大リーグの乱闘

 大谷翔平の不調が、死球と四球の連発にあることを、前に書いたが、たまたまyoutubeをみていると、大リーグの乱闘映像がたくさんあったので、いくつかみてみた。すると、あまりに日本の状況と違うので、びっくりした。
 日本でも、プロ野球で暴力沙汰はあるし、両軍の選手か出てきて揉めることもある。しかし、暴力沙汰はあっても、特定の人間、しかも多くは外国人選手が絡んでいることがほとんどで、日本人選手が本気で殴りあうような場面は、少なくともyoutubeでの乱闘場面でもない。日本だと、ベンチから出てきた選手は、止め役がほとんどで、あるいはだまって立っている。当事者以外の選手が殴りあうような場面は、見たことがない。
 それに対して、大リーグの乱闘シーンは、とにかく、出てきた選手がそれぞれに乱闘に加わってしまうような感じが多い。もちろん、多くは止めにはいっているのだが、それでも抑えられない。
 乱闘の原因はいくつかあるようだ。

 なんといっても多いのは死球がきっかけだ。日本では、多くの場合、ぶつけた投手が帽子をとって謝る。それで、ぶつけられたほうも、それ以上激高することもなく、一塁にいくというパターンがほとんどだが、大リーグでは、投手が謝ることはほとんどなく、ぶつけられた打者が、バットやヘルメットを放り出して、一目散に投手に向かって駆けていき、いきなり殴りつけたり、あるいは、投手のほうも待ち構えて応戦するという場面の映像がたくさんある。
 背中の後ろを通る大ボールに怒った打者が、そのままバットを放り出して、投手に突撃、殴りかかるが、一塁手が素早くやってきて、打者に体当たりし、突き飛ばし、その後は大乱闘。この映像は印象に残った。
 次はスライディングだ。
 センター前のヒットで、二塁手がホームに、キャッチャーに激しく衝突、キャッチャーが走者に殴りかかり、大乱闘。走者が野手に乱暴にぶつかっていくような場面がけっこうある。
 変わったところでは、ランナー一塁で、サードゴロ、サードはダブルプレーをとるためにセカンドに送球、完全なアウトだったが、走者が多少激しくスライデンィング、セカンドの一塁への送球が大きくそれ、一塁手と捕手が懸命にそのボールを取りにいき、打者がセカンドにいきかけるが、既に、二塁ベース上で乱闘が始まっていて、そのまま大乱闘に発展。プレー続行中なのに、みんなが乱闘に参加。この後試合はどうなったのだろうか。走者は冷静にホームまで駆け抜けたのか。映像は乱闘ばかり映している。このような場合、打者ランナーが騒ぎをよそに、冷静にホームまで駆け抜けたら、点数になるのだろうか。また、よく走ったと誉められるのか、あるいは仲間の騒ぎを無視した、仲間意識のない奴と思われるのか、妙なことが気になってしまった。まず、日本では起こり得ない場面だと思う。
 その次は、口論だ。これは映像をみていても、選手同士、どのような会話をしたのかが不明なので、実際のところはわからないが、とにかく、一方が相手チームの選手に何か激しくいい、それがきっかけで、突然乱闘になってしまう。
 キャッチャーが3塁ランナーへの牽制球を投げようとしてやめる。その後、打者と捕手は雑談していたが、どうやらその間に、ランナーに対する野次がベンチから飛んだらしく、ランナーが怒ってベンチに近づき、大乱闘。
 おそらく、言葉が民族差別的なものだったときに、乱闘にまでいってしまうのではないだろうか。大リーグはとにかく多民族集団だから、そういうことに敏感なのだろう。
 
 実は大谷もこうしたことと無関係ではなかったが、やはり日本人だと思った。
 まず、大谷がある打者に、2球続けて頭にちかいビンボールを投げたことがある。大谷のことだから、故意ではなかったと思うが、打者にあたりはしなかったが、不穏な空気になった。ここで、普通の大リーグの試合だと、にらみつけるとすぐに応答し、だれかが飛んでくる。そして、大勢が集まり、乱闘になってしまう。しかし、大谷は黙っていたので、その場はそのままで収まった。大乱闘の場面を立て続けに見たあとでは、少々調子が狂ってしまう感覚だ。
 大谷が死球を受けたときにも、乱闘になりかかった。大谷の死球は、明らかに故意で、相手チームにエンゼルスの投手がこの試合2人に死球を与えていたので、報復死球だったらしい。大リーグでは、この報復死球がたくさんあるようで、投手はそれをチームから要求されるという。乱闘場面では、明らかに報復四球と思われるもので乱闘になったというのがいくつもあった。大谷に死球を与えた投手が退場処分になり、それに抗議した監督も退場。通常なら、これで乱闘になるのだろうが、大谷は、一塁がいって、相手の一塁手を談笑していたと話題になったくらいで、乱闘騒ぎにはならなかった。
 大谷も差別的言辞を投げかけられることはあるのだろう。解説者が、大谷についてアジア人を馬鹿にするような表現をして、大谷のすごさを述べたとき、その解説者は社会的批判を受けて、一時降板させられた。しかし、大谷には、気にしていないと語ったという。
 これが、大谷だけではなく、日本人の特質なのだろう。だから、受け流して、深刻な争いになりにくい。いい面もあるだろうが、アメリカ人からみれば、物足りないと思うかも知れない。しかし、スポーツなのだから、乱闘ではなく、いいプレーをみせてほしいものだ。そして、報復死球は、みていてもいかにも気分が悪い。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

投稿者: wakei

2020年3月まで文教大学人間科学部の教授でした。 以降は自由な教育研究者です。専門は教育学、とくにヨーロッパの学校制度の研究を行っています。

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