最近のニュースでは、電力需要が多くなって、許容量ぎりぎりになっていて、これ以上暑くなると、計画停電をせざるをえないということがしきりに、メディアで言われている。
突然酷暑がやってきた感じで、身体がついていかないために、エアコンを急に使うようになり、一挙に電力使用量が上がっているのだろう。
電力不足への対応策は、3通りしかない。
1 電力が不足している地域へ、足りている地域から融通して送電する。
2 発電量を増やす。
3 節電する。
可能な限り、これらをすべて実行することが必要である。
1 東日本大震災後は、かなり計画停電があったが、当時は、電力会社間での電力の融通システムがなく、他の管内で余剰があっても、管内で不足すると停電せざるをえなかった。その後相互に融通するシステムができて、震災後よりは、供給が安定するようになったという。しかし、今日のテレビでは(羽鳥モーニングショー)、解説者が、そういうシステムが導入されるようになったが、まだまだ部分的であると言っていた。日本は、危機を脱すると、これでいいではないか、というように対策が緩んでしまう傾向があるが、電力会社としては、そういう雰囲気に妥協することは、怠慢と言わざるをえない。
ヨーロッパでは、そうした相互送電のシステムが、かなり普及しているというが、日本は島国だから、ヨーロッパのようにはいかないのは事実だ。
そして、全国的に暑くなると、お互いに融通しあう余地そのものがなくなってしまう危険もある。現時点での予想で、余裕がありそうなのは、沖縄と北海道だけだそうだから、それぞれ送電が可能とも思われない地域であり、融通すら不可能になってしまう事態もありうる。
しかし、相互送電システムは、不可欠なものだから、十分に可能な状況へ、早急に工事をしてほしいものだ。
2 発電については、是々非々の議論があって、簡単に解決しそうにない。国民的な議論をすることと同時に、政府や関係官庁、電力会社が、可能な措置をとっていってほしいものだ。
発電には、それぞれの問題点がある。水力発電はダムが必要で、建設には消滅地域を生み、建設コンセンサスの形成が簡単にはいかない。また、酷暑は水不足を伴うことも多いが、その場合、ダムが干上がって発電効率が落ちてしまう。そして、今後建設する余地はあまりないといえる。
再生エネルギーとしての太陽光発電と風力発電は、天気に左右されるという大きな欠点があるし、気候変動に対応するための方式であるにもかかわらず、環境問題を生む要素をもっている。特に、山の森林を伐採して、太陽光パネルを設置するなど、大きな環境破壊をしている例が少なくない。風力発電も、騒音問題を引き起こしやすい。
しかし、場所の選択で、環境問題を生じさせないことができれば、スピーディに発電量を増やすことができると思われる。前に書いたことがあるが、東日本大震災をきっかけに、東北地方から茨城県にかけて、太平洋岸に長大な堤防が建設された。この堤防の側面にパネルを設置すれば、森林伐採などをせずに、今は遊んでいる場所を発電所に変えることができるし、膨大なパネルを設置することができると思うのだが、どうだろうか。
また、首都圏のパネルを設置するだめの強度をもっているが、まだ設置されていない家屋に、電力会社が屋根にパネルを設置して、屋根を提供した家も若干の見返りがあるような契約方式を設定できれば、これも膨大な量のパネルを設置する余地がある。
特に堤防への設置は、この夏にでも間に合うスケジュールも可能なのではないか。
原子力発電については、最近書いたので繰りかえさない。
石炭による火力発電についても、二酸化炭素を吸収したり、回収する技術も発達しており、必ずしもヨーロッパの方針が絶対とはいえない。
3 やはり、最も緊急に対応できるのは、節電であり、震災後も、主要な手段としては、節電で乗り切った記憶がある。
まず、町の街灯、ネオン等を消す。そして、家電量販店のテレビ等を消す。エアコンの温度設定を2度程度下げることを徹底する。現在、節電は家庭に呼びかけていることが多いように感じているが、ビルでの節電がもっと重要なのではないだろうか。
家庭に呼びかければ、日本人はかなりまじめに節電に取り組むのではないだろうか。停電はこまるし、また、節電すれば電気代が安くなる。自分にとっても利益があるし、社会的危機を回避することにもなるのだから、協力しないわけがない。むしろ、問題なのは、節電を訴えるメディアではないだろうか。
今日の羽鳥モーニングショーが、節電問題を扱っていたが、こういうとき、放送のあり方をみていると、放映現場では、ほとんど節電を意識していないように思うのである。参加者は、ほとんど男性はスーツを来ているし、女性も薄着というわけではない。これは、スタジオではかなり強くエアコンをかけている証拠だ。それで、エアコンの設定温度を一度か二度下げましょうなどといっているのだからは、妙なものだ。
また、現在のテレビは、ひとつの局が、かなりのチャンネルがあり、深夜も放映している。すべてのチャンネルではないにせよ、いくつかのチャンネルの深夜放映を削減するだけで、かなりの節電効果があるだろう。
テレワークはどうなのだろうか。
日本では、やはり東日本大震災後に、テレワークによる節電が呼びかけられたが、危機を脱したあと、熱意がさめ、テレワークによる節電効果の研究も進んでいないそうだ。以下は、数少ない研究である。
「テレワークの節電効果に関する考察」中西穂高 Japan Telework Society (日本テレワーク学会17回大会での発)
在宅の状況(テレワークの人だけがいるのか、家族もいるのか等)やオフィスの状況(完全に閉めるのか、テレワークしない人は出勤するのか等)によって、結果が異なるので、統一的な研究が難しいというが、様々な研究を参照した上での筆者の結論は、オフィスでの節電量の大きさよりは、在宅ワークによる電気使用量の増加のほうが、若干であるが小さい傾向があるという。マイカー出勤等も考慮すれば、テレワークによるエネルギー使用料が減ることは、ほぼ期待できるのではないだろうか。特に在宅ワークの場合、無駄な電気は、自分で費用をかぶることになるから、こまめにスイッチを切る傾向もあり、やはり、テレワークの推進は、節電にも効果があるのではないか。
可能なあらゆる手段を活用して、停電などを回避したいものだ。