スキージャンプのスーツ失格問題 ひとりの厳しい審判の関与だったが

 スポーツは、ルールに基づいて行うものだが、服装に関するルールが厳しいものは、私はあまり知らない。科学が進歩すると、道具によって、成績が向上することがあるから、そのようなときに、道具に関するルールが設けられることがある。服装もその一種で、水泳の水着への規制が議論されたことは、記憶に新しい。夏のスポーツよりも、冬のスポーツは、服装や道具に影響される部分が多いと思われるので、ルールが細かいのかも知れない。ルールといっても、その判定も重要な要素となっており、判定が恣意的になったり、あるいは、人によって判断が異なったりすると、選手にとっては、大きな負担になるし、不利になることがある。
 北京オリンピックにおけるジャンプのスーツ問題は、近年になく揉めた例だろう。

 ジャンプは、数年前に、スキー板そのものの大きさに関する、大きなルール改定があった。これまで、スキー競技に限らないが、日本人が圧勝すると、その後ルールが変わって日本人に不利な状況になってしまうことが、何度かあったような気がする。高梨が、かつてのように勝てなくなったのは、スキー板の基準改定が影響しているといわれている。そして、今回、違反第一号ということで、またか、と思ったが、同様に失格になった選手が、他は皆ヨーロッパ勢の強豪国の選手なので、どうやら違うようだとは気づいていた。
 詳しくはわからないが、身体的状況(身長・体重等)に応じて、スーツの長さ等が決まっていて、競技のあとにランダムに審査が行われ、違反すると失格する。そして、今回、新設された団体男女混合ジャンプの女子に違反と認定された人が多数出たことで、大きな話題となっていた。ジャンプ競技は何種類かあり、同じ選手が複数の競技に参加するが、前の試合では合格だったのに、混合で初めて失格になったという例が多く、公正な反対ではないのではという疑問が当然起きたわけだ。
 そして、その経過が、徐々に明らかになってきたようだ。高梨が失格第一号だったが、その後、ノルウェー(2人)、ドイツ、オーステリアの選手の計5人が失格となった。この種目は、今回がオリンピックで最初だったようで、従って、審査もこれまでと違ったように行われたらしい。https://www.koregasiritai.com/mika-jukkara/
 これまでも、不思議に思われていたことだが、女子のスーツ審査に男性審判がかかわっていたというのだ。常識的に、女子選手には女性の審判、男子選手には男性審判がチェックを行うはずだ。しかも、スーツのチェックというのだから。ところが、今回は、はじめての男女混合競技ということで、それまでの常識とは違って、男性の審判が、女子のチェックを行うことを強引にやったというのだ。そして、それはフィンランドの男性審判だったそうだ。
 ネット上でも、様々な議論があり、なぜ事前チェックにしないのかとか、ドーピングと同じで、事後の抜き打ち(全員ではなく)というのも、スポーツではよくあること、という事前論への批判とか、いろいろあった。
 ただ、上記の記事によると、やはり、事前の関係者によるきちんとした確認と、選手に対する徹底がなされておらず、一部の審判の独断先行があったように書かれている。しかも、その審判がフィンランド人というのが、ひっかかる。偏見かも知れないが、北欧人というと、いかにも平等で公正な印象もあるが、ノルディックスポーツの本家意識が強く、自分たちに有利なルール作りを押し出してきた印象がある。優勝候補だったとされるノルウェー人が2人も失格になっているのだから、要するに、強豪選手を追い落とすために意図的にやったとも、考えられなくもない。しかし、北欧のチームは、ノルウェーだけで、フィンランドは出場していない競技なので、フィンランドを勝たせるためというわけでもない。参加国は、スロベニア、日本、オーストリア、ロシア(ROC)、カナダ、ポーランド、チェコ、ノルウェーの8カ国だ。
 IOCは、競技団体の責任だといって、自分たちは関係ないという対応をとっている。では、国際スキー連盟はどうなのか。『「起こるべきでなかった」 失格続出で現場責任者―ジャンプ混合団体〔五輪〕:時事ドットコム (jiji.com)』という記事があるが、国際スキー連盟の吉田千賀氏が、計測者がいつもより1人多く、多少のぶれがあったかも知れないとしながらも、確実に失格という場合だけ失格になっているとしつつ、普段から厳しくしていないといけないが、どこかで緩みが出ていたかもしれないと述べている。その緩みを許せないフィンランド人が、強引に判定を厳しくしたというのだが、やはり、突然、その競技だけ厳しい判定をするというのは、納得できない人が多いだろう。ルールの適応において、継続性が重要なのは、スポーツに限らない。
 

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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