佐々木朗希と審判のトラブル 審判の訓練は?

 佐々木朗希が今度は、審判とのトラブルで話題になっている。ヤフコメなどは、半日で数万を越えているような状態だ。
 二死一塁、バッター2ストライクという場面で、佐々木の投球がボールと判定され、ランナーが盗塁したが、松川捕手の投げたボールが大きく逸れて、セーフに。そのとき、佐々木が振り返って、にやっと笑い、何かを言いかけた。すると、主審の白井がマウンドに歩み寄り、何かを佐々木にいっているようにみえる。そして、捕手の松川が行く手をミットで遮りながら、何か語りかける。佐々木の近くまでいったが、白井主審は引き返した、ということだ。私は、ヤフーの速報で知って、まずコメントを読み、それから、しばらくしてyoutubeの動画で確認した。テレビ放映の画面だけではなく、個人がとった映像もたくさんあって、こうやって、観戦者が映像をアップしているのかと、このことに感心してしまったが。

 映像をみている限りは、まず投球はほぼ確実にストライクだったと思われる。佐々木が振り返って、苦笑したのは、ボールの判定だったよりは、私には、松川が暴投気味の送球だったのに対して、「お前にしては、焦ったな」という感じで、松川に対しての反応だったともとれた。マウンドをおりる行為がアウトということだが、それは確かに注意されてしかるべき行為だったようだが、それにしても、審判の行為は大人げないという表現かふさわしいだろう。実際にはストライクだったと思われるし、そのように判定されていれば、盗塁はなく、打者が三振になりチェンジだったわけだから、まわりはボール判定で苦笑いし、マウンドを降りかけたと解釈したのだろうが、真相はわからない。
 
 様々に議論されているが、私は、審判の再訓練がどうなっているのかという点に、関心をもった。というのは、佐々木朗希という投手は、これまでにない速いボールを投げる。高校野球では140キロを出せば、話題になる速球投手だ。そして、このクラスになると、そういうボールを確実に捕球できる人は、部員でもごく少数なのだという。大分昔のことなので、いまは多少違うだろうが、巨人に入団した柴田が、法政二高のエースだったとき、彼の投球を捕れるのは正捕手だけだったと、実際に知っている人から聞いたことがある。140キロでも素人には見えないくらい速いが、佐々木は165キロ程度を投げるし、150キロ近いフォークを投げるわけだ。これまでになかったスピードのボールを判定するわけだから、当然、それに慣れなければならないし、実際にそのボールで判定の訓練をしなければ、正確な対応ができない。そして、佐々木のようなボールを投げる人は、一人しかいない。従って、実際に佐々木のボールをかなりたくさんみて、判定の訓練をしないと、正確な判断はできないように思われる。しかし、佐々木は一人しかいないわけだから、かなりの数いる審判が、彼が本気で投げるボールで、判定訓練できる機会はどのくらいあるのだろうかと疑問が出てくる。
 考えてみるまでもなく、捕手は、投手がなげる球種を予めわかっている。だから、捕球できる。しかし、審判はどのようなボールが来るか、まったくわからない状態で待っていなければならない。140代後半のスピードで来るボールが、ベースの間近でストンと落ちたら、まだ見慣れないうちは、ストライクゾーンを通ったか、外れたかなどは、判定できないといっても仕方ない。
 
 どうやって、実際の訓練が行われているのか。プロ野球の審判になるのは、それほど簡単ではなく、厳しい訓練や試験、そして、アメリカ留学などもあるそうだ。そして、2軍での実践を経て、優秀だと1軍にあがることができる。しかし、やはり、これまでになかった球種やスピードをもった投手は、その当人の投球で訓練しないと正しい判定が難しいことは確かだが、残念ながら、私の検索した限りでは、そうした場合の審判の訓練については、情報を得られなかった。従って、もちろん、オープン戦などもあるから、それなりの機会はあるだろうし、キャンプ中に廻ることも可能だろうが、それでも、審判の訓練のために、一人の投手が投球機会をたくさんもつというのもおかしな話だから、公式試合で初めてその投球に接する審判もいるのではないだろうか。そういう問題をどのように解決していけばよいのかは、よくわからないし、参考になる見解にも接することができていないのだが、重要なことではある。
 
 球種を審判が予め把握することはどうなのか。
 最近メジャーリーグで、キャッチャーが、ピッチャーに対して、無線でサインを送るシステムが実験的に導入された。確かに、映像をみると、キャッチャーは、指で合図するのではなく、手首につけた道具に、指で推してサインを送っている。ピッチャーは帽子にしかけられた骨伝導方式でサインを受け取るのだそうだ。もし、この方式なら、審判もその電波を受け取って、予め球種やコースを知ることができれば、ストライク・ボールの判定の精度があがるに違いない。そういう方式は、検討に値すると思うのだが、どうだろうか。
 ただし、受けとった球種やコースなどにあわせて、準備体制を変えてしまうと、相手に見破られる可能性があるので、決して、サインにあわせた行動をとってはいけないとしなければならないだろう。
 
 審判の評価をどうするのか。
 ふと思ったことは、選手にはファインプレーがある。もちろん、主観的なことだが、それでも、だれもが感心する素晴らしいプレーはある。イチローのレーザービーム送球で、ライトから3塁に送球してアウトにしたようなプレーは歴史に残るファインプレーだろう。そうして相手の攻撃を封じたときには、確実に評価として残り、次年度の契約時の材料となる。
 審判でも、そういう判定は評価対象として、判定のファインプレーがあってもいいのではないだろうか。例えば、リクエストがなされたが、結局、ビデオ判定の結果、審判の判断が正しかった場合などは、判定のファインプレーと考え、表彰の対象としてもよいのではないだろうか。そのような制度が導入されれば、より精密に見ようとするに違いない。単に、まちがいがないこと、トラブルにならなかったようなことだけで評価されるのは、審判のゲームの担い手であることを考えれば、寂しい気がするのである。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です