ウクライナ 今後の進展

 前回、ロシアが被ってきた被侵略の歴史を理解しておく必要があることを書いたが、別の歴史の理解も必要である。それは、戦後、大国が小国に侵攻して、勢力下におこうとして成功した事例は、ほとんどないということだ。代表的には、アメリカのベトナム、アフガニスタン、イラク、ソ連のアフガニスタンなどが代表的な失敗事例といえる。今回の当事者がロシアである点でも、ソ連のアフガニスタン侵攻を思い出しておく必要がある。
 アフガニスタンで、社会主義政権が成立したが、そのうち内部分裂が起こり、大統領タラキと副のアミンとの対立が激化、ソ連に忠実だったタラキが暗殺され、ソ連が軍事侵攻し、アミンを殺害、その後泥沼化し、アルカイダなどのテロリストが勃興、そして、タリバン政権となる。ソ連は敗北し、そのままソ連崩壊へと突き進むことになった。アフガニスタン侵攻については、ソ連中枢内部でも反対論も強く、激論が交わされたようだ。タラキは、強くソ連軍の出撃を要請していたから、殺害されていたとはいえ、アフガニスタン大統領の要請に応えて侵攻したという「形」をとっている。

 そこで、アメリカは直接介入するのではなく、反ソ勢力を育て、資金や武器を提供していった。アメリカからすれば、反ソであれば、その真実の思想・政治的立場はどうでもよかったのかも知れないが、やがて、アルカイダやタリバンなど、反ソではあるが、反米でもある勢力を強化してしまった。そして、その後アメリカ自身が、アフガニスタンで泥沼の戦争に突入することになる。
 現在のロシアとしては、アメリカがテロ勢力を支援することは、ほぼ確実であり、アフガニスタンでの失敗から学んで、対テロ戦争に巻き込まれる前に、矛を収められるかが重要になるのではないだろうか。もし、面子をかけて、対テロ戦争に勝利しようなどという方向に進めば、確実にロシアの凋落が待っている。
 しかし、アメリカにとっても、アフガニスタンではアルカイダとタリバン、イラクではイスラム国という、育てたつもりが自らに刃を向けるテロ集団になってしまった。そういう歴史をもっているが、テロ支援を続けるのか。それぞれの大国が、自身の負の歴史から、きちんと学んで対応をとれるかどうか。それによって、今後の進展は、大きく変わってくる。
 冷静に、かつできるだけ早期に矛を収めてほしいものだ。

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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