より10歳年長なので、健康に対する意識は低くはないが、普段ほとんど気にしないことにしている。秋野氏の心がけとまったく違うところは、健康診断や人間ドックは受けていない、入浴や睡眠はあまり気にしない、幸せ日記をつけるような感覚はない、ということだろうか。ジョギングは雨や雪でない限り、また、用事でできない場合を除き、毎日している。その点は共通だ。
しかし、健康について、確実に守っている原則がある。体調が悪かったら、約束や仕事をキャンセルして、休むということだ。今は退職したが、勤務しているときにも、過重労働はしたことがない。そのためだろうか、いままで入院するような病気をしたことがなく、一番重かった病気は中学2年のときの麻疹だ。麻疹がはやっていたときで、母の勤めていた病院で、同じ中学2年の生徒が麻疹で死んでいる。つまり、中学生以上になっての麻疹はかなり深刻な病気なのだ。私も10日ほど家で寝ていた。だが、そのときに子どもながら、医者のいうことは、あまり信用できないと思ったことがある。
かかりつけの開業医の人が往診に来てくれて、薬のほか、アドバイスもしてくれたのだが、私の従姉妹が少々離れた医院で看護婦をしており、わざわざそこの医者が往診してくれた。すると、かかりつけの人と逆のことをアドバイスするのだ。それは、最初にきた近所のかかりつけ医は、部屋を暗くしなさい、光はよくない、といって、カーテンを閉めさせたのだが、そのあと、従姉妹と一緒にやってきた医師が、すぐにカーテンを開けさせたのだ。光をとりいれなければだめですよ、という。明るさが、なぜ麻疹に影響するのか、いまだにわからないが、こうまで逆のことを、医師から言われると、誰でも戸惑うに違いない。
その後、医師を全く信用しなくなったわけではないが、いつも正しいことをいうわけではないと思っている。新型コロナにしても、医師によって、かなり根本的なところで違う見解がだされている。
秋野氏は、毎年人間ドックを受けていたという。私が大学に勤務していたころ、当然大学で毎年健康診断があったが、私は受けたことがなかった。あとのほうで、必ず書類をだすように言われてからは、町の医院で簡単な健康診断を受けて書類だけだしていたが、意味があると思ったことがない。学生に人気があって、まじめな心理学の先生がいた。彼は毎年健康診断を受けていたが、あるとき、風邪をこじらせた感じなので、病院にいったところ、検査入院することになり、その一週間後に亡くなってしまった。肺がんだった。肺がんなど早期発見がもっとも可能な癌だと思うし、死に至らしめるほどにがんが大きくなるまでにも、相当な年月がかかると思うが、健康診断では発見できなかったのだ。
また、文芸春秋だったと思うが、健康診断の特集があり、そこでは何人もの医師が、健康診断を受けないほうがよい、と提言していた。なぜなら、健康診断は病気を作り出すものだからだ、というのだ。確かに、健康診断を受けたあと、薬を飲まされるようになる人が、周囲にたくさんいる。それで本当に病気だと思ってしまうようだ。
ただ、私は医者嫌いなわけではなく、自分の体調がおかしいと感じたときには、あまり躊躇することなく、医師の診断を受けにいく。ただ、何も悪く感じないのに、わざわざ健康診断をうける必要がないと思うだけだ。
健康は意識すべきだが、あまりに過剰な意識や対策は、逆にストレスを生むのではないかだろうか。過ぎたるは及ばざるが如し、である。秋野氏は、あまりにまじめに健康問題に囚われすぎたのではないか。ほどほどがよいのだ。