久しぶりにコロナネタだ。社会の雰囲気はすっかり、オミクロン株はたいしたことない、インフルエンザとあまり変わりはない。経済重視でよい。ピークも超えた。そんな感じだ。しかし、メディアは実態を伝えているのか。試しに、東京都のコロナ情報のホームページをみてみよう。https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
ここには、検査数が14941件という数字と、19971.3というふたつの数字があり、陽性者は、14824.7と名ており、後者で計算すると、陽性率は74%であるが、前者の検査数で計算すると、実に99%である。ところが、ホームページでは、39.9%となっている。約4割という陽性率がどうやって導かれるのか、表を見ている限りはわからない。このページで、後者の検査数で計算しても、最近はほとんど陽性率が80%前後である。90%近くになることもあった。陽性率が90%というのは、確実に症状が現れていて、陽性がほぼ確実である人に、治療を施すための検査をしていて、そうでない者は、検査すらしていないという状況だと判断するのが、常識だろう。つまり、実態を把握して、有効な感染症対策をとるということが、完全に放棄されている。検査キットがないから仕方ないという問題ではない。第六波が来ることは、当然のこととしてわかっていたのだし、欧米での流行を見れば、その規模もわかっていたはずである。日本のオミクロン拡大が遅れてやってきたことは、日本人のワクチン接種が遅かったために、抗体有効期間が遅くまで続いたからであるというのは、ほぼ定説であった。つまり、遅れてはいるが、確実に感染拡大が起きることは、わかっていたのだから、当然検査キットの確保は絶対に必要だったのであり、それをさぼっていただけなのだ。
日本の感染者数がどんどん増え始めたとき、私は、絶対に全国的に10万人を大きく超えることはないだろうと、家で話していた。それは、感染者数がそんなに増えないという意味ではなく、検査可能数から考えて、10万人以上の感染者がいれば、検査から除外される人が多数でてくるからである。常識的に陽性率が3割だとすると、当時35万人分程度の検査キャパシティがあったとされるから、せいぜい10万余が限度だろうと想像したわけである。
そして、実際に10万をわずかに超えたあたりから、どんどん減少が始まり、ピークアウトすら専門家が口にするようになった。しかし、そうするうちに、陽性率か異常に高くなったわけである。不思議なことに、この陽性率のありえない数値を、メディアはほとんど伝えていない。そして、感染が減っているという説明だけをしている。しかし、ますます検査キットが不足している状況になっているのだから、検査で把握された感染数が減少するのは、当たり前なのである。本当に減っていると判断するには、あまりに検査体制が不備であることを、もっと重視すべきだろう。
一番心配されていた死者数は、当初それほど多くならなかったが、最近かなり増加しており、過去最大を記録する日もある。だから、いわれるほど、深刻ではない、などとはいえないのである。
こうした検査数の軽視は、何もコロナに対する政府の対応に限らない。いろいろな官庁の統計のごまかしが報道されているが、そこに現れているのは、日本の政府などの公的機関だけではなく、少なからぬ民間企業にも、モラルの崩壊が起きていることだ。あれほどたくさんの嘘を、国会ですらつき続けた安倍晋三氏が、もっとも熱心な道徳教育の推進派で、彼が首相のときに、道徳が教科になったのだが、このことが、支配層の道徳の低下を如実に表している。
実態を把握しないままに、根拠のない施策をずっととってきたのが、日本のコロナ対策だったといわざるをえない。そして、最初はメディアは、かなり事態を深刻に受け取って、「単なる風邪派」からは、おおげさだという批判を受けていたが、第六波になると、実態を無視した楽観論に同調している側面が目立つようになっている。第五波では、入院できず、施設にも入れない人を「自宅放置」と表現していたが、現在は、実態があまり変わらないにもかかわらず、「自宅治療」という言葉をつかっている。もちろん、経口薬がきちんと入手できて、病状が改善する状況になれば、自宅治療という言葉は適切だが、現在は、まだまだ経口薬の普及は不完全で、しかも、とにかく、医療機関にかからなければ、薬を入手することはできないのだから、「自宅治療」のなかのかなりの部分が、事実上「自宅放置」なのである。
私自身、ワクチンの普及や経口薬ができたことによって、また、オミクロン株がこれまでの株に比較して、危険度が低下しているとは思うが、それでも、感染力の強さを考えれば、安心できる状況からほど遠いことは、間違いない。
統計の改竄や、実態把握の軽視が、なぜ行政で浸透したのか、じっくり考えてみたい。