日本語ワープロの老舗である一太郎をめぐって、不満が高まっている。私もびっくりしている者の一人だ。というのは、一太郎の売りのひとつである日本語入力システムであるAtokが、2022年バージョンから、AtokPassport となって、一年間の期限付きになるというのだ。一太郎は、そのまま使っていても、入力ソフトだけは、毎年お金を払いなさいということになる。
普通、こうしたソフトを、毎年新バージョンが出たからといって、その都度買い換える人は、ほとんどいないに違いない。私も5年くらいは使う。もっとも、ワードは、家族も使うことを考えて、Office365に入っているので、毎年支払いが生じるが、こちらは、ソフトの数が異なり、Access まで入っているから、それほど不当な感じはしない。しかし、一太郎ユーザーが、一太郎はバージョンアップしなくても、Atokは支払わないと使えなくなるというのは、ユーザーとしては怒っても当然だろう。私自身は、一太郎はあくまでも見栄えのよい文書を作るときだけ使い、既に大学を退職して、教科書を作成しなくなったので、特に使う必要はなくなったし、また、普段から、親指シフトを使っている関係から、日本語入力はジャパニストなので、Atokは使っておらず、毎年支払いになっても関係ないのだが、しかし、このやり方には大いに疑問に感じる。
実は、今使っている一太郎が4年経過したのと、詠太(読み上げソフト)を使いたくて、新バージョンを購入しようかと思って、チェックしたところ、Atokのことがわかったということなのだが、詠太は一太郎とは別ソフトで、一太郎プレミアムを購入しないと入手できないことがわかった。詠太を一太郎と別に使う人などは、あまりいないだろうから、当然一太郎のなかに組み込まれていると思っていたところ、そうではなかった。プレミアムというのは、4万円近くするソフトで、このために、そんな大金をだすなど、とうていできない。といって、詠太を単体で購入することはできないらしい。
ジャストシステムという会社は、本当にユーザーサイドで考えない会社だなあと感じてしまう。それは以前にもあった。私はメールソフトとしてshurikenを使っている。それは、このソフトが、メールをダウンロードする前に、メールサーバで確認して、必要なメールだけダウンロードし、その他をサーバーで廃棄できるようになっているからだ。この機能は、私には必須なので、たぶん今後も使い続けると思うが、一度、疑問に思って問い合わせたことがある。それは、古いバージョンから新しいバージョンにするときに、前のメールの扱いを選択できないことだ。
バージョンアップしても、前のメールをそのまま残すことは、ごく普通だと思うのだが、shurikenそのものが、バージョンアップ版なら、前のメールを残すが、通常版だと、強制的に、前のメールを消してしまうのである。前のメールを残すか、あるいは破棄するか、という選択肢が示されることもない。私は、以前は、プレミアム版を購入しており、かつアカデミック版だったから、新規のものだった。それで、一度以前のメールが消えてしまったわけだ。その後は、メールそのものは残すのだが、これまた奇妙なことに、残した旧バージョンのメールは、新バージョンのソフトでは読めないのだ。
あまりにおかしいので、ジャストシステムに電話したところ、前のを残したければ、バージョンアップ版を購入してくださいとだけしかいわない。呆れてしまった。
一太郎は、ごく稀にしか使わないから、(といっても、今は文書チェックとして使っているのがほとんど)あまり気にしなくなったし、今回のAtok問題も、私には無関係だから、怒ってもいないのだが、ただ、ジャストシステム社のあせりをどうしても感じてしまう。こうした妙な抱え込み路線になるということは、経営が順調ではない証拠ではないだろうか。
私が、しばらく使っていなかった一太郎を再び使い始めたのは、Epubファイルに転換できる機能がいち早く追加からだった。それまでは、大学の教科書作成にtexを使っていたのだが、残念ながら、texは、Epub転換ができなかった。教科書をpdfとEpubで公開する形にしたかったので、一太郎に切り換えたわけだ。やはり、texほどではないが、一太郎は見栄えがする文書ができる。しかし、大学を退職して、教科書を作る必要がなくなり、残りの人生は、これまでの発表論文の整理公表をしようと考えている。それには、一太郎の機能は必要ない。見栄えのよいpdfを作成するには、やはりtexのほうが上だ。
どうするか未定だが、余程のことがない限り、一太郎の新バージョンを購入することはないだろう。ジャストシステムは、ユーザーによりそうソフト開発をしないと、未来は明るくないような気がする。