ウクライナの感謝がなかった?

 今日の報道によれば、ウクライナ軍が、これまで支援してくれた国に感謝の念を伝え、支援してくれた国名を掲載した記事に、日本の名前がなかったというので、ネット上で話題になっている。私もその一覧を確認したが、確かになかった。今後訂正される可能性はあるが、思い出すのは、湾岸戦争だ。イラクがクウェートに侵略して、アメリカを中心とした連合軍がイラクを退けたのが湾岸戦争だ。この戦争は、CNNが大々的に実況中継を行い、初めてこうした戦争のリアルタイム映像を世界に発信したというので話題にもなった。実際に、戦争のリアルタイム映像を最初に発信したのは、ベトナム戦争だったが、当時はまだカラーではなかったので、アメリカ以外ではニュースとして事後に流れたことが多かった。湾岸戦争では、まるでゲームをみているようだと、賛否両論あったことを覚えている。

 ところで、この湾岸戦争は、日本の外交方針を根本的に変えるきっかけになった。戦後クウェートが、アメリカの新聞に、支援してくれた国に対して感謝の大きな広告を出したのだが、その一覧にやはり日本の名前がなかったのである。日本は、かなり多額の軍事援助を金銭でだしたのだが、こんなに支援したのに、全然評価されないのか、と当時の海部内閣は大ショックを受けた。そして、政府の認識は、「金銭だけだしてもだめなのだ、人をださなければ」という「反省」だった。そこで、その後自衛隊をPKOに派遣するようになったのである。
 支援とは感謝されるために行うのか、という疑問もあったが、私は、多少政府とは異なる印象をもった。正確なところは、一般市民にはわからないのだが、日本が支援した資金は、クウェートではなく、湾岸戦争を主動していたアメリカに対してだされたといわれている。軍事支援なのだから、軍隊に費用がかかるわけで、それは自然なことだった。クウェートはフセイン軍にされるままになって、なすすべがなかったのだから、資金はアメリカ(軍)に対してだされるものだろう。そして、日本としては当然、軍隊を派遣するなど、資金以外の支援はしなかった。そこで、クウェートの支援国家として認識されなかったのだろうと思うのである。別にクウェートに感謝されなくてもいいではないか。もっとも、いま考えてみると、日本の姿勢を変えるために、わざわざアメリカが日本の名前を落とすように仕向けたのかも知れないとも思うのである。案の定、日本の姿勢が大きく変わったのだから。
 
 さて、今回のウクライナの件では、多少のいらつきが自民党内にもあるようだが、岸田首相は、その後もゼレンスキー大統領と電話会談をして、支援の相談をしているので、これまでの姿勢に変化が起きる雰囲気ではない。むしろ騒いでいるのは、政府中枢にいないひとたちなのだろう。
 だが、ウクライナのこうした支援要請などについては、いささかひっかかる点があることも事実だ。ドイツの大統領に、ウクライナに来るなといったり、あるいは、アメリカの国務長官と国防長官がやってくるのに、「手ぶらではなく、支援をもってこい」などといったり、「支援が当然」という態度は、どうなのかと感じないといえば嘘になる。特に、アメリカ高官が来る日程を明かしたことは、非常に危険なことで、ウクライナとしては、これだけアメリカが支援してくれているのだ、ということを示したかったのかも知れないが、来る日程まで明かしてしまえば、当然攻撃される可能性もある。事実、帰国の列車が通った、数時間後、駅へのミサイル攻撃があったとされるから、ゼレンスキーの勇み足だったもといえる。アメリカは秘匿すべき情報は注意深く秘匿しているので、余計に目立つ。まさか、ロシアが、アメリカの高官を爆撃することはないとは思うが、鉄道爆撃が、ミスで偶然そのとき乗り合わせていた列車に命中したという可能性だってある。やはり、無事帰国してから、発表するのが当然だろう。
 また、戦争の途中で感謝表明をするというのも、他の国は支援しないのか、と要求しているように見えないこともない。
 
 ウクライナの情報戦については、先日もヒトラー、ムッソリーニと昭和天皇を並べたことで、物議を醸したが、今後もいろいろあるのかも知れない。あまり気にしないことが大切だろう。行き違いの研究対象くらいにみるのがいいかも知れない。また、支援に加わっているのに、今回国名がなかったのは、他にもあったそうだ。
 
補 午後の報道で、林外相は、武器支援をした国への感謝という意味だと鎮静化を図ったようだ。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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